第12話
読み直しをして気づいた……
登場人物の名前が最初と現状で変わってたので検討し
(誤 ルーア) (正 シーア) を正式にします
前半部分の訂正は逐次直しています、ご了承をお願いします。
思い出話であるけれどサーヤの過去に触れる事が出来た事にフッカは新鮮な気持ちになり、自分に魔導師のノウハウを教えてくれたサーヤの過去に触れれる事など、このうような時でなくては機会などないであろうと心でフッカは考えていた。
フッカの考えなど知らない当事者は相変わらず煙草を吸いながら、淡々と懐かしむように話していた。
「師匠の訓練は兎に角、新しく確立された魔法陣に使用する文字を暗記する事から始まったんだ。自分達が使用している文字ではないから覚えるまでが大変だったよ」
「それは今使われてる魔法陣記号のことですか?」
「ああ、そうだよ。今使用されてる魔法陣記号のほとんどを師匠が確立したと言っても過言ではないね」
「隊長の話から考えると当時十二歳の少年が考え付くって凄いことですよね」
「まぁ、確かにね。魔法陣の事を学んでるときに質問をした事があるんだ、「どうやって思いついたんですか?」ってね」
サーヤが当時を思い出して可愛らしく問いかける素振りを見せながら話す姿にフッカは失礼だと思いながらも笑みをこぼしてしまう。
「そしたら師匠が言うには、「五歳の時に魔導師だった親父の魔法陣を見よう見まねで真似て発動したら出来たんだ。もちろん魔法陣に書かれてる文字も見よう見まねでね書いたんだが、書いた文字は似てるけど違うものだったんだ。それが始まり」ってね」
「え?それが成り立ちなんですか?」
「略式文字って師匠は呼んでたな。発動できた事で新しい可能性に師匠の親父さんが気づいて、そこから師匠と親父さんの試行錯誤があったらしい。正式に今の状態に成るまでに約六年を要したとも師匠は言ってたな」
事実は小説より奇なりって事であろう。しかし、五歳の子供が真似であろうが魔法陣を発動したと言う事実はかなり衝撃的であった。サーヤ隊長の師匠は元々魔導師の才があったのではないだろうか?天才と称される人達はきっとなにかしら幼い時から片鱗を見せるものだと昔読んだ本に書いてあったなとフッカは思っていた。
「当時は発案されたばかりだったこともあって使用できる魔導師は多くはなかったんだよ」
「今の魔導師育成学校でも一人前として卒業するには六年はかかりますからね」
「梟に所属していた魔導師達は優秀だったよ、開戦中も修行していたが全員と言ってもいいくらいに使用できていたからな」
「今の魔法陣がもっと早い段階からライド王国内で普及していたら、当時の戦争の結末が変わっていたかも知れませんね」
「それは結果論だ、歴史において、もしも、はないよ」
サーヤの表情が暗くなる。当事者であるから理解しているのだろう、可能性を今更言ったところで過去が変わるわけではない。過去を否定するわけではない、教訓にし今に生かすのが正しいことだと思う。
「今日は少し話しすぎたな。明日の行動に差し支えるといけないから、終わりにしよう」
サーヤの一言で時間がかなり経っていた事にフッカも気づいた。夜空を見上げれば出ていた月もいつの間にか進み、夜が深くなっている事を実感させた。
「今日は色々話して頂き、ありがとうございました。時間があれば又聞かせてください」
「そうだな、そのうちにな」
「隊長約束ですからね」
「今回の行動が落ち着いたらな。分かったら早く戻って休め!」
立ち上がりながらサーヤも夜空に視線を送る。先ほどとあまり変わらない表情をしているのは過去について思い出しているのか?それとも今回の作戦について考えているのだろうか・・・?
