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亡国の騎士団  作者: 雲ノ上
~序~ 動乱不運を告げる
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第18話

 部屋の中央にある机に十名程の軍人と思われる者たちが、向かい合って座っている。

 中央の机の上には自国と周辺国が描かれた地図が広げられており、地図上には兵士を示す駒が並べられており、現在の兵士の行動状況を示していた。

 リング王国とルーランド帝国の国境線に位置するオール砦には大きく攻略を意味する×印が記されている。


「まずは、オール砦を攻略できた事は幸いであろう……。

 リング王国の出方次第ではあるが、我が帝国の勝利は揺るぎないものであると確信している」


 上座に座る初老の男が発言をすると、周りに座っていた者達の視線が一斉に集まる。

 視線が集まる先に居る彼こそが、ルーランド帝国を治める皇帝であるルーランド13世である。

 武人であるのか、歳を重ねているのに衰えているようには見えないほどに筋肉が付いているのが着ている衣服の上からでも分かるほどである。

 眼つきは鋭く、白髪が混じった深い緑の髪を後ろに流している。

 彼の話す声は、声色は低く、さほど大きくないはずであるが広い室内に響き、威厳が感じられる声である。

 

「陛下、今後の軍事行動を説明させていただきます」


 皇帝の右側に座る男が立ち上がり、陛下に向かい一礼してから地図上を指揮棒で指し示しながら説明に入る。

 

「レクト将軍率いる部隊は現在、王都に向け侵攻中であります。

 なお、レクト将軍率いる部隊より、先のオール砦における戦闘の損失は軽微との報が上がっております。

 しかしながら、王都攻略部隊であるボークス将軍が率いる部隊の移動に時間が掛かっており、レクト将軍が先行している状態であります。

 軍部としては戦力の拡散は望ましくないと考え、先行をしないように達しております」


 リング王国内を進む駒の後方に、まだルーランド帝国内を出ていない駒がある。


「そして、先行をさせないよう判断をしていますもう一つの理由でありますが、リング王国がオールに向け兵士を送る事が予測できる為であります。

 諜報部の者たちがリング王国騎士団内に入り込んでおりますので、戦闘では優位になると思われますが過信するわけにもいきません」


 説明を聞きながら頷く陛下を確認したうえで話を続ける。


「リング王国といえど、オールをみすみす捨てるとは考えられません。

 ですが、兵力の問題があろう事は明確であり、出せたとしても四千が限界で有ると軍部として試算しております。

 レクト将軍の部隊が戦闘に入れば、少なからず損害が出ますゆえに後の王都攻略を考えますとボークス将軍の到着を待ち、行動を共にするのが最善策でありましょう」


 他の出席者たちも同様に考えているのか異議を挟もうとする者はいない。

 しかし、下の方に座る女だけは表情が少し険しかった。

 会議に出席している者の中で女は一人である、ローブを纏っているので魔導師なのであろう。

 表情が険しい理由は分からないが、発言をしないのであるから問題は無いのであろう。


「以上で、進行状況の説明を終わらせて頂きます」

 

 指揮棒を使い説明していた男の話が終わると、向かいに座る男が立ち上がり陛下に一礼し話し出す。


「補給物品、並びに兵站についての説明に移らせて頂きます」


「レクト将軍の部隊に関しては、武器類を優先して送っております。 

 第一陣の補給部隊はすでに到着し、補給を終えている頃でございましょう。


 ボークス将軍の部隊につきまして動きが遅きは、我が後方支援部隊にも非があろうと考えております、移動の速度を上げるために軍馬車を再度編成しております。

 歩兵並びに工兵の移動速度を上げるために使用していただく様にボークス将軍には進言しております。


 それと、兵站を運ぶ部隊の数を増やし、個々の積載量を減らし移動速度を上げるように指示をだしております」


 ルーランド13世の鋭い眼光が説明する男に突き刺さる。軍事行動の遅れは後方支援部隊の責が大きいからであろう。

 説明する男の顔に冷や汗が流れているのが遠目に見ても分かるほどである。


「もう、よい……」


 陛下の一言に男は慌てて一礼し席に座る。

 どうにか説明責任を果たした男は額を流れる汗を下を向きながらハンカチで拭っていた。

 次に立ち上がったのは冷や汗を拭う男の隣に座していた男である。


「現在の市井における情報統制は順調であり、世論においてもこの戦争を是とする論調が強くなっております」


 情報、諜報部の主任が淡々と発言をしていく。


「リング王国に放っている諜報員により、リング王国内の世論においても戦争やむなしの論になりつつあると報告が上がっております」


 国民感情が国を左右する事をルーランド帝国は知っているのであろう、ルーランド13世にも笑顔が見て取れる。


 会議も順調に進み、終わりに差し掛かっていた時である。

 会議を行っている部屋の扉が勢いよく開け放たれたのである。


「何事か!!陛下の御前であるぞ!」


 最初に進行状況を説明していた男が大きな声を上げる。

 しかし、緊急事態なのか聞き止まることなく室内に慌てた兵士が入ってくる。


「も、申し上げます!

 レクト将軍が!!レクト将軍が率いる部隊が全滅!全滅したとの報告が届きました!!」


 会議に出席している皆の顔色が変わり、どよめきが起こる。


「そ、それは確かな情報なのか!!」


「はっ!補給部隊がレクト将軍の部下を数名保護しました。

 保護した兵士の言であります!!

 リング王国軍と交戦があり、戦況は優位に進んでいたとの事ですが突如として現れた魔導師と思われる一人の人物によりレクト将軍を初め、多数の戦死者を出した模様であります!!」


「何を言っているのか分からないぞ!!」


「確かな情報でございます!!一人に全滅させられたのです!!」


 険しい表情をしていた女だけが納得した表情をし、他の者達は未だに信じられないと顔が物語っていた。

 全滅の報告を受けたルーランド13世の表情は先ほどと変わっていないようであるが静かに言葉を発する。


「速やかにボークス将軍率いる部隊の今後の作戦を練る必要がありそうであるな……」


 このレクト将軍の全滅を知らせる一報は、速やかに機密事項とされた。

 なお、この事は後々気付く者が出てくるのだが今は混乱の方が大きかったようである。

 ルーランド帝国が再度サザナミと対峙した瞬間であることを認識していたのは多分会議参加者では女魔導師だけであろう。

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