異世界ー2
白蛇
「そうだとしたら、その4つの鍵を手に入れなければ、この先へは行くことが出来ない、ってことだよね。それにしても、この大陸にそんなテクノロジーが有ったのかな?」
ブレスレットの、ビームの力で壊すことも考えた。扉の表面へ、弱めのビームを放ってみたが壊れない。それどころか、傷も付かない。やはり鍵が必要のようだ。
あの地図を再確認してから、どうするか考えるしかない。
まだ始まったばかりだ。慌てる事もないだろう。それに、あの途中に屯している巨人の対処も考えなければならない。
二人はその4つの紋章を写真に撮ると、来た時と同様にして洞窟の外へ出た。後はシャトルへ帰って出直そう、そう思った。
シャトルへ着くと、リリアとルネがつまらなさそうに待っていた。
新太の顔を見るなり《何か有った?》と聞いて来る。新太は、それまでの経緯を説明した。するとルネが、遠慮がちに口を開いた。
「あのー、その鍵の話ですが、何か聞いたことが有ります。」
「えっ、そうなの?」
と、驚いたようにリリアが言った。
「子供のころの昔話ですが、私が夜に眠れない時に、おじいちゃんが話をしてくれたんです。4つの鍵は、それぞれに強い魔物が守っていて、勇者がその魔物を倒して集めていく話です。」
また、リリアが横から話を遮った。
「へーっ、面白そうな話。それでどうなったの?」
リリアが続ける。
「魔物たちを倒してその4つの鍵を勇者が集めると、天空から女神が舞降りて来て勇者にご褒美をくれるのです。おじいちゃんは、いい行いを少なくても4つすると、きっと神様がご褒美をくれるよ、と言っていたように思います。」
子供向けの教訓話のように思える。新太は思い付いたことがあり、例の地図の覚書を取り出した。
「もしこの地図が、その話の中の鍵の在りかを示しているなら、どうだろう。」
地図を4人で隅々まで見回していく。すると、リリアが思い付いたように言った。
「この危険個所と言う記載が、4か所あるけど。強い魔物が守っているのなら、危険じゃない?」
地図には、複数の国の名前が書かれている。その国境を跨いで、色々な場所に《危険個所》と記載が有る。
中の一つは、海の中に有った。多分島なのだろう。道路と思われる太い線は、その危険個所を巡っているようにも見える。
「そうですね、この4か所の危険個所を巡ってみませんか?最初の場所で鍵が見つからなければ、諦めた方がよさそうですね。」
美月が言う。
最初の危険個所の近くに、村の名前が有った。《エタ》と言う名前だ。
描かれた道路の起点の近くでもある。興味本位だけで此処まで来たが、こうなると目的は宝さがしになる。
神様がくれるご褒美と言うのは、何かしらの宝なんじゃないのか?
期待に胸が膨らんだ。
ルネが住んでいた《アルカント》という港町を起点とすると、その《エタ》という名前の町か村は、其処から東北東の方角にある事になる。
それでまた気付いた。
「この地図、僕が写したんだけど、何方が北か記載がなかった。
一度、大陸が展望できるところまで上って、何方が北か確かめよう。」
そう決めると、シャトルを真上に向かって離陸させた。シャトルはぐんぐんと上昇する。次第に大陸の輪郭が見えて来た。さらに上ると、大陸の2/3が姿を現した。
その辺りで停止して、地図と見比べる。地図の海岸線と同様な輪郭が其処には見えた。シャトルにその地図と実際の地形を覚えさせて、詳細な地図を作製した。
これでナビ代わりになるはずだ。
「よし、それではエタへ行ってみよう。」
シャトルは、下降すると同時にそのエタの有る地点へ向かって行った。
エタは、小さな村だった。相変わらず此処も貧しそうだ。林の中へシャトルを隠して、4人は外へ出る。危険個所と言っても、この村から少し離れているし実際の場所は判然としない。現地の人であるルネの出番のようだ。
「ルネ、この村の住民に接触して、あの昔話にあるような魔獣が出たというような場所が有ったら聞いてほしい。もし、礼が必要ならこの銀を使ってくれ。」
新太は、ルネに銀貨を1枚渡した。此処での通貨とは違っていても、銀には違いがない。喜ばれるだろうと思った。ルネは、その銀貨を持って少し離れた場所にあった民家の戸を叩いている。しばらくすると、戻ってきた。
「昔話のような場所は無かったけれど、子供たちに行っては駄目だと教えている場所が有るようです。そこへは大人たちも殆ど行かないそうで、何が有るのかさえも分からない場所だ、と言っていました。銀貨は置いてきました。」
リリアがそれを聞くと
