再会 3
美月との再会
顔を背けながら新太が言う。顔が赤くなっているのが分かる。
「あはっ、そうか、ごめん、でもこんなのアラタなら見慣れているでしょ?色々な女の人と楽しい事もしているんだから。」
リリアが、あっけらかんと言う。
「何言っているんだ?そんな事、まだしたこともない。」
新太が反論する。
「えっ、そうなの?本当に?」
「当たり前だ。もういい。部屋から出て行ってくれないか。」
新太は、股間が膨らんでくるのを感じていた。それを気付かれるのが怖かった。
するとリリアは知ってか知らずか、急に真剣な顔ざしで新太に向き合った。
「じぁあ、私をちゃんと見て!何時も、私の事はちゃんと見てくれないんだから。」
そう言いながら、あろうことかドレスを肩から外し始めた。
ドレスと下着が同時に床へ落ちた。そこには、上半身を露わにしたリリアが立っていた。大き目の乳房の上に、ツンと突き出たピンクの乳首が上を向いている。それをリリアは隠そうともしていない。
「駄目だ、リリア。そんな真似をしては。」
新太は慌ててドレスを拾うと、それでリリアの前を隠すように広げた。そのドレスごとリリアは、新太に抱き付いてきた。
「アラタのバカ!私の気持ちは、前から知ってるはずなのに。ずっと無視して。アラタは私が嫌いなの?」
リリアの目から涙が零れている。今日は一大決心をして、此処まで来たのかも知れない。
「ごめんね、リリア、でもリリアは僕の恩人の娘さんだ。僕がどうこうしたいと思ってはいけないんだ。分かってくれるね?」
「ううん、嫌、分からないっ。分かってあげない。」
リリアの、新太を抱きしめる腕に力が入った。心地いい胸の弾力と温かさが、新太の体に伝わってくる。新太も、思わず背中の肌に直接手を触れてしまった。
「ああっ、ずっとこうしていたい。アラタっ、好きなの。」
そう言うリリアを、無理に体から離した。新太とリリアを隔てていた、ドレスがまた床へ落ちる。それを手に取り、新太が言った。
「リリア、今だけリリアの体を見せて。今だけだよ。本当に綺麗だ。ずっと目に焼き付けておくから、もうこんな事はしてはいけないよ。僕は、こんなリリアは好きじぁない。」
リリアの顔が、落胆したようだった。
「愛しているんだ。だから、ジェルマンさんとエレオノールさんにちゃんと僕から話す。もしお二人が、僕たちの交際を認めてくれたのなら、その時に改めてリリアに交際を申し込む。それまで待っていてくれないか?」
リリアの顔が、明るく輝いたように見えた。
「リリア、リリアにこんな事をさせてしまって、本当にごめんね。僕に勇気がないから。もう服を着てくれないか?これ以上、このまま二人で此処に居たら、僕はこの家に居られなくなってしまう。」
リリアは新太からドレスを受け取ると、新太が後ろを向いている間にそれを身に着けていく。
名残惜しそうにしているリリアに、《お休み》と声を掛けた。リリアが納得したかどうかは分からない。何も言わずに部屋を後にしていった。
数日後、ロングバンテ夫妻が部屋で寛いでいる昼下がり、新太は意を決してそのドアーを叩いた。中から《入りなさい》という声が聞こえて来た。
新太は《失礼いたします》と声を掛けて、部屋の中へと入る。そこにはソファーに横並びで座っている、ロングバンテ夫妻が紅茶を飲んでいる姿があった。
「どうしたんだ、アラタ君。此処へ訪ねてくるなんて、珍しい事も有るものだ。」
ジェルマンが言った。普段は、殆ど執務室で話をする。
「あの、その・・・。」
新太が言い淀む。顔が紅潮して来た。新太は、思い切り腰を折って頭を下げながら言った。
「私がこんな事を言うのは、間違っている、という事は重々承知しております。それでも、それでもお嬢様との交際を認めて頂きたいと思い、こうして参上いたしました。お嬢様との交際を、お認め頂けないでしょうか?」