深かった夜が陽に照らされ辺りを明るくしていく中で、忙しく動くものたちが居た。
野営地の撤去作業をしている騎士団の面々である、戦闘が近づいている事を理解しているのか各自の表情は緊張を隠しきれて居ないようである。
「ロッソ騎士団長おはようございます」
出発準備を終えたサーヤがロッソ騎士団長の所へやってくる。
「ああ、おはよう。よく眠れたかな?」
「十分に英気を養う事が出来ました」
「なら、結構!強行軍であったために皆疲れているだろうが、疲れを顔に出さずに頑張ってくれている。幸いな事に我が隊は士気も高い、数では不利だがルーランド帝国に対抗できると考えている」
ロッソ騎士団長は白髪が混じった顎鬚を触りながらオール砦がある方向を見つめていた。
「ロッソ騎士団長、今回の作戦について進言があります」
「ふむ、遠慮なく意見を言いたまえ」
「はっ、昨日考えていたことですが、オール砦が落ちていた場合につきまして意見を。
敵の人数から考えても移動は速くは無いでしょうが早ければ明日には接敵してもおかしくありません、先行の斥候を出すのがよろしいかと」
「うむ、わしも考えていた事だ。分かった、斥候を出す事とする。他に意見はないかね?」
「今の所はありません」
ロッソ騎士団長が手を挙げると近くに居た兵士が速やかに近づいてくる。
「斥候部隊を先行させ、これからの偵察任務の報告は細かく上げるように伝えよ」
「は!了解しました」
指示を出された兵士は足早に去っていく、去っていく兵士の後姿を見ながらサーヤはとりあえず不安事項の一つをつぶせた事に安堵していた。
オール砦が攻略されていなければ十分に勝機はあるだろうが、落ちていた場合は苦戦が予測できる。戦闘をするにあたっては数は多い事に越した事はないからである。
しかし、現段階での増援は見込めない。数で圧倒的に不利である事、なにより魔導師の数が少なすぎる事も不安を煽っている。作戦を優位にするには先制攻撃が必要になってくるであろう、それでも勝率が少し変動する程度と考えておくほうが好ましい。
((やはり、こんな時にこそ師匠が居てくれれば戦闘も優位に進めれるだろうに。まぁ、嘆いていても戦況は変わらないか))
先行する斥候部隊が本隊から離れていくのが視界に入ってくる。相手より先に見つけ攻撃に移れるようにするためには彼らの期待するしかないのが現状である。
「出発準備が整いました。号令をお願いします」
騎馬隊の兵士がロッソ騎士団長に準備完了を告げる、ロッソは腰に下げていた指揮棒を取り出し目の前に突き出す。
「オール砦に向け出陣!!」
指揮棒を振り下ろしながら出発を下令する、号令が行き渡り部隊が一斉に動き出す。一糸乱れぬ行進をロッソとサーヤは見つめながら今後について思案するのであった。
少し薄暗い店内には似つかわしくない者達で溢れかえっていた。店内に居る男も女も、それぞれ今から戦場にでも行くかのような装備をしている。そこそこの広さを持つ店内だが今は人数が多いせいか狭く感じる。
店内ではローブ姿の者が圧倒的に多く、中には全身鎧の者が居るがローブ姿の方が多いために浮いているようにも感じる。
もう直ぐお昼を迎える時間になり、店内で再会を懐かしむ者や最近の事を話していた者達は男も女も関係なく少しずつ会話が無くなっていく。
店内が静かになった時にちょうど街で正午を告げる鐘が鳴り響く、鐘の音に合わせるように階段から数名降りてくる。階段を降りる音に店内に居た者達の視線が集まる、マスターをしているレンとシーアが連れ立って皆の前に歩み寄る。
「まず、皆集まってくれてありがとう。
事態はかなりこちら側が不利な状況だ。
しかし、弱音は吐いていられない。我ら梟に直接増援要請が来たと言う事は、私達梟なら助けてくれると信頼しているからだ」
店内にはレンの声だけが響いている、仲間も静かに聞き入っている。
「私はこの要請を承諾した。皆には今回ルーランド帝国と戦ってもらう、リング王国の存亡が掛かっていると言っても過言ではない。
今は無き私達の祖国のような事態にはしたくない・・・・・・。
当時は戦力が整っていなかった、だが、今の梟なら過去のような失敗はしないと確信している」
聞いている一人一人の表情が決意を決めた顔になっていく。皆昔を思い出しているのかもしれない、もっと力があれば、もっと強かったらと嘆いた昔を。
「今回の戦闘は強制はしない、家族が居る者や技術的に衰えたと感じている者が居れば残ってもらって結構だ。
咎めたりしないし負い目を感じなくていい、命がかかわる事だからだ」
レンの言葉を聴いていた一人が前に進み出る、レンの方を見つめたまま進み出る姿は鬼気迫る雰囲気を出している。
レンの前に進み立つと方膝を付き頭を垂れる。
「皆を代表して発言させて頂きます。我らの同胞の中にサザナミ様の意に反する者など居ません、でなければ今回の召集に応じていません。
皆覚悟が出来ているから集まっているのです、覚悟無き者は居ないのです。
ですので後は命令をしていただくだけでよろしいのです」
代表して進み出たフード姿の男に続き後ろに居る全ての者達も方膝を付き頭を垂れる。
「「我らは何時いかなるときも梟とし立ちはだかる敵を殲滅します」」
梟の誓いの言葉を皆が述べる、決意がレンにも伝わってくる。
「ならばよろしい。皆よろしく頼む!!
