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亡国の騎士団  作者: 雲ノ上
~序~ 動乱不運を告げる
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第27話

 王都ザバに住む者たちにとって、王都を守る防壁を突破されるなど夢にも思った事がないだろう。

 そもそも、篭城戦など経験した事がない住民達である。非常事態宣言が発令されてから、王都を離れ戦火を逃れるために避難行動を取ったものなど数が知れている……。

 いち早く避難を開始した者は、他国からの移住者並びに戦争経験がある元兵士、傭兵そして大きな商会の人間達であった。

 それ以外の住人は、外へ逃げる事を考えていなかった。北の方から敵が攻めてくると分かっている為、篭城戦が始まったら王都の南区に一応避難するくらいの措置しか取っていない。


 現在、北門の方で爆発音がすると共に、高く昇る白煙が住民達の不安を煽っていた。

 南門の方へ避難をしている住人は、見渡す限り何千と居る。

 避難と言っても軽い気持ちだから、殆どの住人が抱える荷物が少ない。

 住民は夜のなれば戦闘行為が中断され自宅で寝て、また朝方に非難すれば良いと考えていた。

 確かに野戦ならば奇襲が無い限り夜戦は無いだろう……。

 しかし、今は篭城戦であり昼も夜も関係がない事を知っている者など居ないのだろう……。


「き、北門が破られたんだ……。こ、このままじゃ、市街地戦になる逃げよう……」


「そ、そうね。逃げましょう、あなた……」


 門より少し王城よりの広場に避難していた一組の夫婦が逃げようと話している。周りにいる住人にも彼らの会話は聞こえるほどの声・・・・・・・・であった。

 この夫婦の会話を聞いていた、若い男性が自分の両親と思われる年老いた夫婦の手を引いて、南門の方へと動き出す。彼が取った行動で他の住民にも最初の夫婦が話していた北門が破られた・・・・・・・と言う事に信憑性を与えていた。


「今から外へ逃げても、王都周辺には敵が居るはずだ…。王城に行けば受け入れてくれるかもしれない」


「そ、そうね!王城なら城壁だってあるし、少ない人数・・・・・なら受け入れてくれる・・・・・・・・かも」


 会話をしていた夫婦が広場から王城に向けて歩き出す。この行動を見ていた他の住民も危機感を覚えたのか、それとも不安感を刺激されたのか逃げ出した夫婦よりも先に王城に辿り着こうと慌てだす。

 王城といえど広くは無い、非難を受け入れてくれる人数には限りがある。逃げても王城への避難民が多ければ入れなくなる、皆まるで競うかのように逃げ出す。

 時を同じくして、南門の方でも似た状態になっていた。なんでも敵は王城を目指して侵攻する、王都内に留まっていなければ戦闘に巻き込まれる事はないと数人が言い出した為に、門の開放をするよう逃げてきた住民が門兵に詰め寄っていた。

 逃げようとする人間の心理によって彼方此方でパニックが起きていた。


 さて、そもそも遠すぎて見えない北門の事を知るには直接見に行くしか手段が無いのに、あの夫婦は言い切れたのか?

 それと、本来であれば逃げようとする人間が生存確率を落とすようなことはしない。会話を聞かれないように意識していなくとも自然と小声になるはずだし、他の人に気付かれないように慎重に行動をする。

 今起きている事は全て、ルーランド帝国の間者による集団心理を使った戦略であった。王都内でパニックが起これば王城を落としやすくなると考えたからである。







「ほ、報告します。現在王城を囲うように住民達が押し寄せています。

 なんでも、王城内に避難させろと口々に言っております……」


「なんだと!! それは真であるか!」


 報告を受けたエイド将軍たち騎士団本部の人間達の顔色が青ざめていく……。

 状況を把握するために、エイド将軍が慌てて外へ向かって歩いていく。

 騎士団本部の建物から外へ向かって出て行くと、騒がしい声がすでに聞こえてくる。

 城壁まで距離があるはずなのに、声を聞きエイド将軍は動けなくなる。百や二百人の声ではないと予想できるほどだったからだ……。

 再度、歩を進め始める。城壁の上に続く階段を登りきると堀の向こう側には千人以上の住民が助けを求める声を上げている。

 一人一人が必死の声を上げている、子供だけでも良いからと懇願する母親や出来るだけ城門の近い場所に行こうと怒鳴り声を上げる者……。


(王城に住民を入れる訳にはいかない……。ここは王城なのだ……。

 市街地戦が成功すれば停戦を向こうが受け入れると思うが、もし停戦を相手が受け入れない場合はここが戦場になる……。王を守るのに戦闘に関係の無い人間が居れば戦闘の邪魔にしかならない……。

 しかし、ここで住民を見捨て王城が戦場になれば間違いなく住民に被害が及ぶ……。

 住民の保護をせずに停戦が締結された場合にしろ、住民による王政への不満になるであろう。見捨てられたと感じた住民は後に反乱を起こす危険性さえある)


 エイド将軍は決断に迷ってしまう……、ここでの判断を間違えると王国の存亡に関わる。


「エイド将軍! 申し上げます!

