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亡国の騎士団  作者: 雲ノ上
~序~ 動乱不運を告げる
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第4話

 梟の止まり木亭に現れた訪問者によって店内の雰囲気が一変していた、ある種不安になる客を尻目にシズ団長は奥のスペースの階段を降りていた。

 ちょうど自分の職務に戻ろうとしていたシーアが階段の下にいた、シズはシーアの表情など気にすることなく目的の人物であるマスターであるレンを探す、すぐに視界にレンを見つけ近寄っていく。目的に人物であるレンであるが突如のシズの訪問を予想していたのか、慌てることも無く静かにシズの方を見ていた。


 シズ団長のお出ましですか、自体は思っていたよりも推移していたようですね・・・・さて、シズ団長はどのような情報をもたらしてくれることやら・・・・


「レン殿、緊急の事案があり馳せ参じた。とりあえず私の話を聞いていただきたい」


 階段を降りてきてレンの前に立ったシズは簡単な挨拶をすることもなく、話し始めた切羽詰っているのだろう事が予想できる。


「こんばんは、どうされましたか?かなり慌ててるようですし、緊急の事案とは?」

 

 普段と変わらないように気をつけながらレンは話を切り出す、シズは周りを見渡し他の客が居ることに今気づいたようで一旦話をするかを迷ってたようだが一言切り出す。


「すまないが、事は色々と問題もありここですべて話せない。出来れば二人きりになれる場所か他の客がいない場所でお願いしたい。場所がないのであれば、今から店を貸切にすることも考える」


 シズの視界にリリーとシリルが入っていた、リリーとシリルもいきなりの訪問者であるシズの事を気にしているように見ている。


「そうですか・・・・ わかりました。シーア!」


 レンはまだ個人の執務室に戻ってなかったルーアを呼ぶ。ルーアも呼ばれる事を考えていたのか、速やかにレンの元に近寄る。


「今店内にいるお客には申し訳ないけれど、店仕舞いだと伝えてくれ。尚、お客からお金は頂くことの無いようにしなさい。此方の都合だからね」


「かしこまりました」


 簡潔に受け答えをしてシーアは行動に移るため階段を登っていく、近くにいたリリーとシリルにはレンから声を掛ける。


「シリルさんリリーさん、会話が聞こえていたかもしれないけど急遽店仕舞いにすることにしました。申し訳ないですが今日はお引取りをお願いします、もちろん料金は頂きません、いきなりの話ですし一方的で迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします」


 レンの言葉を受け、リリーもシリルも名残り惜しいけれど仕方ないと諦めたようである。


「残念ですが事情もあるようですし、私達は気にしません。ただ今度のマスターの出勤日に何か奢ってくださいね」


 シリルが気を使ってくれているのだろう、最後に可愛らしい冗談を言って席を立つ。


「ええ、必ず奢らせていただきます。そのときは好きな物を頼んでくださいね」


 去っていく二人を見送り、五分ほど時間が過ぎた頃レンの所に、客の退室が完了したことをシーアが報告に戻ってきた。店内にはシズ団長と従業員しか残っていない、他の客達も異例であるが料金が掛からないこともあり素直にお店を後にしていた。レンに報告をしたらシーアも席を外す。

 人払いも終わった店内をシズ団長は確認すると、レンに今回の訪問の旨を伝える。


「人払い感謝します。緊急自体で出来るだけ関係のない人間には聞かれたくなかったのです。時間が惜しいので簡潔に申します。先ほど詰め所に王都より早馬が来ました、内容は我がリング王国がルーランド帝国から侵略を受けオール砦が攻撃を受けているとのことです」