目線は床に向いたままだ。二人がどんな顔をしたか分からない。言った後で、自分がなにを言っているのかさえも分からなくなっている。
しばらくの沈黙が有った。ロングバンテ夫妻に声は無い。恐る恐る顔を上げると、ジェルマンは笑っているし、エレオノール夫人は少し涙ぐんでいる。
「アラタ君。君がいつ、そう言いだすかと首を長くして待っていたよ。リリアのアラタ君に対する気持ちはとうに分かっていた。親だからな。不憫だとは思っていたがそれでも、君に無理強いは出来ない、と思っていたところだ。許すなどと横柄なことは言わない。此方からお願いするよ。アラタ君。」
ジェルマンが手を差し伸べて来た。新太はそれを両手で握り返して、再度頭を下げた。
「有難うございます。有難うございます。」
いっきに気が抜けて、腰が抜けそうになってしまった。再び頭を下げてから、部屋を後にした。
翌日になった。リリアを誘って、馬に乗って郊外へ出かける事にした。リリアが弁当を用意してくれている。近場であれば、危険もない。都市の城壁が遠くに見える辺りに、小高い丘が有る。周りは一面の野原になっている。所々に花も咲いている。
そこへシートを敷いて、二人で腰掛ける。緩やかな風が心地いい。
「リリア、昨日ご両親と話をさせてもらった。」
新太が話しかけた。
「お二人の承諾を受けたよ。それで改めてリリアに交際を申し込みたい。先の事は分からないけれど、僕と交際をして頂けますか?」
薄いコバルトブルーの瞳を見ながら、そう聞いた。
横に座っていたリリアは、新太にとび付いて来て、その首に両手を廻してきた。肩に頭を乗せ、嗚咽を漏らしているようだ。
新太は、そのリリアの体を両手で優しく離すと、顎に右指をそっと添えて、顔を上向きにさせた。リリアが目を閉じる。その唇に、新太はそっと唇を重ねて行った。
すると何故か、風が少し強くなった気がした。新太は目を開けて、唇を離す。辺りを窺うように首を廻すと、リリアが不安そうな顔をした。
「どうしたの?」
「いや、誰かに見られているように感じて。」
「いいわよ、少しくらい見られても。見せつけてやってもいいと思うくらい、幸せだもの。」
リリアがはにかんだ。その時だった。今まで誰もいなかった場所に、突然と人影が現れた。体型は女性。すらりと伸びた長い脚に、形の良いバスト、ウエストは括れていてその下にはふっくらとした腰が据わっている。
この惑星では見た事のない、黒のスラックスに萌黄色でタートルネックのシャツを着ている。シャツのボタンが濃い緑色だった。
「ミツキさんっ!ミツキさんじゃないか!生きていたの?なんで、此処に居るの?」
其処に居たのは、紛れもなく美月だった。
あの時、アローと共に宇宙の深淵へ飛び散ってしまったはずだ。何故それが此処に居る?それでは、父も無事なのか?新は逸る気持ちを抑えて、美月に聞いた。
「お父さん、お父さんは無事なんですか?」
聞かれた美月は、その質問を予想していたのだろう。顔を曇らせ、俯き加減に答えた。
「いいえ、ハルトもミツキも駄目でした。」
やはりそうか?あの状況で生きている方が不思議だ。でも、美月も駄目だったとは、どういうことなのだ?美月は、目の前にいる。
その答えに気づいて、新太はハッとした。
「そうなのです。私はあの時の美月ではありません。改めて造られました。あの時の美月と本部は、何時も繋がっていました。それで美月の記憶は全て私が受け継いで、姿かたちはあの美月と全く同じにしてもらったのです。新太を探すのに5年が掛かってしまいました。もし許されるのなら、また新太と一緒に暮らしたいと思って、本部の許可をもらってきました。新太さえよければ、傍に居たいと思っています。」
それを聞いたリリアが、顔を赤くして怒り出した。
続きは明日。 シャトル




