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亡国の騎士団  作者: 雲ノ上
~序~ 動乱不運を告げる
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第6話

 夜の闇も深くなり空には星が瞬き、見る者に夢や希望を与えるであろう星空が広がっている。綺麗な星空とは対照的に街は静けさが支配したかのように音がしなくなっている、街に住む住人達も夢を見ているであろう時間帯。シリル達が居る一室だけは夜の帳の中においても灯りがともり街の静けさとは違い、話し声が聞こえてくる。


「あくまでも噂話だからね。どこまでが本当かなんて私には分からないけど、エミリーのために私が知ってることは全て話すわね」


 シリルは冒険者をして居る中で今まで聞いたことのある夜梟のことを思い出しながら話し始める。エミリーもシリルの真面目な顔を見て、椅子に座り直して背筋を伸ばす。


「今までで聞いたことある話で一番多いのは、戦闘での死傷者が少ないってことね。有名なのはルーランド帝国と今は亡きライド王国の間であった戦争の話ね、今から約十七年前のことだからエミリーやリリーはあまり知らないかな?」


 エミリーやリリーが現在十八歳である、しかも自分の生まれ育った国でもない国の事である。一応王立魔導師学校の授業で習ったことがある程度である。


「そうですね、戦争学の授業で習ったことがあるって程度でしか知りません」


「わたしもー同じですー」


 シリルは現在二十四歳で、当時七歳である。シリルでさえ親の話で戦争しているんだと認識できたが内容までは覚えていない。


「まぁ、私も当時の戦争のことについて詳しい訳でもないけど、ルーランド帝国とライド王国の戦争の一つにラザー平原での戦闘があるの。夜梟の噂話は大体ここから始まるわ、夜梟はライド王国側としてラザー平原で戦闘に参加していたらしいんだけど、この戦闘でルーランド兵四千に対してライド王国側は傭兵部隊を入れても約二千だったらしい」


 戦争において数が大事であることは、誰でも分かることであろう。特に平原などの戦闘であれば数が多いほうが圧倒的に有利であることは覆すことが出来ない事実であろう。


「そのときの戦闘で勝ったのはどっちだと思う?普通に考えればルーランド帝国だって子供でも答えるでしょうね……、でも、現実は違ったの」


 リリーとエミリーはシリルの言わんとした事が理解できた、数で不利なライド王国側が勝った事が不思議でならないと顔に出ていた。


「私だってライド王国側が勝てるなんて思ってなかったけど、事実として残っているわ。その立役者が梟だって言われているわ。

 しかも梟はラザー平原の戦闘に百人ほどの少人数で参加してたらしい、かなり少ないわよね。戦闘の損害はルーランド帝国側が約千二百に対してライド王国側は約二百だったそうよ……」


 与えた損害の大きさは数字で分かるものである、そして被った被害の少なさが戦闘で数の優位に勝った事も示している。同じ戦果を出そうとしても指揮官が優秀でも無理ではないかと思わせるほどの事である。


「で、ライド王国側として参加した梟の被った損害ってのが死傷者三人だったそうよ・・・未だに信じられない話よ。噂だから少し誇張されている可能性だってあるけれど・・・大体この時の話をする人はこの三人って人数を変えたりしないわ。今まで何回かこの話を聞いたことがあるけど、死傷者の数が三人以上になってることは無い、逆に死傷者は居なかったって言ってる人だって居るくらいだしね・・・」


 この話から考えれることは、梟の団長が優秀な人材であるってことと傭兵団としての団結力が高いであろうと推測できることだろう。戦闘方法や戦力については資料が無ければ分からないし憶測では話が出来ないものである。


「とりあえず、梟って傭兵団の噂話は多いのだけれど、どれもかしも戦闘で損害が少ないって噂話がかならず付いてくるわ。後は必ず付いてくる話は、魔導師の魔導術が当時から高い水準にあったって話かな」


 ここまでの話を聞いてたエミリーとリリーは最後の魔導術の一言に興味が引かれたようだ、それはそうだろう二人とも魔導師なのだから。


「えっとー、どうだったんですかー?水準が高かったってー本当ですかー?」


「私も気になります」


 リリーとエミリーがシリルの方に今までとは比べようのないほど顔を近づけている、小さい子供のようである。

 シリルは困った顔をしているが自分から言った手前もあるので、エミリーとリリーを落ち着かせるように語りだす。


「待って二人とも!!話すから落ち着いてね、ね!

 あくまでも魔導術について私は専門じゃないから、知ってることだけよ。例えばだけれど、即時発動法クイック同時展開法マルチ発動遅延法スローってあるわよね?何でもそれらの術式って梟のメンバーのサザナミって人が作ったらしいの。エミリーもリリーもサザナミって名前なら聞いたことあるでしょ?」


 ここで意外な名前が出てきてエミリーもリリーも驚いている、王立魔導師学校でも必ず出てくる人物の名前だからだ。


「あれー?、なんでーサザナミの名前がでてくるんですかー?サザナミさんはライド王国の宮廷魔導師のはずですよねー?」


「私達は学校でそう習いましたよ。サザナミって言えば今の魔導師が使う術式の基礎を作ったことで有名ですしライド王国滅亡時に処刑されたはずですよね」


 シリルは二人の言い分を聞きながらも話しの続きを話し出す。


「なんでも、当時のライド王国の宮廷魔導師はサザナミって名前ではなかったらしい・・・、梟のメンバーのサザナミって名前の人物が凄かったら宮廷魔導師みたいだって周りが褒め称えたから後に宮廷魔導師はサザナミって名前だってなったらしいの・・・・」


 シリルが言うことはあくまで噂だけれども、言われてみると納得できそうなことでもある。

 ライド王国は戦争に負けてしまい、ルーランド帝国に併合されてしまって当時のことを話す人も少なくなってきていることも事実であるし、戦争のせいで幾つかの資料が失われていることも事実だからである。

 噂話など信じるも信じないも個人に責任があることであろう、だが、噂話だといって全てが嘘の情報だと断言できることでもない。

 

「今までの話を聞いて少しでも参考になったらうれしいわ。シーアさんが言ってたことはもしかして魔導師として付いてくるとってことなのかもね……」


 シリルの話を聞いてエミリーもチーフであるルーアが言わんとした事が魔導師としてのことだろうと思った。明日の昼までに考えをまとめないと、答えが出ずに後々後悔してしまいそうである。

 夜空に瞬く星のようにエミリーの考えも揺らめいているようである……。

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