 シズが現在の状況と事態の深刻さ等、要点を簡潔にレンに伝える。




 お客が居なくなった店内ではエミリーの他、従業員達がシズとレンの会話が終わるのを待っていた。

 エミリーは今回のシズ団長の訪問の意味が分からないので近くに居たリックに話しかける。


「リックさん今居るのって騎士団長のシズさんですよね、なぜマスターに会いにくる必要があるんでしょう?」


「ん?エミリーはマスターの事知らないんだっけか?エミリーが入ったのはつい最近だっけ?」


「はい、ここで働き出してまだ三ヶ月ほどですね」


「そうだったか、なら知らないわな」


「何かあるんですか?」


「もう少しすれば分かるから、待っておきなよ」


 リックが真剣な顔でエミリーに語りかける。普段のふざけた態度ではなく真剣な態度にエミリーも困惑していた。

 ちょうどエミリーとリックが会話しているときにシーアが下から戻ってきたのでエミリーはシーアにも聞いてみることにする。


「チーフ、どうなっているんでしょうか?リックさんに聞いても要領をつかめないんです」


 エミリーが困ってますと言わんばかりの顔でシーアに状況の説明を求める。


「エミリー、シズ団長とマスターの話が終わればマスターから説明があると思います。それまで待っていて、予測や憶測で会話することに意味はないですしね」


 リックに聞いてもルーアに聞いても、はっきりとした回答がないのでエミリーもマスターからの説明を待つことにする。


 他の従業員の人もそうだけど、みんな普段とは違う気がする。リックさんが真面目なのもそうだし、チーフであるシーアさんが聞いても答えてくれないのも変です。


 エミリーが色々と考えてみても分からないので、マスターとシズ団長の会話が終わるのを待つことにする。二人だけで会話をし始めてどれだけたっただろうか?十五分かそれとも三十分か緊張した雰囲気が時間感覚を狂わせる、長い時間が経ったように感じられる店内にシズが会話を終えたのであろう姿を現した。シズは店内にいる従業員に対して


「迷惑を掛けた、それでは失礼する」


 と一言残し店を出て行った、シズが店を去って少し経ってからレンが下から姿を見せる。去っていったシズと同じく姿を現したレンの表情は真剣である。


「ルドルフ!シーア!」


 二人の名前を呼ぶ、呼ばれた二人は速やかにレンの前に歩み寄る。


「「はい」」


「店内に居る従業員をすべてホールに集めてくれ。それからリック!」


「へい、お呼びで」


「リックは速やかにメンバーに声を掛けて集めてくれ、緊急呼集だ。遠征して居ないメンバー以外すべてだ、いいな?」


「へい、かしこまりました」


 指示を受けたリックは速やかに店をあとにする、テキパキと指示を飛ばすレンをエミリーは不思議なものを見る目で見ていた。


 しばらくすると店に居る従業員がホールに集まる、集まったことを確認したレンが話し始める。


「状況として、リング王国とルーランド帝国の間で戦争が始まった。一方的に侵攻させたようだ、そこで夜梟に戦争に参加してほしいとの協力要請が来たので承諾し今回の戦争に参加することにした。異議があるものは言ってくれてかまわない」


 エミリーはレンの口から出た戦争参加の一言にも驚いたが、聞きなれない名前に困惑する。他の従業員を見渡しても分かってないのは私一人のようで周りは納得しているようだ。エミリーはおずおずと手を挙げて質問をしてみる。


「すみません、梟ってなんでしょうか?」


「ん?エミリーは知らなかったのか・・・・シーア、後でエミリーに説明するのと参加の意思を確認してくれ」


「かしこまりました」


 レンから答えがもらえず、シーアから説明がされるとのことなのでエミリーはわだかまりがあるけれど静かに手を下ろす。


「多分であるけど、今回の戦争はリング王国が敗戦する可能性が高い。それでも私に付いてきてくれる者は用意をして明日の昼までにここに集まってくれ。以上だ」


 一通り説明が終わったようで従業員達が各々の準備のために動き出す。

 エミリーはシーアからの説明を待つ。


「エミリー、私達は梟と言う傭兵団なの。元々ね傭兵団の方はここで勤務して一年以上経たないと話さない決まりになっていてね、エミリーには説明はしてなかったの」


「よ、傭兵団ですか?面接の時に戦闘関係の質問があったことに関係しているんでしょうか?」


「そうね、おいおい傭兵団に入ってもらうつもりだったから戦闘できる人しかマスターは採用しないわ。ちなみにだけど、傭兵団の方は強制じゃないし断っても店に居れなくなることもないわ」


「そうだったんですか・・・・私はどうすればいいんでしょうか?」


「私からは何も言えないわね、嫌であれば彼方の人生だから断ってもらって結構よ。でも、マスターに付いて行ける事は名誉なことだから、私は傭兵団に入ることをオススメするわ。良く考えて答えを聞かせてね、もし参加する意思があればマスターが言ったように明日の昼までに準備を整えてここに来なさい」


 シーアは言い終わると踵を返して去っていく、残されたエミリーはどうすればいいのか分からなくなっていた。


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