因縁
ハミルトンの過去の一部が、解る
┝兵器開発宰相である真田・美結が秘密理に発令した、ルル・ルルーシェによる【ヴァルキュリア捕獲計画】失敗から、二日。
ルル・ルルーシェは、【パイオニア】から脱退したとされ、ジヴァナを倒すことができる人類【ヴァルキュリア】と指定された。
その後、真田美結は、計画失敗を受け、来とハミルトンの三人で、秘密会議を行った。
┝地下日本・東京・国会議事堂内[秘密地下壕]
「さて。今回の計画失敗を受けて、我々は【第2ヴァルキュリア捕獲計画】を発令する予定だ。今より【第2ヴァルキュリア捕獲計画】をコード【ミカエル】とする。」
日本国総統、入江・來の声が、秘密理に作られた地下壕内に響き渡る。
「【ミカエル】………ですか。【大天使ミカエル様】ですか。」
「何よ。來のつけた【コードネーム】に文句あんの?ハミルトン。」
同じ地下壕内にいた、諜報宰相エイル・ディアリー・ハミルトンの意見に、兵器開発宰相、真田・美結が噛みついた。
「いえいえ。良いネーミングセンスだと思いましてね。しかし、來。【第2ヴァルキュリア捕獲計画】といっても軍隊【パイオニア】……いえ【パイオニア】というと、何か嫌ですね。【ツェッペリン】と呼びましょうか。【ツェッペリン】軍は、この前の【第一次ヴァルキュリア捕獲計画】により軍隊の30%は、使用不能なんですよね。どうやって軍の再編成を?」
「ちょ!?なんで勝手にーーーー」
「美結。ハミルトンの言う通り、【ヴァルキュリア捕獲計画】に使う軍は【ツェッペリン】と呼称しよう。軍の再編成についてだが、ーーー」
「ちょっと待ってください。來」
突然、ハミルトンが、來の発言を止める。
「…………いらぬ、客人が来たようですね。さて………殺りますか、ね。」
そう言うと、ハミルトンは、来ていた服の内ポケットから、小型ショットガンを抜き、來の後ろの方を向けて、発砲した。
「っ!」
「ひっ!?」
いきなりのハミルトンの発砲に、二人は、悲鳴をあげた。
それと、同時に、來の後ろから、呻き声が上がる。
「………まさか、ここに侵入者が、いるとは……。私の部下を配置していればよかったですね。」「いったい何よ!!いきなり、発砲する―ーーーな!?」美結は、予想外の光景に、驚きの声を上げた。
そこには、軍服を着た少女が倒れていた。
「ちょ……まだ幼い子供じゃないか!?何故撃った!?」
「スパイですよ。來。幼い子供ですがね。あとゴム弾ですから。さて………あなたは、どこの国の人間かな?。」
ハミルトンは、倒れている少女に向け、ショットガンの銃口を向ける。
「ぐ………」
┝二時間後【來の自室】
秘密理に作られた地下壕の侵入者は、ハミルトン達【諜報部】により、中国のスパイだった。
「中国………だと……まさか、【鈴・乱衆】がスパイを……」
ハミルトンの報告を受け、來は、ショックを受けざるを得なかった。
【鈴・乱衆】
15才にして、地下中国の総統となり、政治の手腕も最高レベルの少女である。「中国総統の【鈴・乱衆】は、政治の手腕は最高レベルですが、性格がネジ曲がってますから、スパイなんかも、送るんでしょうね。どうしますか?鈴に問いただしますか?」
「いや、いい。どうせ、変な感じで、切り返されるよ。」
「なんで、諦め感じなのよ!?來!!そこは、ばぁぁぁぁん!!と行くところでしょうが!!」
來の、意見に、ばぁぁぁぁん!!と擬音が出そうな感じで、美結が反論した。
「美結さんは、來のことになると、積極的になりますね〜。」
「いいじゃないのよ!!來は、アタシの幼馴染みで、親友なんだから!しかも、アタシ、來のこと好きだし!!」
「知りませんよ…。しかし、鈴さんには、一回問いただしたほうがいいでしょう。これは中国政府の過ちですからね。−−−−−−−來、決断を。」
「そうよ。來。決断して。」
ハミルトンと、美結の真剣な視線に、來は、たじろいだ。
