やめてくれ。
次の日、俺は、学校を休んだ。
別に、病気なわけじゃなかった。ただ、なんか。友達のいなくなった学校なんて、つまらない。そう、気が付いたのだった。1週間程度なら、我慢できた。けど、もう我慢の限界。
いつも、話しかけていた存在がいない、というのは、結構きつい。悠乃―。そう呼んでも、
もうだれも答えない。クラスメイトに、こそこそと、陰で、悪口を言われるだけだ。
『紀羽くんって、ヘンになっちゃったよね~』うざったい。『うん、たしかに~』ほっといてくれ。『紀羽、もういない人間のこと呼んで、気持ち悪いよな。』もうやめてくれ。『あぁ、そうだよな。』あぁ、あぁ、やめてくれ。やめてくれ。『キモいよな。こんなことになったのも、全部、 望 月 の せ い 、 だ よ な』だれだ、だれだ!悠乃の悪口を言うのは!やめてくれ。やめてくれ。やめてくれ。やめてくれ。ヤメテクレ。
そんな風に。言うのは、やめてくれっ!俺は、気が滅入った。掃除場所から帰り、教室に入る、少し前。扉を開けようとしたときだった。最初は、許せた。でも、悠乃の悪口を言うのは、許さない。でも、俺は、このままじゃ、悠乃の為にならないと思い、保健室へ、逃げ込んだ。俺は、保健教諭の京河岸に悪口のことだけは話さずに、すべてを話した。そして、学校をやめようか、ということも。すると、京河岸は言った。
「それは、ダメだと思うよ。それは、悠乃ちゃんの為になるかい?なる、と思うんだったら、学校をやめてもいいと思うし、もう保健室に来なくていいよ。君は、どう思う。君が死んでしまったとして。悠乃ちゃんが、学校をやめる、と言ったら。嬉しい?卒業して欲しい、と思うんじゃないかな。だから、君は、この学校にいるべきなんじゃない?別に、無理して来なくても、いいと思う。この話を聞いてから、やっぱり学校をやめようと思ったんだったら、別に、自分で決めることなのだから、反対はしないし。でも、あえて僕は、この保健室に登校することを、おすすめしようと思う。いつでも、大歓迎するよ。出席日数は、君なら、3日に一回ここへ来れば、足りるだろうから。授業は、僕が何とかするから。これでも、博士号は、取っているんだ。明日は、休むといいよ。よく考えてきなさい。おっと、教師が、休めなんて、言っちゃだめか。ハハハ。」
京河岸は笑った。つられて、俺も笑った。やっぱりこの先生に相談してよかった。引き止めはしないが、突き放すこともしない。程よい距離感。かといって、自分の意見を、持っていないわけではない。すごい先生だと思う。ハーブティーも、おいしい。ハーブティーを一口飲んで、「おいしいですね。」というと、京河岸は、「これは、ラベンダーといって、気持ちを落ち着かせる効果があるんだよ。不思議だよね。」そう言った。
明日から僕は、保健室に登校することになる。
京河岸って名字、京菓子みたいで、可愛いなあって。
京河岸は、今日が死、という意味が込められちゃったりもしちゃったりしてます。