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異世界ー3

第一の鍵


美月に苦悩の色は無かったが、身動きが取れないでいる。そしてさらに、大蛇はきりきりと美月を締め上げている。そしてとぐろを巻いて徐々に美月を持ち上げると、大きな口で美月を飲み込んでしまった。


リリアもルネも、泣きながら悲鳴を上げた。その声に、新太は恐怖から我に返った。何とかしなければ。

新太は大蛇にそっと近づき、隙を見て、日本刀をその腹へ突き刺した。


ビームこそ効き目がなかったが、刀の手ごたえは有った。ビームをまとった日本刀の刃が、30センチほど腹の中へ入って行ったのだ。

大蛇の腹から、ドロッとした血が流れ出て来た。


大蛇は、月の光に照らされたその赤い目を新太に向ける。新太も飲み込もうとしているようだ。それを避けるように、新太は横方向へ腹を裂くように刀を引いた。


体重を乗せて、力いっぱい引き裂いた。刃の切れ味は鋭く、傷口が広がり血も大量に流れ出てきた。でも、大蛇の致命傷にはなっていない。かえって暴れだしたのだ。


太い体をくねらせて、新太と刀を振り払おうとしている。新太は(あらが)う事が出来ず、刀から手が離れてしまい地面へ叩き落とされた。

すると大蛇は、刀を胴に刺したまま池の中へと逃げていく。


そしてついには、水中へと没していってしまった。

新太はかろうじて助かったが、美月は大蛇の腹の中だ。どうやって助け出そうか?

そう迷っていると、思わぬことが起こった。


しばらくすると、池の(ほとり)に太い大きな蛇の胴体が、プカリと浮かんできたのだ。

白い胴体は動かない。静かな水面に、月の明かりに照らされて浮かんでいるだけだった。何が起こったのかと、浮かんだ大蛇を凝視した。


白い体よりもっと白い腹に、赤い亀裂が入っている。新太がつけた傷だ。

其処に新太の刀がまだ刺さっている。その傷が少しずつ長くなっていく、と腹の中から剣先が見えて来た。美月の剣のようだ。


するとその傷口が広がっていって、中から美月の腕が出て来た。次に頭が、そして肩も見えると直ぐに美月の体も出て来た。

美月は大蛇の腹から外に抜け出すと、泳ぎながら岸辺にたどり着いている。


「ミツキさ~ん。よかったー、無事だったのね。死んじゃったと思ったぁ。」

リリアが、泣き笑いをしながら美月へ抱きついた。


「ごめんね、心配かけちゃって。新太が、胃の中まで傷を付けてくれていたお陰で、中からこじ開ける事が出来たわ。」

美月は大蛇の胃液で、べとべとになった体を気味悪そうに見ながらそう言った。


それに気づいたのか、リリアも美月に抱き付いた自分の体を見て言った。

「やだー。私の体にも着いてる。それに臭いし。ミツキさん、一緒に池に入って洗お。」


言いながら、服を脱ぎ始めている。まだ、泣き笑いをしている。

「おいおい、リリア。此処に僕も居るんだぞ。」

新太が慌てて、それを制している。


「いいわよ、アラタなら見られても。ね、ミツキさん。」

「そうね、アラタなら気にしないわ。」


二人は月の光に照らされながら、惜しげもなく裸体を(さら)していく。

そしてすっかり裸になってしまった二人は、池の中へと入って体を洗いだした。


それを横目に新太はテントへ入り、ルネは二人の様子を見守っている。

新太の刀も、ルネが大蛇から抜き取っていた。


夜が明けると、4人はさらに奥へと進んだ。鍵を見つけるためだ。

その奥へしばらく歩き続けると、そこには幹の回りが50メートルも有ろうかと言う大樹が有った。


この世界には、昨日の蛇や、その前の巨人、今日の大樹と、桁外れに大きな生物や植物が有るようだ。その大樹の幹には枝が無数に伸びていて、高さも50メートルは下らないと思われる。


