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亡国の騎士団  作者: 雲ノ上
~序~ 動乱不運を告げる
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第29話

 殺気立つ戦場が一つの魔法によって静寂が支配する。

 上空に上がった三発の魔法……。

 先ほどまで刃を交えていた者同士でさえ、空に放たれた魔法を確認した以上、剣を止めざる得ない状況になっていた。

 リング王国からの対話の姿勢に気付いたのであろう……。

 しかし、戦場でこの魔法を打ち上げる事は暗黙で降伏を告げるものだと兵士なら誰しもが理解し、されている。

 なぜならば、攻略戦はすでに戦いは行われている、今リング王国としてルーランド帝国に対話を要求するのは降伏か停戦示唆しかないのだから……。

 ましてや、今の戦場の状況を知っているものなら降伏である事は察する事もたやすき事であろう……。

 もしもであるが、この過酷な戦場で停戦要求をするのならリング王国が優位でなければ成立しないことなど考察する必要さえない事実であろう。

 魔法によって静まる戦場に門を一人の男が従者もつけずにルーランド帝国軍の方へ向かい歩いていく……。

 男の踏み出す一歩、また一歩がとても重たいかの様に感じられる……。

 しかしながら、歩を進める男は立ち止まることなく確実に距離を詰めていく……、門を過ぎ行く男のその姿を見つめる者達には世界の時間が止まってしまったかとも感じられるほどであった……。

 皆の視線が集まる先を歩く男……。今から、この男の発せられる言葉に国王の意志の全てが込められているからだ。






 晴れ渡る笑顔から、次第に悲壮感を纏い始めていた空……。

 まるで、リング王国の気持ちを代弁するかのようにポツリ、ポツリと涙を流し始める……。過ぎ行く男を見つめる者の中には状況を理解し、空が泣くのと時を同じくして頬を涙が伝っている者さえいる……。

 先ほどまで国のためにと命を賭けて死んでいった仲間を思っての涙なのか、それとも終わりを告げる喜びなのかは本人にしか分かりえない事であろう……。

 歩をすすめる男の頬にも涙だろうか……、それとも空が落とした物なのか分からないが跡を残している……。

 歩を進める見つめる先、敵の大将であるボークス将軍がただただ静かに男が来るのを待っていた。

 歩を進めていた男が歩みを止める……。佇むボークスと男との距離は遠目に見てもそれほど離れていない。


「私はリング王国騎士団の一人である、エイドと申す。

 貴殿がルーランド帝国軍指揮官ボークス将軍でよろしいか?」


「左様。我がボークスである」


 ボークスの口から紡ぐ言葉はただただ低く……、されど威厳を伴う声色であった。

 しかし、威厳を感じさせるだけの迫力を持ちつつも、相反しそうな静けさを伴った声であった……。


「簡潔に申しましょう……。

 この度の戦でありますが、我がリング王国はルーランド帝国に対して降伏する事にいたしました……。

 リング王よりの判断であります……。すでに王城は開放しルーランド帝国軍の受け入れれる状態となっております……」


 エイドの口から淡々とした言葉であるが、王の意思が伝えられる。

 ただし、代弁しているエイドの発する言の葉にどれ程の悔しさや無念が篭っているのだろうか……。声の届く場所に居る皆が感じるほどに滲み出ていた……。

 ここへ至るまで……、門に近づくにつれて漂う血の臭い、段々と大きくなる悲鳴……、門を越えるときに倒れた部下を見てない訳ではない……。目を背ける事など出来なかったし背ける権利など無かった……。この惨状を招いたのが自分の責任であると理解しているからであろう。

 戦況の判断や目測を誤っていたエイド将軍であるが、飾らぬ言葉で言えば国の為にと考えていた。それは門を死守していた兵士と何ら変わらない思いである……。

 されど、降伏は王が決めた事である……。王の決断だと分かっているが悔しい気持ちが無くなったわけではない。だが、心のどこかでは戦場の現実を垣間見て納得する気持ちさえある。

 まるで合わさる事がないモノ同士が螺旋を描いているような感情に心は支配されており、到底言葉に表す事など出来ないだろう。

 降伏を伝えたからには、今この時からの国の未来は決して明るいものではない事を静かに教えてくれている……。

 静かに泣く空がエイドの気持ちに惹かれたかのように感情を露にし、空からの涙が強くなっていく……。それはまるで、泣きじゃくる赤子のようで声を強めていた……。


「我らは、ルーランド帝国はリング王国の降伏を認める! 

