6ー1 迷宮
大蜘蛛の大群
六 迷宮
《クレストヒル》は、やはり寒い場所だつた。村へ着くと、また聞き込みを開始する。
服装は、冬仕様にしていた。遺跡や、特徴ある場所、民話や伝承の類も聞いて回ったが、誰も答えてくれない。でも何か隠しているように思える。怖がっているとも言えた。
もう聞くことが出来る場所は無い、と思われた時に教会のような建物を見つけた。中へ入ると、暖かい。一時の暖を取っていると、中からワンピースのような服にフードを被った男性が現れた。
「どちらの方々かな?此処はどなたでも歓迎していますので遠慮はいりませんが、御用が有ればお聞きします。私は神父のベルナール・モレルと申します。」
ルネが、進んで前に出た。そして、遺跡などがないかと聞いている。
「そうですね、遺跡と言えるかどうかは分かりませんが、迷宮と噂されている所ならございます。
ここからさらに北へ100キロほど行くと、山の麓に大きな洞窟が見えてきます。その洞窟が迷宮の入口です。でも中へ入るのはおよしなさい。入って出て来た者は居りません。
それで中は迷宮のように入り組んでいて、ついには出られなくなってしまうんだろうと噂をされています。すき好んで、行く所ではないのです。」
「そこへ行くには、どうしたら行けるのでしょうか?」
今度はリリアが聞いている。ルネに対抗心でもあるのだろうか?
「はあ、この街道を北へ進んだら、途中で二手に分かれます。その左方向への狭い道を進みますと河が見えてきますので、その河に沿ってずっと進めば行くことが出来る筈ですよ。道は有りますが、人はほとんど通りません。荒れ果てた道です。」
モレル神父は、心配そうな顔をした。
ルネとリリアは、神父に礼を言うと一行はその教会を後にして、街道を北上する事にした。勿論、シャトルを使う。
でもそこに、石柱が有るとは限らない。それを心配すると、ルネが珍しく意見を言った。
「他にはそれらしい所は無いのでしょ?それに村の人達は誰も、聞いても答えてくれませんでした。それに何か、怖がっている感じもしました。だから、神父さんが言った場所で間違いないと思います。きっと其処には、何かの言い伝えが有るのだと思います。」
その言葉に、一同は納得した。もし違ったらやり直せばいい。そう結論付けた。
教えてもらったように道を進むと、間違いなく河が見えて来た。細い土手道が続いている。その上空を、時速100キロ程度で飛行していく。
すると30分位で、洞窟が見つかった。洞窟が掘られている山は、それほど高くなかった。せいぜい200メートルほど。
「リリア、シャトルの操縦を知りたくないか?」
リリアが驚いている。
「なんで急に、何か企んでいるでしょ?」
「実はそうなんだ。あの神父が言った迷宮へ入って、4人とも出てこられなくなったら困るだろ?そこで、リリアにあの山の上をシャトルで飛んで、僕たちのナビをしてもらおうと思って。」
「ナビって、実際はどうするの?」
「ああ、シャトルのディスプレイに、サーチした迷宮の通路が映るんだよ。それで、入組んでいる通路を見て貰って、そこは右だとか左だとか指示して欲しいんだ。
それにサーチしていると、例えば動物とか地下水とかそう言ったものまで分かるから、助かるんだ。この役はリリアしかいない。だからシャトルの操縦を覚えて欲しい。簡単だからさ。」
リリアは3人と一緒に行きたいと思ったけれど、そう言う役割も必要だと痛感した。
「いいわよ。それやる。ミツキさん、教えてっ。」
リリアは、最低限の抵抗をした。新太には《教えてもらわない》と言ったのだ。
休息や食事、睡眠もとってゆっくりと時間をすごす。急いでも仕方がない。
今は、この時間を楽しんでいた。その間に、リリアは美月にシャトルの操縦を教わっていく。
再出発すると、その洞窟も直ぐに見つかった。
付近にも、まばらだが民家は有る。
ただ、人影は全くない。まだ、午前10時頃だろう。リリアをシャトルへ残して、3人は外へ出た。
勿論、装備はちゃんと整えている。洞窟を50メートルほど入った場所で、リリアと連絡を取り合ってみた。
「リリア、僕たちがいる場所が分かる?」
「ええ、ばっちり、分かるわ。通路も映っている。まだまだ1本道よ。気を付けて。」
進んだ場所辺りまではまだ、外の明かりが届いていた。薄暗いが周りは見える。
洞窟の高さは10メートル位。幅が5メートルは有る。
結構広い。壁は硬い岩盤になっていて、崩れる心配もない。こんな洞窟を誰が何の目的で造ったのだろう?