枝々には緑の葉が生い茂り、こんもりとして隙間のないほどであった。

ここでなら、あの大蛇の住処(すみか)となり得るだろう。

その大樹を見上げながら、1周してみた。


すると幹の裏側に、太い幹が自然と朽ちて出来た(ほら)が有った。

高さは1メートル幅50センチ程度。その洞の中を覗いてみると、長さが20センチくらいの小さな石柱が、根元に立っていた。


四角柱で、その上面にあたる四角の長さは縦横共に5センチ程度。あの洞窟の奥にあった鍵穴と同じくらいだ。


しかし、上面には何の模様も無い。これではないのかなと思いながら、手でそれを持ち上げると、すっと地面から抜けた。

地面の下にも5センチ程度埋まっていたが、ただ置いてあるだけのようだった。


裏側を見てみると、まさしくあの鍵と思われる紋様の一つが彫られていた。

あの鍵の一つに違いない。巨人の洞穴の奥で、撮った写真と照らし合わせてみても、あの紋様と同一だった。


間違いない。鍵は存在していた。

ルネが子供の時に聞いたという物語は、実話を脚色した伝承だと確信した。


するとあと、鍵は3つあるはずだ。それも地図に記載された《危険個所》に。

その一つ目の鍵を肩掛けのバッグへ大事に仕舞って、一旦またシャトルへ戻る事にした。次の鍵を手に入れるために。


返ったらシャワーを浴びたいし、ベッドでも寝たい。美味しい料理も食べたくなった。その日は、一日ゆっくりと過ごす事にした。

翌日になると、ゆっくりと休んだおかげで、体は大分楽になっている。


とは言っても、昨夜はリリアが新太の部屋へ忍んできた。

新太に自分の裸を見せたためか、新太がリリアの裸を見てしまったためか、

二人は思いのほか燃え上がってしまっていた。


ルネは、その事に気付いていないようだったが、美月は違った。

美月には隠し事が出来ないようだ。でも美月は何も言ってこない。


朝食の後で、次の目的地を決めた。今度は《カルム》という村の近くになる。

《エタ》から北北西へ少し戻った場所だ。少しと言っても、400キロは有るはずだ。シャトルは、一気にカルムへと飛行していく。


近くまで行くと、其処は山岳地帯だった。山の中腹の所々に民家が立っている。風の強い場所らしく、家の殆どは石垣で造られていて、屋根部分だけが木材と言うスタイルだ。


森がないので、シャトルは隠せない。それでステルス機能を発動させた。

民家の近くへ降りて、またルネの力を借りる。でも、エタの村のようにはいかなかった。


数軒を回ったが、それらしい伝承は無い。危険だと思われる場所は、無数にあるという事だった。直ぐに見つかると思ったが、あてが外れた。

後は、あの地図が正確だと信じるしかない。


とは言え、あの元の地図は手元にないし、有る地図は新太が写した地図だ。

それでも方向だけは、ほぼほぼ合っているだろうと信じるしかない。


シャトルのナビを使って、大体の位置を決めた。

ナビの示した場所は、村が有る山岳地帯の(ふもと)だった。カルムの村からは100キロも離れている。

此処で大丈夫なのかと、半信半疑でシャトルをその上空へ移動させる。


すると間違いないだろうと思われる、遺跡のような大きな建造物が現れた。

それは古い石の建造物で、回りを深い森に囲まれている。


建造物には蔦が絡まり、上空から見ても、建物は発見しにくい。

誰も住んではいないようだ。人の気配はない。


シャトルだからこそ、発見できたと思われた。

付近に着陸できるような空き地は無い。仕方がないので、建物の屋上らしき場所が有ったので、其処へ着陸させた。


「凄いところね。何が出て来ても不思議じゃない感じ。」

リリアが外の様子をディスプレイで見ながら、感想を述べている。


「リリア、ルネ、今日は二人で留守番だ。いいね。外に出るんじゃないぞ。」

リリアは不満そうな顔をしたが、あの大蛇が美月を飲み込むところを目撃したのだ。恐怖も有ったに違いない。


《分かった。》と言って、ルネと顔を見合わせていた。

美月と新太は、用心しながらその屋上へ出た。

直ぐに、建物の中へ降りる階段を見つけた。


その階段を降りていくと長い廊下が現れ、その両側には扉のない部屋が何部屋も並んでいる。周りの木の高さから、此処は建物の3~4階の場所だろう事が分かる。


外の明かりが部屋まで届いているが、薄暗い。両側の部屋を、二人で手分けして覗いて行くと、最後の小さな部屋に、祭壇らしい飾り棚が有った。


石の壁がくり抜けられて、上部はアーチ型になっている。その中央に、例の石柱と、同じものがが立っていた。後は何もない。


「あっ、ラッキーだな。今回は危険な目に合わなくて済みそうだ。」

新太はそう独り言を言って、その石柱に手を掛けた。石柱は其処に立てかけられているだけに見えたが、押しても引いても引っ張ってもびくともしない。


「何なんだ、これは。どういう事だ。」

新太は焦りを覚えた。美月に代わって貰っても、同じ事だった。剣の柄で叩いても、変化はない。美月が考え込んだ後で、新太に言った。


「あのエタの石柱は、直ぐに抜けたのですよね。」

「ああ、力なんて加えなかった。(もっと)も、地面は柔らかかったと思うけど。」


ここの石柱と棚との接地面は石材だ。きっちりと、()めこまれている可能性も有る。考えを巡らしていた美月が、危険を察知したように新太に進言した。


「もしかしたらこの石柱は、此処を守る何かを倒さないと取れないのかも知れません。エタの時は、大蛇を倒した後だったから抜けた、そう考えられませんか?もしもそうだとすると、此処も何かが守っていて襲って来る可能性があります。」


美月は辺りを見回している。そう言えば、今回は、上空から侵入したんだ。

そして、石柱が有ったのは最上階。普通なら、あの森を歩いて来て此処へたどり着く。


それを省いたから魔物に合わずに済んで、石柱だけを見つけて取ろうとした。

だから、取れないのか?

新太も、そう理解した。窓から外を見ていた美月が外を指差している。


「アラタ、あれ見て。」

指差した方向を見ると、何かが動いて近づいて来るように、森の木々が左右に大きく揺れている。


「相当大きいね、あれは。」

揺れていた枝の木が、音を立てて倒れて行く。そして、その後ろに道が出来ていく。


何かが近づいてきたが、その何かがついに姿を現した。

「参ったなー。あれを倒さなければいけないの?」


続きは明日。 第二の鍵

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