「其処に間違いなさそうね。それで其処は此処からどう行くの?」
とルネに聞いた。
ルネは
「この先に大きな池が有るようなのですが、その池を時計回りに廻って行って、道の途中に大きな石の有る所を森の中へ入って行くそうなのです。その先は、分からないそうです。」
と、答えている。
見当を付けてシャトルで行ってもいいのだけれど、それでは見つけられないかも知れない。危険を承知で歩いて行く事にした。
「リリア、君は留守番だ。」
「え~っ、またなの?嫌だから、連れてって。大丈夫、私でも何かの役に立つわ。それに、あの巨人に襲われた時だって、怪我はしなかったもの。もう、足手まといにはならないから。」
そう言って、どうしてもシャトルに戻らない。結局、新太が折れた。
「仕方がない、危険だと思ったら、直ぐに逃げるんだぞ。」
「は~い。分かりましたっ。」
リリアには、我儘なところも有る。
しばらく村人に教わった方角へ歩いて行くと、確かに大きな池が有った。
池の周りには、葦のような草がたくさん生えている。道がその周りを巡っていたが、道は道でも獣道に近い。
それは大きな池で、水面はどんよりしていて水中は見えない。言われたように、時計回りに歩いて行く。でも目印の大きな石には、なかなか辿り着かない。
2時間位は歩いたのだろうか。池を巡り始めても、誰とも出会わない。
すると道の右側、池との境に大きな石が見えて来た。確かに石だ。
岩ではない。表面がつるつるしていて、真球に近い。
こんな物をこの時代の人が、どうやって加工したのだろう。そう思った。
でも間違いなく、この石が目印だ、そう確信した。
その石の所を左へ折れろ、と言われても道は無い。ただ鬱蒼とした森が、続いているだけのように見える。
4人は頷き合いながら、覚悟を決めてその森の中へ入って行った。所々の木の幹に、目印を付けていく。迷わないためだ。真っすぐに歩いているようで、ぐるぐる回ってしまう可能性もある。2つの目印を直線の位置に合わせ、前方と後方を確認しながら、直進して行った。
すると森が開けたと思ったら、目の前に今度は小さめの池が現れた。
今度の水は透き通っている。
其処で日が暮れてしまった。
仕方がないのでテントを張り、野宿する事にした。テントは1つしかない。
テントにはシールドを施していく。何が襲って来るか分からないからだ。
簡単に食事を済ませると、就寝する事にしたのだが、美月もルネもリリアに遠慮して、新太の隣には寄って来ない。
リリアは何の遠慮もなく、新太の隣で横になっている。新太は、少し動揺したがいつの間にか寝入ってしまっていたようだ。
真夜中ごろだろう。《ガサガサガサ》と言う音で目が覚めた。新太は、異変を感じて隣に寝ていたリリアを起こす。ルネも起きて来た。ところが美月はテントの中には居ない。
外を見ると、既に美月は長剣を構えていた。
「ミツキさん、何があったのですか?」
小声で聞いても返事がない。何かに集中しているようだ。
その美月が見ている方向を見ると、何か大きな影が蠢いている。
懐中電灯をかざすと、それは大蛇だった。真っ白な体に、うろこがカサカサと音を立てている。
口からは赤い長い舌が、チョロチョロと出たり入ったりを繰り返している。
体をうねらせて、美月に近づいている。
その大蛇が鎌首を上げて、美月を狙った。頭までの高さは3メートル有る。
すると、全体の長さは10メートル以上も有りそうだ。
その大蛇が移動するたびに、ガサガサと音を出していたのだ。美月と大蛇は睨み合っている。
突然、大蛇が大口を開けて美月に襲いかかった。美月は咄嗟に、その攻撃を後方へ跳んで避けた。今度は大蛇が地面擦れ擦れに、体をうねらせながら美月に迫る。
また、大きな口を開けた。その口は、美月を一口で飲み込むには充分の大きさが有った。美月はそれを狙っていたのか、剣の先からビームを発射させた。
これで大丈夫だ、大蛇は倒せた、と思ったにも拘らず、大蛇のみならず、その口の周りにも何の変化もない。
《えっ、ビームが役に立たない⁉》
今まで、万能の武器だと思っていた、ブレスレットの武器が役立たない。
新太は、その真実を知って恐怖に見舞われた。でも美月は、あわやと思われた時にも冷静さを忘れていなかったようだ。今度は高く舞い上がって、難を逃れた。
着地したのは、大蛇のすぐ横だった。あらかじめ、大蛇がその地点まで移動していたからだ。大蛇はその直径が2メートルは有ろうかと思われる胴体で、美月を絡めとってしまっている。
続きは明日。 第一の鍵




