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3 噴火-3

溶岩流


レオが新太を呼ぶように叫んだ。シャトルはその時、溶岩の流れを確かめるために、山頂付近から(ふもと)へと降り続けているところだった。

その声に反応して、新太がラウンジから操縦席へ向う。


其処には二階の窓から身を乗り出すようにして、別荘から今にも飛び降りそうにしている人影が二つ見えた。その二人からは、シャトルは見えていない。


火山から流れ出た溶岩が、(ふもと)の街で被害を出し始めようとしていたところだ。その溶岩の熱が、その別荘へ火を点けたようだ。


「助けに行こう、少なくても二人いる。」

美月に言う。

「うん、分かったわ。レオさん、ジェルマンさんとエレオノールさんをお願いします。直ぐに帰って来ます。」


美月が言うと、レオは分かった、と返事をした。

新太と美月は休む暇なく、シャトルから飛び出していく。そして、影が見えた別荘のその二階の窓から、二人は別荘へと飛び込んで行った。


リリアはディスプレイを見ながら、新太が見えなくなっても心配そうにその姿を追っている。


燃え移った火は、別荘の屋根を燃やし始めている。窓からも、チロチロと炎が出て来た。

その窓から先に美月が、女性らしき影を抱きながら飛び出して来た。


二人とも宙に浮いている。あんな事ができるなんて、信じられないような事が立て続けに目の当たりにしている。

自分もああして助けてもらったんだ、と改めて思った。


ところが新太は、燃えている家の中から中々出てこない。リリアにとって、それはとんでもなく長い時間だった。


美月と老婦人は既にシャトルの船内に到着し、ラウンジで休んでいる。それから大分、時間は経っている。まだかまだかと、気ばかり焦る。


何かが起こったのじぁないか?そう思うと、息苦しくなって来た。美月が、リリアの横に来て、手を握ってくれた。

「大丈夫ですよ。新太の事です。心配しないで。必ず戻ります。」


じっと見つめていた窓際に、二つの黒い影が重なって見えて来た。

あれは、新太だ。途端に安心して、体の力が抜けてきた。重なった二つの影は、空中へと飛び出し此方へ向ってくる。


間違いなく新太だ。雪が降り続く中を、しっかりと老人を抱きながらシャトルの出入口へ到着した。


「良かった。はらはらしたわ。大丈夫、怪我はない?」

リリアはまた涙を流している。


「大丈夫です、なんともありません、それより申し訳ありませんが、このお爺さんと御婆さんを見てていて頂けますか?薬を持ってきます。二人の事態が急変したら、大声で呼んでください。お願いします。」


新太はそう答えると、見知らぬ老人二人をラウンジの床へ運んだ。

8人乗りのシャトルに、9人が乗った。ロングバンテ夫妻がその場に居なくても、広いラウンジが狭く感じて来る。


リリアとレオが見ていてくれる間に、また薬を取り出しにいく。

助け出したのは、身なりの良い老夫婦だった。ジェルマンたちと同様に、どんな風に助けられて、ここが何処なのかも分からない様子だ。


ただ、有難う、有難うと何回も礼を言っている。老夫婦は濃紺と紅色と色違いだが、お揃いのガウンを羽織っていた。


その下は肌着だと思われたが、男性は白髪を綺麗に撫でつけて有って、顎の下に髭を蓄えている。鼻筋が通っていて、目には力が有った。夫人を労わる様子を見せている。


夫人は年の割には髪が黒く、肌も艶々していた。二人とも体の中から染み出してくるような、品と言うものを備えているように見える。そんな二人にリリアとレオは、身を包む毛布と暖かい飲み物を与えている。


薬も間に合った。


その老夫婦の話では、別荘の中に二人の他には誰も居ないという事だった。

これ以上此処へ留まっている理由はない。溶岩の流れも確認した。直ぐに商都へ戻ろう。あそこなら、みんなゆったり出来る。


そう思っていたところへ、奥の部屋からジェルマンがエレオノールの肩に腕を廻して、足を引き摺りながらラウンジへ入って来た。体は大分、楽になってきているようだ。


老夫婦は一目見て、それがジェルマンとエレオノールだと直ぐに分かったようだ。

「これはロングバンテ殿!ロングバンテ殿ではございませんか。まさかこのよ

うな場所で貴君にお会いできるとは、お懐かしゅうございます。」


老人は、その場で頭を下げた。夫人も慌ててそれに倣う。

「おお、あなたはアド様、アド・ウィストリア卿ですか?そうですか、あのお屋敷はあなたの別荘だったのですか?私の別荘のこんなに近くに、あなたの別荘が有ったとは、ずっと気が付きませんでした。」