『中国政府に、問いただす、か………。鈴総統は、危険だ。かつて、アメリカを併合しようと、秘密理に、何万という兵を送り、アメリカの首都[アンダーワシントン]を一時的にだが、占領したと聞く……。』
そう。
鈴・乱衆は、かつてアメリカに、何万という兵力を送り、アメリカ併合を画策したことがある。後に【乱衆征服】と呼ばれる事件だが、一時的に地下アメリカの首都アンダーワシントンを占領したのだ。しかし、何故か、一週間も経たない内に、アンダーワシントンから、兵力を撤退させたのだ。
『鈴・乱衆………。奴の考えは、詠めないから、恐ろしい。しかし……』
「………良し。直ぐに、鈴に連絡を、頼む」
入江・來は、結局、鈴・乱衆の過ちを、問いただすことにした。
┝【地下中国・首都[北京]・総統府】
地下中国。地上にあった時は、広大な領土を持っていたが、地下に降りた時に、領土の40%を失った。
当時の総統[美・俊令]は、色々な政策を行うも失敗した。そんな中、突如[美・俊令]は死んだ。理由は、[美・俊令]の側近であった[鈴・乱衆]がクーデターを起こし、その時に、[美・俊令]を暗殺したのだ。
そして、鈴・乱衆が、中国総統の地位に、座り、人々からは【黒き動乱】と呼ばれ、恐れられている。そして、鈴・乱衆が造り上げた宮殿[龍王宮]の玉座の間で、中国最大の総統[鈴・乱衆]が、居座っていた。
┝「鈴・総統。日本政府より、通信が入っております。」
薄暗い玉座の間で、凛とした女性の声が、響き渡る。「………日本からか?」
その女性の声に、鋭さを持った少女の声が返る。
「はっ。スパイの件で、問いただしたい、とのことです。鈴総統閣下。」
「……しくじったようアルな。まったく、あと少しは、バレないと思ったが……。」
少女【鈴・乱衆】中国総統は、苛立ちを含めた声を上げた。
「閣下。どういたしますか?無視をする、という手もありますが……」
「いや。たかが、日本国だ。あんな小国に、対して無視はしないアル。李将軍。直ぐに、回線を開くアルよ。」
李将軍と呼ばれた女性【李・弐春】は、はっ!と言い、部屋にある通信回線を開いた。
そして、起動音と共に、巨大な、電磁スクリーンが、表れた。
『いきなり、すまないな。鈴・乱衆総統。』
表れた電磁スクリーンに、黒髪の女性【入江・來】日本国総統がいた。
「いいアルよ。來総統。要件は、私の側近に聞いたネ。【スパイ】の件アルな?」
『それなら、話が早い。何故スパイを我が日本国に潜入させたか、聞きたい。』「理由は、一つ。貴国が、地上に大量の軍隊を送ったと聞いたアル。その軍隊の目的を知りたくてネ。」
鈴は、悪魔のような笑みを浮かべて、言った。
その笑みに、來は、ビクリッと反応した。
『ただの……調査だ。』
「本当アルか?……私達が送り込んだスパイによると、貴国の【パイオニア】軍の30%が損失したと聞いたネ。そして………『ジヴァナを倒す唯一の存在』とやらを、探している、とね。」『な!?』
「クフフフッ。その様子だと、情報は正しかったようアルな。」
鈴の悪魔のような笑みに、來は、しまった、と声を上げた。
「して、貴国のみが持つ、その『ジヴァナを倒す唯一の存在』とは?何かの新兵器か?」
『それは………』
『來。いいわ。アタシから話す。』
鈴の質問に、言い淀む來の横から、赤髪の情報が表れた。
「貴様は、誰アルか?」
『兵器開発宰相[真田・美結]よ。來に変わって、説明するわね。鈴総統。』
「兵器開発宰相…?やはり、ジヴァナを倒せる兵器があるか。何アルか?その兵器は?」
『鈴総統。兵器なんかじゃないわ………『少女』よ。』
「は?『少女』だと?」
鈴は、美結の思わぬ解答に、驚きを隠せなかった。
【少女】
年端もいかぬただの少女が、[ジヴァナを倒す唯一の存在]だと言っているからだ。
「あははははは!【少女】アルか?あり得ないアル!ミサイル兵器などの強力な武装でも、倒せなかった、あのジヴァナを、年端もいかない少女が倒せる訳がないネ!!」
『いえ。【少女】がジヴァナを倒したのは、事実よ。証拠もあるわ。』