 リング王より開門せよと下達されました。

 開門を!」


 本部より慌てて兵士が駆けて、王からの命令を伝える。

 兵士から言われた言葉を何回も頭の中をめぐる。王は、我ら騎士団本部の判断に任せておけないと考えられたのか……。


「エイド将軍! 開門を!」


 反応を示さないエイド将軍の態度に業を煮やしたのか兵士がまくし立てる。


「出来ぬ! 今開門すれば王の命を危険にさらす事になりかねん!」


 この命令を聞いてしまえば、本当に危険な事になるからだ。


「しかし! 王の命令であります!」


 エイド将軍の顔に焦りの色が伺える……。

 王の命令に背くことは国を裏切る事と同意であるからだ。

 しかし、国は王が居なければ成り立たないとエイド将軍は考えている。

 どのくらいであろうか、エイド将軍が黙り込んでいた口を開く。


「正面の門を開門する! しかし、受け入れるのは子供並びにその両親を優先させよ。その次に若い女性を優先し、独身の男や老人は空きがあれば受け入れると伝えよ!」


 エイド将軍の決断で開門の命令に条件を付ける、全ての住民の受け入れなど出来ないからである。

 将軍の決断をもって王城の正門が開門された。

 正門が開門された事で人が雪崩のように押し寄せてくる、選定するはずであった兵士は堀に落とされたり、待たされ不安感を刺激されて暴徒化した住民により殴られたり攻撃を受けていた……。

 全ての判断が遅すぎたのであろう、暴徒と化した住民に兵士は武器を奪われ殺される……。

 何の為に開門したのか分からなくなっている……、本来の敵はルーランド帝国軍であるのに、今襲ってきているのは自国民である。下手に攻撃を加えれば暴徒を鎮圧できなくなるばかりか王の命に関わる事は明白な状況になってしまった。


「判断を誤ってしまった……か……」








 玉座の間で王は受け入れた住民が暴徒と化していることを伝えられる。

 王の周りにいる文官、武官がどよめき立つ……。

 敵はルーランド帝国軍だけでなく、自国民が刃を向けるとは思っていなかったのだろう。

 そもそも、兵士の削減を今までに行っていなければ暴徒の鎮圧も出来たであろうし、そもそも住民が暴徒と化す事も無かったのではないかと結果論を唱える文官も居るほど、場が混乱している。


「静かに……、余は腹を決めねば成らぬようであるな……。

 暴徒と化していても我が国民である!

 決して、住民には攻撃する事罷り成らんと、王城内にいる兵士へ伝えよ。

 それと、向こうへ使者を出したい。エイド将軍が適任であると思う、連れてまいれ」


 リング王の発言で慌しく兵士が数名部屋を後にする。

 一刻もしないうちにエイド将軍が王の御前に姿を現す。


「エイドよ、私の国は私の民は降伏しても幸せな道を歩めると思うか?」


「心情を答えてもよろしいでしょうか?」


「構わん、申せ」


「暮らすだけならば何処であろうと暮らせましょう。

 しかし、生まれた国が無くなるのは、我が国民の心の帰る場所が無くなると言うことでございます。

 土地が残っても文化や風習は残らなくなるでしょう……。

 さすれば、唯の人という名の動物に成り下がります。

 人は文化を欲します、いずれルーランド帝国民として誇りを持ちリング王国を忘れていくでしょう」


 エイドがリング王に伝えれる事を素直に話す。


「ふむ、結論を言えば生きていけるという事だな?」


「はっ! 生きていけます」


「ならば、よろしい。降伏をする事としよう」


 玉座にすわる王が静かに孫に話しかけるかのように語った。

 王が降伏を決断するであろう事が、周りに居るものたちは薄々気付いていたのであろう。誰として声を荒げる者は居なかった。

 お待たせして申し訳ないです。読んでくださる皆様に感謝しています。今回は視点を変えて書いてみました。

 現在「アクセ数=強さだ!!~見てくれる人は神様です~」を更新してまして、執筆が遅れています。此方の作品はギャグで構成された話なので読みやすいかもなので、一読をしてみてください。ではではノ

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