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一話:異世界転生ってあるんだな

風呂に入ってたら思い浮かんだので文章化してみました。

 ああ、これが異世界転生ってやつか。


 気づいたとき、自分は荒野にぽつんと立っていた。


 一瞬前には迫りくる自動車に身動きさえできないで硬直していたのに。今は貧相な服を着て荷物らしきものを背負って。


 道ともいえない踏み固められた地面の上に立っている。ところどころに雑草。ほぼ荒野。見事に晴れて。後ろには山。その手前には森。どうやら山を越えて今に至るらしい。


 しばらく風景に見とれたあと、おぼろげな記憶がよみがえってきた。村を追い出されたというか15の誕生日に荷物を渡されて旅立ったようだ。


 飲み会の帰りにくたびれたスーツで酔っ払って交通事故死したサラリーマンの記憶と、貧農とまではいかないが、そこまで裕福ともいえない、口減らしに都会に旅立った田舎の三男坊、その記憶。二つが同時に、同じくらいのリアリティを持って脳裏に浮かぶ。


「異世界転生ってあるんだな……」


 俺は途方に暮れそうになる。


 ふと左腕を見る。革の手袋に、木と金属のつえらしきものを握っている左手。腕時計はしていない。リーマン時代は時間に追いかけられていたが、この世界では必要ない。空を見上げる。天頂に太陽。12時くらいか。


「これからどうしよう」


 どうしようもない。都市に行かなければ良くて餓死、悪けりゃ野犬のえさだろう。

 野宿をするには背負っている荷物も少ない。必死に思い出す。少年としての自分の記憶を。どうしても「とりあえずビール」や「唐揚げレモン戦争」「自分をひいた車の迫りくるバンパー」それらばかりが思い出されるが、今必要なのはそれじゃない。


 村の位置。今まで歩いてきたであろうコース、幼い頃に親に連れられていった都市の風景。それらが断片的によみがえる。まるで大昔にみた映画を思い出すかのようだ。


 なんにせよ俺はすでに野宿をしている。その記憶がある。昨日のたき火でやけどをしそうになったことも、晩飯にビーフジャーキーらしきものをかじった記憶も。すでに目的地までは半分以上移動しているはずだ。あとはもうしばらく歩いて街道に出たら夜までには都市にたどり着けるはずだ。そう、あの石組みで守られた中世の城塞都市みたいな場所に。安全なはずのあそこに。親との思い出があるあそこに。


 いやいや。死ぬ前の「俺」の親父もお袋も生きてるから。顔も知らない今の身体の「僕」の親との思い出だ。


 まわりを見回し、安全そうであることを確認すると背負っている荷物を地面に広げる。

 背負うタイプの帆布バッグ、着替え一式に毛布、干し肉に小さい木箱、妙に重たい紙の箱。そして村長からもらった覚えのある手紙。財布はないのか? 水は?


 自分の身体を見回す。腰にナイフと金属の水筒。ポケットには銀貨や銅貨が入った袋。そしてホルスターに拳銃と左手のライフル。


「ここはファンタジーじゃなくて西部劇の世界だったか」


 リボルバータイプの拳銃に、これまたリボルバータイプのライフル。どちらも同じ弾を使うらしい。


「22 LRとかいう弾に似てるな。でも工作精度は悪そうだ。薬莢やっきょうも微妙にゆがんでるし」


 荷物をまとめなおすと拳銃を手に取り、適当な枯れ木をターゲットにして撃つ。パンという軽い音とともに10メートルほど先のターゲットにかする。とりあえず身体が撃ち方を覚えているようだ。ホルスターに戻すと、ライフルの方を撃つ。先ほどより少し大きな音とともにターゲットに穴があく。


 多少の自信を持って都市への道を歩き出す。


「街に着けばなんとかなるんじゃないかな。なるといいな」


 慣れない旅路を踏み出した「俺」だった。


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