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亡国の騎士団  作者: 雲ノ上
~序~ 動乱不運を告げる
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第22話

 進む平原の先に待ち構えている者達の姿が遠目に視界に入ってくる。

 しかし、待ち構えていた者達は予想に反してかなりの少数でった。


「なんだあの数の少なさは……。

 ボークス将軍、敵が待ち構えているようですが、我らを馬鹿にしているとしか考えれません……」


 先任参謀が望遠鏡を取り出し、相手側の戦力を考察し始める。

 人数にして、百といったところか……。しかも、あちこちに負傷者がいるではないか……。

 たしか、梟と言う傭兵団であったな……、先のレクト将軍との戦で損害が大きかったのか……?


「ふむ、少数か……。相手も何か考えがあるのかも知れんぞ……。

 私は強き者との対峙を望んでいると間者に伝えてあるのだからな……」


 ボークス将軍が馬上で腕を組み考え込む。


「私には捨石にされた者どもに見えます」


 先任参謀は相手になりませんなと呟いている。


「ボークス様なら、どんな奴が来ても勝てますわ」


「ボークス様なら、相手がどんなに頑張っても勝てないですの」


 メメンとモリンはボークスのことを信頼しているのか、相手の戦力が分かっていない状況でも心配はしていないようである。


「あれしか戦力が無いのであれば、騎馬隊でも出せばすぐに消えるでしょう。

 所詮は悪あがきでしかない人数でございます」


 先任参謀は、負傷している兵士が戦力になっている時点で相手が追い詰められたネズミでしかないと考えていた。

 そもそも、ここで無駄な戦力を損失するわけにはいかない。

 戦力は歩兵や工兵を一としたならば、重歩兵が十倍、騎馬が二十倍、魔導師が四十倍の換算になる。

 あくまでも、我らの部隊の役目は王都攻略にあるからである。篭城する敵を攻略するには相手の戦力の三倍以上を確保する必要性がある。

 現在、ボークス将軍が率いている部隊は殆どが歩兵、工兵、重歩兵であり騎馬や魔導師は数が少なかった。

 本来であれば、先に侵攻していたレクト将軍の部隊を入れて二万近い兵力になり、相手の戦力の三倍を超える計算であった。

 しかし、レクト将軍が撃破された為に、急遽帝都からの増援部隊が派出となっている。


「幸いな事に、王都までは目と鼻の先にございます。この先、騎馬隊の出番は無いと考えますが故に、ここで騎馬隊に多少の損害が出ようと問題ないと考えます」


 望遠鏡をから目を離した先任参謀がボークスに進言する。

 先任参謀はこの時、負傷者に気を取られ相手が四人一組、一人に付き後ろに三人ほど控えている状態に違和感など抱いてなかった。


「ふむ、先任参謀に任せる……」


 ボークスに一任され、先任参謀の号令で騎馬隊千人が隊列を組んで出陣していく。







 かなり距離があるにも関わらず、行軍する兵士の歩で地響きが起き、ザック達の居る場所まで地鳴りが聞こえていた。

 地鳴りを耳に聞きながら、ザック率いる魔導師部隊は相手が何時攻めてきても良いように、すでに戦闘態勢になっていた。

 ザックの後ろに控える貯蔵庫タンクが測距儀を覗き込みながら距離を測っていた。


「さて、相手さんはどう出るか……。

 ここで出来るだけ相手の戦力を削っておきたいな……」


「相手に魔導師部隊が無いわけじゃないでしょ。

 私としたら魔導師を出来るだけ削りたいですがね」


 ザックの近くに居た部下がザックの独り言に答えている。

 確かに魔導師を減らせると戦力が大幅に落ちる、篭城戦で優位に立てるようになるが、相手が馬鹿でない限りここで魔導師は出てこないであろう……。


「いきなり、広範囲魔法を使う予定だ。すまんが、耐えてくれよ」


 後ろに控える貯蔵庫タンクに申し訳なさそうにザックが言う。


「隊長は気にせず、ガンガン魔法を撃って下さいよ。

 そのための俺達ですかね!」


 貯蔵庫タンクの一人が笑顔を見せる。


「隊長……、動き出しましたね。相手は騎馬隊のようです……」


「何が出てこようが、俺らは戦うしかないからな……」


 ザックは何時でも魔法を撃てるように集中をはじめる。


「俺が先陣を切る。追撃を頼むぞ……」


 ザックの言葉が皆に伝わっていく。

 測距儀を覗き込んでいた貯蔵庫タンクから距離が上がり始める。


「まもなく一キロを切ります。敵まで九百、行けます!」


「よし、野郎ども気合を入れろ!

 俺達の怖さを思い知らせてやれ!!」


「ウオォォォォ!!」


 ザックの正面に大きな魔法陣が現れる。魔法陣が完成したのだろう、ザックが地面に両手を付ける。

 両手が地面に付いたら、完成した魔法陣が地面に消えていく。

 しばらくすると、大きく大地が揺れだす。

 こちらに向かってきていた騎馬隊の前方、進んでいた地面が突如として地割れを起こし、ところでころで地面が隆起したり陥没を繰り返している。


「今だ!!うてぇぇ!!」


 ザックの掛け声で一斉に魔法陣が出現し、炎の塊が騎馬隊に向かって飛んでいく。

 よく見るとザックの後ろに居た貯蔵庫タンクの一人が魔力が枯渇したのかその場に倒れていた。


 (すまない……、よく頑張ってくれた……。だが、今は謝らないでおく……。天国か地獄で出会ったときに、嫌ってほど謝ってやるから我慢してくれ……)


