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6ー2 迷宮

鰐と魔獣


「私は皆様の、足手まといになっていませんか?」

「そんな心配はいらないわ。ルネさんはとても頑張っているし、充分に私たちを手助けしてくれているから。」


美月が、優しく語りかけてくれた。

「そうだよ。自信をもって。かえって、僕たちが助けられている。」

新太も笑って答えた。


一息つくと、元の分岐点へ戻る。今度は、敢えて左側の道を選んだ。何か、大きな動くものの居る方だ。


「リリア、あとどの位でそいつに出会いそうだ?」

新太が聞くと《もう少しよ、直ぐ近くよ》と返事が来た。本当に直ぐに、目の前にその正体が現れた。


今度は、(わに)だった。長さが20メートルは有りそうな、2匹の鰐が寝そべっている。

まだ、3人には気付いていないようだ。今度は躊躇(ためら)うことなく、美月が窒素弾を発射した。


窒素弾が鰐の背中へ当たると、鰐の背中はたちまちの内に凍り付いた。

暫く鰐の動きが止まっている。新太が刀で攻撃しても、背中の皮は硬くて割れないし傷もつかない。これではなす術がない。


何を考えたのか、ルネが1匹の鰐に挑みかかった。手には、短剣も持っていない。しばらくじっといていた鰐は、ルネに気が付き大きな口を開けてその体に嚙みついた。


するどい牙が、ルネの体を締め付けている。それでもシールドに守られて、ルネの体には、血が流れてこない。


「今の内です。口の中へ剣を突き刺してください。」

ルネが言った。ルネは自分の体を(おとり)にして、鰐の口を開けさせたままにしている。


突き刺すのなら、美月の長剣が適している。

美月はダッシュしていくと、そのままルネと鰐の間の隙間を狙って長剣を突き刺した。剣は上顎(うわあご)を突き抜けて、頭の上へ現れた。


剣を抜き取ると、鰐はルネを離して背中と腹を上下にして回転し始めた。

苦しんでいるようだ。美月はその鰐に向かって行く。


腹が上になった時に襲い掛かり、比較的柔らかいだろうと思われた、腹に剣を思い切り突き刺した。剣はビームの光を(まと)って、内臓へ届いたようだ。


それを見届けると、突いた剣を力任せに手前に引いた。腹からはドロッとした内臓が飛び出している。アンドロイドとしての美月は、戦闘にも()けているようだ。


ルネを見ると、咬まれたにもかかわらず、ケロッとした顔をしている。

もう1匹の鰐も、戦闘態勢に入っていた。


また、ルネが囮になろうとしていたので、新太が止めた。その代わりに新太は、窒素弾を手に持って鰐に向かった。


鰐は案の定、大口を開けて新太を咥え込む。咥え込まれながら、新太は窒素弾を口の中へと放り込んだ。


窒素弾は、鰐の口の中でその器が溶けだし、口の中へと広がっていく。

新太のシールドの輪郭が、その液体窒素で目に見えて来た。新太は、そのシールドの中で動いている。


鰐の口の周りは凍り始め、新太は外へ跳び出した。すると、鰐の腹が異常に膨らんできて、中から破裂していった。鰐の破片が、周囲に飛び散る。こうして、2匹の鰐も退治してしまった。


「やったね、アラタっ。」

美月が笑顔で言う。みんなに、余裕が出て来たみたいだ。

「いや、何もかも美月のお陰だよ。こんな武器も作ってくれて。」


新太も笑って答えている。それをルネが隣で見つめていた。その会話を、リリアも聞いていたのだろう。

《私も、そっちへ行きたかったな》

と不満を言っている。


「これはやっぱり、魔獣の居る方へ行くのが正解だと思う。リリア、次はどちらへ行けばいい?」


新太が聞くと、リリアはディスプレイを確認しながら答えた。

《取り敢えずまっすぐ進んで、その後は右方向。そしたら、広い広場のような所へ出る。そう言う場所は其処しかない。石柱が有るかも。》


そう伝えて来た。確かに、広い半円形になった場所が有った。その直線になっている隅には、水が溜まって泉のようになっている。


相変わらず暗かったが、ライトのお陰で明るく照らされている。その泉のような水溜まりは、壁から漏れ出ている湧き水が原因だと分かった。それが窪んでいた地面へ溜まっていた。


ただ、回りを注意深く見ながら歩いてみたが、石柱のようなものは見当たらない。

また一休みする。シャトルのリリアが突然、叫び出した。


「気を付けて、右側の方から何か来る。」

言われて、そちら側を見ると文字通りの魔獣が出て来た。


頭や顔はライオンの雄に似ている。(たてがみ)が生えていた。でも胴体には黄色に茶色の縞模様が有る。まるで虎だ。


口を開けて吠えると、その洞窟内にこだましている。二本の大きな牙が見える。体の長さは5メートル、背の高さも2メートルは有りそうだ。その獣が飛び上がると10メートルの高さにもなった。