郊外に軍馬などを用意させてある、各自移動してくれ」
「「了解」」
レンからの命令で一斉に移動を開始する梟の傭兵達、その中で先ほどとは違うローブ姿の男がレンに声を掛けた。男が着用しているローブは年季のはいっている物みたいであちこちに戦闘で出来た傷があった。
「久しいな、元気そうでなによりだ」
「ええ、お久しぶりですね。貴方も元気そうでなによりです。
そうそう、丁度良かった。貴方には十名ほど連れて王都に先行してもらおうと考えていたところだったんですよ。
人選は任せます、それと情報収集も忘れずにお願いしますよ。
たまには男らしい所を見せてくださいね」
「相変わらずだな。まぁいいか、俺に任せてくれ。
もしかしたら王都での情報収集が終わったら先行するかもしれないが大丈夫か?」
「その辺も任せますよ。最善と思われる事は全てしていいです」
「了解だ、それじゃちょっくら頑張りますかな」
フードで顔をはっきり確認する事が出来ない状態であるが、レンも軽口を叩いている男も昔からの知り合いのようである。
店内に居た者達が店をでたおかげで、店内にはレンとシーアだけが残っている。
「エミリーは来ませんでしたね・・・・・・、どうされますか?」
「もう少し待ってみよう、私と君なら高速移動で直ぐに皆に追いつけるしね」
「了解しました」
静かになった店内で、会話もなく来るかも分からない者を待つ。二十分ほど時間が経った頃店の扉が勢いよく開く。
「すみません、遅れました!!!!戦闘用の装備を新調してたら遅れました!!申し訳ありません!!」
店に飛び込んでくるなり、大きな声で謝るエミリー。
「待ってましたよ、決心できたんですね」
シーアが優しく声を掛ける。
「あ、はい!弱いですが一生懸命頑張ります。よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
レンも普段とは違い、優しく語り掛ける。レンの言葉を聴いてるエミリーにシーアが耳元で何かを伝える。
すると、エミリーがレンの前に進み出る。緊張した面持ちでレンを見た後、方膝を付き頭を垂れる。
「わ、我らは何時いかなるときも梟として立ちはだかる敵を殲滅します」
傭兵団梟の誓いをレンに対してエミリーが宣誓する。
「これからは私達の為に存分に力を発揮してください。私からは以上です」
宣誓を聞いたレンは先に店を出て行く。店を出る瞬間に
「シーア、エミリーを王都まで連れてきてください。任せます」
いい逃げるようにレンは店を出て行く。シーアは自分がエミリーを運ぶと思っていなかったのか驚いた顔をしている。
「え?ちょ、ちょっと待ってください!!私じゃなくて師匠が運ぶと思ってたのに」
レンが居なくなった店内に悲しい悲鳴が響いていた。
「シーアさん?よく分からないですが、よろしくお願いします?」
状況が分からないエミリーがシーアに頭を下げていた。これで自分で王都まで来なさいとはいえる状況ではなくなり、不本意ではあるが了承してしまう。
「分かったわ・・・・・・、王都まで私が運ぶから付いてきて」
少し声色が低くなっているが気のせいにしておこうとエミリーは考えつつシーアの後を追って店を出て行く。