番外話 メメンとモリン 1
内容がダークです。
気分を害する事が予想できますが、お付き合いお願いします。
この番外話は二話構成で考えています。少し文章が短いのは分割しているためです。では、メメンとモリンの話をどうぞ!
ルーランド帝国において、双子というのは不完全な存在、神の子ではなく悪魔の子として忌み嫌われる対象であり、死をもって生まれ変わらせる存在と認識されていた。
人とは、神より一つの器に一つの魂を与えられた存在だとされている。
しかし、双子というのは神が一つの器に一つの魂を与える神聖な行為を悪魔が邪魔をし、本来一つの器に収まる魂を分割され、別々の器に入れさせられたと考えられている。
そのために、ルーランド帝国で双子が生まれると捨てるように孤児院などに手放し隔離するのが当然のことだとされている。
中には、世間の目から子供を隠しながら育てる親もいるのだが、双子だと分かれば最悪処刑される事もある。
ルーランド帝国では、魔導師、魔法陣の研究が盛んに行われていたが、実験が過酷なこともあり志願する兵士が居ない事が問題となっていた。
そもそも、魔力量には個人差があることは知られていたが、何処まで使用すると精神に支障きたすのか? どれほどの魔法までなら体は耐えられるのか? それを検証した魔導師は居なかった。
そこで、苦渋の選択として魔導師としては未熟な者を一から育てて実験を行う事が常習化していた。
その結果、個人が保有する魔力量と、その個人が保有する魔力量と同等の貯蔵庫一人分の魔力量を使うまでは安全な事は繰り返しの臨床実験で証明されている。
もし、それ以上の魔力量を使うには精神的な負担と体にかかる負担が大きい為に、どんなに無理をさせても貯蔵庫二人までが限界であると結論付けがされていた。
さて、ここで疑問が出てこないだろうか?
育てる魔導師は何処から連れてくるのだろうか……。
答えは至極簡単である、必要とされていない人間を使えば良いだけである。
戦争孤児であったり、捨て子であったり、双子であったりである。
ルーランド帝国魔法院指示の元に沢山の実験が繰り返されていた。
ボークスは魔導師を目指し、帝都魔法院で勉学に励んでいたが、魔法使用において前例がない症例を持っていたために魔導師発展の為に実験に参加するように命令が下されていた。
帝都を離れ、郊外の山岳部の麓に広々とした土地が広がっていた。人の手によって創られた広場、魔法院の職員と実験体が住まう綺麗な三階建ての建物が聳え立っている。
外壁は白を基調として作られ、太陽に照らされ教育施設か聖堂を思わせるほどであった。
この建物が、人目が付かないような場所に建てられており、この施設を知っている者はルーランド帝国でも限られて役職に着いていないと知らされていなかった。
建物の横に広がる、開かれた広場では年端のいかない子供達が、連続魔法使用による弊害を調べるために休むことなく魔法を使用している。
ボークスは訓練という名の実験を横目に、対魔法用の障壁が術者の前に展開されていなくても効力を発揮できるかを対象として実験に参加していた。
ボークスが向けた視線の先には、連続で飛んでくる魔法を、魔法障壁でただひたすらに受けている双子の少女の姿があった。
彼女達も自分と同じ魔法障壁の実験の最中とあり、自然と視線が向いていた。
「ボークス兵士!今から飛んでくる魔法を出来るだけ防ぐように!いいかね?」
ボークスに白衣を着た男が話しかける。
痩せ型で色白、少し目が大きく感じる。街中で見かけたら忘れる事が出来ないほどの印象を与える男である。
「はい!要望に応えられるよう努めます」
「うむ、よろしい。
では、検証に入る」
白衣の男の号令で、並んでいた子供達が魔法を発動する。ボークスに対して連続して炎の塊が迫る。
ボークスは先ほどまで見つめていた少女達のことを忘れ、我武者羅に魔法を防ぐ事に集中する。
このような実験が繰り返され、一ヶ月以上経っていた。
「ねぇ、お兄ちゃんはどうしてここに居るの?」
「ねぇ、どうして大きいのにここに居るの?」
今日の苛烈な実験が終わり、夕食を食堂で食べているときであった。
三十人は座れる食堂、実験のせいで食事か出来ない子供も大勢居る為に、狭い食堂でさえ人がまばらになっている。空席があるにも関わらず、魔法障壁の実験をしていた双子がボークスの左右に腰掛ける。
「僕はね、魔法が上手く使えないんだ。他の人と違って、手の届く範囲しか効果を発揮できないんだ……」
「それってどうしてなの?」
「ねぇ、なんで?」
赤い瞳に、可愛らしい淡い桃色の髪を揺らしながらボークスに聞いてくる。
「なんでだろうね……、僕にも分からないんだ……」
双子の女の子は不思議な顔をボークスに向けるが、応える事が出来ないためにボークスも困った顔をするしかなかった。
この会話をきっかけとなったのか、夕食の時間になると双子は、ボークスの隣の席に来るようになった。
「今日の訓練は大変だったね……」
「そんなこと無いよ、まだ頑張れる」
「大丈夫、まだ頑張れる」
この子達と会話するようになって、ボークスはあることに気付いていた。
この双子は絶対に辛いと言わない。逆に、頑張れるとよく口にするのだ。
「そんなに頑張ったら、倒れちゃうよ?」
「頑張らないと、おとーさんとおかーさんに会えないから」
「そうなの、頑張らないと会えないの」
ボークスは言葉に詰まる、ルーランド帝国において双子という存在がどのように扱われているかを少なからず知っていたからだ。
この子達も、両親に捨てられた事は想像しなくても見当がつく。
ましてや、この施設にいる事が結果として物語っていた……。
「そ、そうなんだ。お父さんやお母さんと会えると良いね……」
現実を知っているのに、声に出せなかった。事実を言える人間などいるのだろうか……。
きっと、彼女達を人として見なしていない人間なら諭すことも厭わないのかも知れない……。
だが、ボークスにはその一言を発する事は出来なかった。健気な少女の笑顔を見てしまったから。
次の日の実験も終わり、食堂で食事を取っていても彼女達が姿を現さなかった。
いつもなら、隣にくる双子の姿を探すが見当たらない。午後の実験では広場で魔法障壁の実験をしている姿を確認していたのだが、体調でも壊したのかとボークスは心配になっていた。
だが、あの子達だけではない、実験に耐えれなくなり壊れた子供を、ボークスは今まで散々見てきた。
なのに、あの二人の事はなぜか気になってしまっていた。
ここまで、読んで頂きありがとうございます。
感想などがあれば、どしどし送ってください。批評は出来れば少ないほうがいいな……。活動報告にメメンとモリンの元ネタを少し書かせて頂きました。気になる方は読んでみてください。