それだけではない。新太の最初の攻撃を簡単に避けると、直ぐに飛び上がって反対側へ飛退いた。とても俊敏だ。まるで、弁慶が牛若丸に乗り移ったように見えた。


新太は刀と一緒に背負っていた、ボーガンをルネに渡した。

「ルネ、それで(すき)を見て奴を射ってくれ。」


ルネはボーガンを受け取ると、矢を(つが)えて準備をする。

矢は5本用意できていた。

ルネは動体視力も良くて、俊敏だ。きっと、矢を当ててくれるに違いない。


新太と美月は、同時に剣を抜いて魔獣へ挑みかかった。

その新太の刀を野獣は右の前足で振り払う。刀に触れただけでも、その獣の力が腕に伝わって刀を離しそうになってしまう。


その間に美月が横から、獣の胴体を突き刺そうとしている。だがそれも、難なく避けた。


うるさいと思ったのか、魔獣は真上に跳び上がった。そのまま腕と体で二人を押し潰そうとしたようだ。ところが、魔獣が飛び上がったと同時に、いや少し遅れて二人も真上に跳んだ。しかも、魔獣よりももっと高く跳んでいる。


魔獣の背中へ、剣を突き刺し刀で切りつける。獣に傷がついた。効果は有る。

着地すると、獣は一瞬だったが、躊躇(ためら)っているように見えた。動きが止まった。傷のせいもあるかもしれない。


その時を狙って、ルネがボーガンの矢を発射させた。1本の矢は、摩獣の腹の側面へ突き刺さった。それでもそれを歯牙にもかけず、魔獣は二人を襲っていく。


爪を立てて牙を()き、二人の体を引き裂こうとしている。牙や爪は、確かに新太にも美月にもヒットしていた。魔獣も、その手応えは感じていただろう。

でも、二人は倒れもしないし(ひる)みもしていない。


一度は新太の体を(くわ)えると、()みちぎるように頭を左右に大きく振った。

その力で、新太の体は大きく左右に揺れて、魔獣が離すと新太の体は10メートルも飛んで、壁に衝突して泉の中へ落下してしまった。

新太は脳震盪を起こして、しばらく立ち上がれずにいた。


魔獣は、新太を仕留めたと思ったのか、天井を向いて雄叫びを上げた。、その時に、また矢が飛んできた。今度は魔獣の首の付け根に刺さっている。


魔獣は矢の来た方を睨んで、ルネを見つけるとルネ目掛けて地を蹴った。

20メートルの距離を、一気にルネに接近する。


その直前にルネも、もう一本の矢を番え終わっていた。摩獣が空中では矢を避けられないと、素早く矢を放った。


偶然なのか必然なのか、矢は魔獣の眉間へと刺さった。

魔獣は、ルネの所へたどり着く前に落下していったのだ。体を痙攣(けいれん)させて横たえていたにも拘らず、魔獣はまだ息をしていた。足を踏ん張り起き上がろうともしていた。


新太と美月はその魔獣の傍まで行くと、剣と刀をその胸に突き刺していった。さしもの魔獣も息絶えたようだった。

3人は、深くため息をついた。ルネは《こわかったー》と言っている。


もうここへは魔獣は現れないだろう、そう確信して3人は此処で野宿をする事にした。


 アラームが鳴って、目が覚める。6時間は寝ていた。泉の水で顔を洗うと、改めて倒した魔獣を見てみた。かなり大きい。


戦っている時には、アドレナリンが出て興奮していたのだろうが、こうやって落ち着いて見ると恐怖が湧き出て来る。それでもまだ終わっていない。この先へ進まなくてはならない。


リリアに連絡を取った。

「今度も何とかなったよ。次は、何方へ行けばいいかな?」


《アラタ、その洞窟はあの神父が言ってたような、複雑な通路は無いわよ。中へ入った人たちは、きっとあの魔獣たちに殺されたのよ。》


「そうだね。僕たちは運がいい。ミツキに作って貰った、シールドや武器が有る。それが無ければ、最初の蜘蛛に殺されていたよ。到底ここまでは来れない。」


リリアの指示で、次の通路が決まった。リリアが言ったように複雑な構造ではない。脇道もないし、たとえ分岐していてもせいぜい3本だ。

リリアには、何か動くものが有る方向へと導いて貰う。


続きは明日。 第4の鍵

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