そう、真田は言うと、ある映像をスクリーンに映し出した。
その映像には−−−−−−【ジヴァナを倒す少女】が映し出されていた。
「………なんだ…?この映像は……」
『【ジヴァナを倒す唯一の存在】よ。今の所、三人いて、その内二人の名前は、解ってるわ。【ルシー・カゲトラ】と【ルル・ルルーシェ】。』
「あと一人は?解らないアルか?」
『解らないわ。あと一人の情報は、諜報宰相のハミルトンに調べさせている。』「ハミルトン?ほぉ、あの【蛇】が、そちらにいるとは、な。」
美結の言葉の中にでだ、【ハミルトン】の名に、反応を見せる。
そんな鈴の反応に、美結は、【蛇】?、と聞き返した。
すると−−−−
『そうです。お久しぶりですね〜。鈴さん』
美結の隣から、青髪の女性が表れた。
「そうアルな。ハミルトン。いや、【裏切りの蛇】と呼んだ方が良いアルか?」『【裏切りの蛇】ではなく、【頸狩りの蛇】ですよ。二年ぶり、ですかね。【殺戮姫・鈴】さん。』
ハミルトンは、鈴の嫌味に、そう返した。
『え…?ちょ…面識あるの?』
二人の話に、追い付けない美結が思わず聞いた。
『えぇ。私が、前中国総統【美・俊令】様の側近の頃から、です。』
「そうアルよ。私とハミルトンは、幼馴染みアル。まだ【美・俊令】が、総統の頃、共に、側近として働いていたネ。だけど、私が、美・俊令を暗殺した後、ハミルトンは行方を眩ませたアル。」
『昔の話です。しかし、まさか、スパイを潜り込ませるとは、貴女らしくない。』
「お前から見たら、そう見えるアルか。確かに、私らしくなかったネ。【ジヴァナを倒す唯一の存在】の情報を掴んだから、焦りすぎたアルな。」
『ジヴァナを倒せれば、我々は、地上へ戻れる。鈴総統の焦りは、わかります。』
鈴の自嘲気味な言葉に、來が、そう声をかけた。
「……私は、昔に、こんな話を聞いたことがあるネ。【世に混沌が満ち足りし時、その混沌を撃ち破る5人の者あらわる。】とね。」
『カガリビ様の【預言】ですか……。懐かしいですね……まだ私達が、小さい頃でしたよね。鈴。』
「そうアル。カガリビ様の預言が、本当になりつつある。來。ジヴァナを倒す少女達は、3人確認している、と言ったアルな?」
『あ…あぁ。そうだ。』
「ならば……あと二人の少女達が現れるはずアル。」鈴は、そう断言した。
『カガリビ様…?誰よ、それ?』
『私達が小さい頃に、仲が良かった、女性です。』
「何かを研究していたようアルが、結局解らず仕舞いでネ。今に思えば、ジヴァナを倒す方々を研究してたのかもしれないアルな……。」
『もし、そのカガリビ様…という人の預言が正しければ、あと二人、ジヴァナを倒す者が現れる、ということか?』
「そうアル。−−−−−−來総統。」
何かを決意したのか、鈴は、威厳を込めた声を出す。『なんだろうか?』
「その【ジヴァナを倒す少女達】の捕獲、我々、中国政府も協力させてはくれまいか。」
『え!?』
「カガリビ様の預言が真実味を帯びてきた以上、我々も協力したい。」
『……よろしいのですか?』
「勿論アル。ハミルトンと、協力して行けば、その【少女達】を捕獲できるはずアル。」
『……………鈴。私は、俊令様を殺したアナタを許すことは、できません。』
鈴の発言に、ハミルトンが、そう言った。
美・俊令の側近として、二人は、互いに支え合っていた。
しかし。
鈴は、俊令を殺し、ハミルトンは俊令の死と同時に行方を眩ました。
鈴のしたことを、ハミルトンは、許すことができないのだ。
「………解っているよ。許しを乞うつもりはないアル。だが!協力してほしいアルよ、ハミルトン!!」
『…………………』
しばし無言を貫いていたハミルトン。
だが。
『……………解りましたよ。協力しましょう。來。いいですよね?』
『勿論だ。』
「……ハミルトン。ありがとう……」
┝こうして【日中協力体制】が敷かれた。
これにより、日中両政府により、サイファ達は、追われる身になったのである。
了
後半が、ちょっと失敗しました。