 先任参謀セサよ、部隊を管理せよ! 戦闘は終わりである!!

 それと、アーカディア将軍を下げるように指示をだせ!」


 強まる雨の中、エイド将軍より伝えられたルーランド帝国への降伏の言葉により、リング王国とルーランド帝国の戦争は幕を引く事となった……。

 






 静まり返る城内を数人の者達が歩く音が響いている。

 普段の城内でもここまで人が少ない事は無いはずだが、現在は無人と化しているのではないかと錯覚するほどに静寂が支配していた。

 城内を動き回るメイドの姿も見当たらなければ王を守るための親衛隊の姿さえ見当たらない……。

 通路を歩く音が異様に響いているのはそのせいなのかも知れない……。

 集団がとある扉の前で立ち止まる。

 まるで来る事を知ってたかのように勝手に扉が開いていく。

 訪問者たちは扉が勝手に開いた事など気にならないのか、室内に臆することなく入っていく……。

 室内には式典でもするのかと思われるほど綺麗な鎧に身を包んだ兵士たちが真ん中に引かれた絨毯の両サイドを守るように立っている。

 奥に視線を向けると玉座に一人の男性が座っているのが見受けることが出来る……。

 本来ならば玉座に座る者は最後に登場するのが慣わしであるが、今回に限っては違うようである。

 この緊張感が漂う空間を何事も無いかのように歩を進める集団の姿は、優雅という言葉が相応しいほどであろう。


「貴殿が、ルーランド帝国の指揮官であるか?」


 玉座に座る男の前で跪くこともなく立ち、問いかけに少し時間を掛けて答えていく。


「ルーランド帝国軍将軍ボークスであります」


 一応言葉は改まっている様であるが、状況は玉座に座る側が負けたのである。


「そうであるか……。将自ら出向いてくれたか……」


 このような降伏の際は将自らが出向くのがこの大陸の慣わしなのであるが、ルーランド軍の多くの将は面倒だとの理由で出向く事が少ない。大いにして代官を出して終わりが普通であった。

 しかし、ボークスは命をかけて戦った相手への礼節を重んじ自ら出向いていた。

 王が静かに立ち上がる、玉座を立つときは退室の時か騎士の称号授与のときくらいである。

 三段の階段をゆっくりと降りボークスの前に辿り着く……。


「我がリング王国はルーランド帝国の全てを受け入れる」


 ボークスの前で王が片膝を付き頭を垂れる。


「我がルーランド帝国はリング王国の全てを支配する!」


 頭を垂れている王の頭上にある王冠をゆっくりとボークスが外す……。


「これを持ってリング王国はルーランド帝国の国土となった!

 これより先の事に関しては帝国より使者が来る!

 それまではリング王の御身は自室にて守られる!」


 それは即ち、軟禁を意味する。命の保証が自室のみに限り保証されるとボークスの口から告げられたのである。

 ルーランド帝国ではボークスの判断を甘いと罵る者も居るだろう、歴代の将の中には相手を服従させるために式の最中に相手の王の首を刎ねた者さえ居る。

 動乱の世の中である勝った方が正義の世界だ、負けた側の生殺与奪の権利は強者に与えられる権利であり然るべき権利でもある。

 しかし、ボークスはそのような事はしなかった。

 ボークス自信大陸を武力での統一を信念にしているが、されど力を持たぬ者には武力の行使をするような野蛮ではない。

 温情をかけられたと思うなら思わせておけばいいだけだとボークスは考えていた。





 こうして長きに渡り栄えたリング王国の歴史が幕を閉じる事となった。

 冷たい……冷たい雨が降りしきる夕刻前の出来事であった。

 ルーランド帝国からの使者が到着したのは降伏をした日から五日後の事であった。

 その間、リング王は静かに自室で自己の死期を待つ事となった。死刑が執行されるまで自室から出ることは叶う事はなかったが、その姿表情は穏やかで全てを受け入れているようであったと言われている……。

 大変お待たせしました! この話で「序」の締めくくりとします。次は「破」に移りますが、更新はまた時間が空くと思います! 待ってくれてる方が居るかもですが気長にお待ち頂けると幸いです! ではではでは

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