第9話
~近代魔方陣についての考察~
まず、この第三章では先の第一章の魔法陣について、第二章の魔導師について、に関連して近代魔法陣とはと題して考察をしていこうと思う。
この本を読んでくれている方は少なからず魔方陣について知識が蓄えられていることを前提に話を進める。第一章でも触れているが、魔法陣とは術者 (魔導師)が自分の中にある魔力で構成する物、魔法を発動する為の式を総じて魔法陣と呼ぶ。
近代魔法陣が出来るまでは、各国ごとに術式は様々で複雑な物であった。使用される術式に組み込まれている文字はその国ごとの言語が使用されていたからである、魔法陣を構築する又は使用するには言語の習得が必須であることは必然となり文字を習得していない者では使用が出来ない。
さて、近代魔法陣が普及した理由が先に問題になった文字に関係している。使用されているのは変わらず文字であるが旧式魔方陣と違いがあるとするなら、文字の簡略化がなされている点である。
近代魔法陣において簡略化とは、一筆書きのように文字が連なって尚且つ省略されている事をさす。簡略化によって一つ一つの文字を覚える必要性がなくなったことが普及に繋がった要因であると考える。
そもそも、魔法陣には沢山の情報を記す必要がある。例えばであるが、目の前に的があり手に小石を持っている状態であると考えて欲しい。的に小石を投げて当てるのに力加減や投げる角度を考えて投げる人は少ないであろう。今までの経験などで力加減や投げる角度は無意識となる。
しかし、魔法陣は術者が式を組み立てるので狙う的の選定、的までの距離、使用する魔力、使用する種類 (火や水等)効果範囲と魔法陣に組み込む情報は沢山ある。ここで簡略化の出番となる、あらかじめ使用する種類や範囲、魔力を表す文字を一括りにし各文字を繋げて簡素化して一つの絵又は記号として覚えておくと、発動はでの時間が大幅に省略される。
簡略化によって文字を覚えると言うより、絵や記号を覚える感覚になり今まで魔力があったが文字が使えなかった者たちが使用できるようになった事も近代魔法陣の役割であろう。
さて、記号として覚えることで色々なメリットが出てくる。その一つが即時発動法である、今までの魔方陣の構築に掛かっていた時間が大幅に短縮された為に即時発動が出来るようになった。これは戦場に措いて有用性が証明されている。
ただし、メリットばかりではない。デメリットがるとしたら応用が利きにくい事が上げられる。決まった記号を使用するために範囲の指定等で速やかに変更が出来なかったりする。このデメリットを解消するために各国は近年色々と研究をしている。毎年何処かの国や個人で新魔法陣が誕生している。
次に同時展開法も近代魔法陣の特徴である。
これは上記にある即時発動法の応用である、右手と左手で別々の事をすると例えるのが分かりやすいと思う。ただ簡略化され記号を使用しているために同時展開が出来るようになったのだ。
これに少なからずデメリットが無いわけではない、使用できる者が限られているのだ。慣れで使用できるようになると言われているが膨大な時間を要する人もいれば一生出来ない人さえいる。そもそも即時発動法が使用できる事が前提の方法である、旧式の魔法陣では同時展開が出来る人間が居るとは到底考えられない。
幾つか特徴を記載し近代魔法陣の有用性は戦場で証明されていると言ったが、この近代魔法陣の出現は最近の事である。魔導師の皆なら知ってる人も多いであろうと思う、ラザー平原の戦闘である。この本では戦争論や戦術論などの話をするつもりはないので各個人で調べて欲しい。
しかしながら、この戦闘で魔法陣が進歩した事は覚えておいて欲しいと作者は思っている。
それでは次は各国の近代魔法の特徴を述べていこうと思う。
A・ラック著 第三章より抜粋