その先は、真っ暗な闇のような空間しかない。3人はヘッドライトを点灯させる。一気に、洞穴は明るくなった。通路は段々と狭くなっていく。
入口から、30分位は歩いたのだろう。すると、2キロ位は歩いたことになる。まだ何も見つからない。3人が横に並んで歩くのがやっとになってきた。
すると、リリアの声が聞こえて来た。
「何か近くにいる。影が重なっているよ。気を付けて。」
思わず後ろや天井を見た。すると、天井の壁に蠢いている影が無数に見えた。
ライトで照らすと、大きな蜘蛛だ。体の大きさだけで1メートルは有った。
それが天井へびっしりとへばり付いている。
「走ろう!」
新太が言うと、3人は一斉に走り出す。
それが合図になったのか、蜘蛛の群れは3人に向かって飛び降りて来た。
最初の1匹が一番後ろに居たルネの背中に跳び着いた。
ルネは腰に納めていた短剣を取り出すと、剣先を後ろへ向けて思いきり突いた。蜘蛛から体液が滲み出て、ルネの体にもへばり付いて来る。蜘蛛は体からとれない。
「ルネ、後を向け!」
新太の言葉で、ルネはその場で立ち止まると後方へ振り返った。新太はその背中へ向けて、刀を降り下ろす。蜘蛛は真っ二つに割れて、ルネの体から離れた。
もう蜘蛛の群れからは逃れられない。左右の壁や、天井から沢山の蜘蛛が一斉に襲い掛かってきた。
美月が離れた場所から、ビームを放った。一瞬、蜘蛛たちは怯んだがダメージを与えられない。やはり、ここでもビームは効果が無かった。
3人は背中合わせになり、蜘蛛の群れに対処した。次々と蜘蛛たちは襲い掛かってくる。それを手当たり次第に、なぎ倒していく。
幸い、ビームそのものは蜘蛛に効果はないが、剣は強化出来ている。その剣や刀で、この蜘蛛たちを切り裂いていく。
すると、蜘蛛が一斉に糸を吐き出してきた。糸に絡み取られたら、動きが取れなくなる。シールドに守られているとはいえ、どうなるかは分からない。
美月は背負っていた、あの液体窒素の銃を取り出すと1発発射した。
辺りの温度が、急激に下がった。冬支度をしていても凍りそうな寒さだ。
直撃を受けた蜘蛛は一瞬にして凍り付いた。少し衝撃を与えただけで、体はバラバラになって壊れていく。
「よし、この隙に逃げよう。」
包囲陣の一角が崩れた。その間をぬって3人は前方へと走り出す。
それでもまだ蜘蛛は追いかけて来た。美月は、もう一度液体窒素弾を発射する。またまた蜘蛛が凍り付いて動きを止める。
新太はそれがチャンスと思って、凍り付いた蜘蛛に打撃を与えていく。
蜘蛛は刀が当たっただけでバラバラになる。その後ろに居た蜘蛛にも切りつける。
体が引き裂かれ、足が無数に切り取られた。血潮が飛び交い、体液が流れ落ちる。それでも、蜘蛛の集団は諦めていない。
あるものは糸を吐き、あるものは跳び着いて来る。
新太たちの体は、シールドに守られていて蜘蛛の糸に絡みつかれることは殆どなかった。
それを確認すると、3人は群れの中へ敢えて飛び込んでいった。
刀や剣を振り回し、手当たり次第になぎ倒していく。蜘蛛の糸が襲い、何本もの足が襲って来ても、ものともしない。通常ではできない攻撃が此処ではできている。
流石の蜘蛛たちも、その数は数えるほどしか居なくなった。残った蜘蛛たちも、恐れおののいたようだ。
新太が刀を収めた時には、もう襲うのを止めていた。
乱闘が収まったのを、リリアも分かったのだろう。
「大丈夫だった、怪我はない?」
と聞いてきた。
「ああ、大丈夫だよ。」
そう答えると、美月もルネも《大丈夫です》と遠くで答えている。
またしばらく歩いた。リリアの声が聞こえて来た。
「その先は、3つに分かれている。真ん中は行き止まり。右の道には何も動くものは無いようだけど、左の道には大きな動く影が有るわよ。どうするの?」
と言っている。
《新太が決めて》と美月が言うので、新太は《とりあえず真ん中の突き当たりまで行こう》と提案した。まだ早いとも思ったが、其処に石柱が置かれている可能性もあるし、無ければ休息もしたい、と考えていた。
その突き当りの壁に到着した。やはり何もない。それで、体に着いた蜘蛛の血やら粘液を拭き取り、休息をとる事にした。ルネが、不安げに言った。
次回は明日。 鰐と魔獣との戦い