 敵の騎馬隊はこちらの戦力が魔導師だと思っていなかったのか、それとも広範囲の魔法が発動するとは思っていなかったのか慌てふためいていた。

 軍馬も地面が揺れ、割れたことで動揺し瞬く間に制御が利かなくなっていた。

 隊列が乱れたところに追撃が加わった事で避ける動作も取る事が出来ずに、ただただ魔法を喰らい自陣に戻れたのは一割程度しか居なかった……。


「これで少しは削れたか……、次は何が出てくるか……」


 ザックは敵を見据えながら、時間を稼げている・・・・・・・・事に安堵していた。







 敵の戦力を把握していなかった先任参謀は、目の前で起きた事に顔を青ざめさせていた。


「こ、これは……、何が起きたと言うんだ……」


 捨石だと勝手に思っていた、袋のネズミだと考えていた。

 なのに、なのに……いざ戦闘が始まれば、瞬く間に騎馬隊が全滅しているではないか!


「ほう、あれだけの魔法を一人で行使したか……。

 こいつはかなりの強き者であるな!」


 今、目の前で起きたことにボークスは感動さえしていた。

 敵を侮るような気持ちが無かったと言えば嘘になる。しかし、これほどのことをするとは思いも付いていなかった。


「ボークス様、モリンとメメンならあれくらい出来ますわ」


「ボークス様、メメンとモリンならもっと凄い魔法を使えますの」


 ボークスが感激の声を上げたのがうれしくないのか、メメンとモリンがどうって事がないと言っている。

 メメンとモリンの話など聞いている余裕の無い先任参謀は、慌てて望遠鏡を覗き込み相手の戦力を分析を開始する。


「こ、これは……。まさか……、しかし……」


先任参謀セサよ、どうした?」


 唸っている先任参謀が信じられないと言いたげな顔をボークスに向ける。


「そ、それが、向こうは魔導師のみの編成だと思われるのですが、ひ、一人の魔導師に対して貯蔵庫タンクと思われる者が三名は付いております……」


「ほう、自分の精神が崩壊する事も、体が確実に壊れる事も厭わないか……」


「実際に、あの様な戦術が使われた実例などありません!!」


 先任参謀は、この状況では少ない魔導師に頑張ってもらうしか打開策は無いと考えはじめていた。

 多少の戦力が無くなろうとも、今を乗り越えなければ王都攻略など出来なくなる。


「相手の死をも恐れない戦い方!これだけの戦力が目に見えているのに逃げださない勇気!

 これこそ、戦場である!!今の時代に、これ程の武人はそうは居ないだろう!!

 強き者に敬意を示すためにも、私が出るぞ!!」


「お、お待ち下さい!!ボークス将軍自ら戦場に出る事はなりません!!

 もし、何かあった場合どうなされるおつもりか!」


 先任参謀がボークスが出る事に反対する、参謀としては当たり前の反応であろう。


「お前の意見など、今は聞いておらん!」


 ボークス将軍は騎乗していた軍馬から降り立つ。

 先任参謀も、慌てて軍馬を降りボークス将軍に詰め寄る。


「ボークス将軍!魔術師隊をむか……」


うるさいぞ・・・・・ボークス様が出るんだ・・・・・・・・・・異議を挿むな・・・・・・、ですわ」


だまりなさい・・・・・・首を飛ばされたいのか・・・・・・・・・・無能が・・・、ですの」


 先任参謀が代案をボークスに伝えようと詰め寄った事に、メメンとモリンは激怒したのだろう。

 背後に回ったメメンとモリンが、先任参謀の首にナイフ二本を宛がっていた。力が入りすぎたのか先任参謀の首には血が滲んでいた。


「メメン、モリンよ。先任参謀セサを殺すなよ……。

 私の部下なのだからな」


「ボークス様、もちろんですわ」


「ボークス様、もちろんですの」


 メメンとモリンの二人は何事も無かったかのようにボークスの後ろに控える。


「「ボークス様、武器は・・・……」」


 二人の問いかけに対してボークスは両手を広げる。


「剣や槍などの武器は、かの相手に対しては不要!覚悟あるものに対しての非礼になろう……。

 私の本気で相手をさせて頂く!」


 メメンとモリンは、ボークスの白銀に輝く鎧のガントレットを外し、黒ずんだガントレットの装着を始める。

 汚れているように見えるが、何度も何度も焼きを入れ、鉄を増して作った事によって黒ずんでいるのが見て取れる。

 重量に関しても、かなりの重さであろう事が予測できるが、装備をつけたボークスは重さなど無いかの様に腕を動かしている。


「これを着けて戦うのは久しいな、ライド王国王都戦で着けたのが最後か……」


「久しぶりにボークス様の本気が見れるのですわ!」


「久しぶりにボークス様の本気が見れるのですの!」


 メイド二人がボークスに向ける視線は憧れの目線である。


「それでは、行ってくる!」


 ボークス将軍がゆっくりと自陣を出、目の前に待つ敵に向けて歩を進めていく。

 ライド王国王都戦で、並ぶ武人無しと言われた男の出陣であった。

 敵の方が物語を書くのがはかどる、メメンとモリンが出るだけで話を考えるのが楽しくなる今日この頃です!

 あ、ボークスも書くの楽しいですよ……。敵なのにかっこいいしね!

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