ジェルマンが言うと、その老人が若い二人を見ながら言った。

「す、すると、こちらにおいでになるのはリリア様と、レオ様でございますね。お二人にとんだお世話を掛けてしまい、大変申し訳ありません。」


アド・ウィストリアと呼ばれた老人が、再び礼を言った。

其処へ新太が、話を割って入って来た。


「大変申し訳ありません、ジェルマンさん。今は、一刻も争う事態です。それにジェルマンさんと、エレオノールさんのお体も万全ではありません。直ぐに商都へ引き返しましょう、その後、私達は此処へ戻らなければなりません。(ふもと)の街が、溶岩に襲われそうなのです。」


その言葉にリリアも反応した。

「そうです、お父さん。あちらの部屋でお二人とご一緒に、お休みになっていてくださいませ。」

「おお、そうだ、ウィストリア卿、話は後にしましょう。あなた達も治療が終わったのなら、向こうの部屋へ移動しましょう。」


こうして、四人はラウンジから再び出て行った。その間にもシャトルは、商都へと飛行を続けている。

新太たちはジェルマンたちを邸宅へ戻すと、反転してラズホンディア山へと急

いだ。


大量の溶岩が(ふもと)の街へと流れ着く頃だ。一旦街中(まちなか)へ溶岩が流れ込めば、街は全滅しかねない。住民にどれ程の被害が出るか、予想もつかない。


そうならないように何か手を打たなければ、そう思って引き返してきたのだ。

上空から眺めると、溶岩はラズホンディ山の谷間を街へ向かってゆっくりと流れていた。


数本の溶岩流が認められたが、一番幅が広く流れが速い溶岩流を食い止めなければならない。

その溶岩流は、あともう少しで街中へ到達しようとしている。


その手前に、狭い谷が有った。そこの両側を崩せば、溶岩は()き止められそうだ。でも、その付近には高台に民家が有る。


アローやシャトルの武器で谷を崩せば、その家々も崩れ落ちる心配が有った。

「どうしよう、ミツキさん。」


「そうね、大規模な粉砕は避けた方がよさそうね。あの谷の少し上辺りに二人で降りて、谷の両側を片方ずつ、様子を見ながら少しずつ壊すしかなさそう。その間に、溶岩が町中へ到達するかも知れないから、時間との勝負になりそうだけれど。」

美月が言った。


「分かった。そうと決まれば、早く行こう。」

シャトルは、溶岩流の真上に停止した。高さは5メートルもない。

二人はシャトルから飛び出すと、それぞれ溶岩流の左右の岸へ降りていく。


足元には溶岩が流れている。熱気が体へ伝わってきた。シールドがそれを遮断してくれている。新太は崖の上部の(へり)を狙って、腕を延ばしてビームを発射した。


最初はどの位の岩が壊れるのか計り知れなかったので、手加減をしてみた。

すると、2~3メートルの幅に崩れて来て、土砂は溶岩流の中へ落ちて行く。


溶岩のしぶきが上がる。その飛沫を新太は浴びた。これでは、到底流れを止めるには足りない。今度はもう少し強めに、ビームを発射してみた。


土砂や岩石が体をかすめて、再び落下して来た。まだまだ足りない。美月の様子を見ると、新太と同様に苦戦している。

縁の部分が取れたので、今度はその下を狙う。


すると階段状になったその部分が、一斉に落下して来た。今までよりも何倍かの大量の土砂が、溶岩流へ崩れ落ちて行った。やっと、その土砂や岩石が溶岩の上へ現れて来た。


慎重に、何回もそれを繰り返す。流れが遅くなってきた。美月の側も、土砂が埋まり始めている。

どの位の時間が、経ったのだろうか?


改めて見渡すと、長さ20メートル、高さ5メートルほどで、谷間に土砂の(せき)が出来上がっている。

溶岩は完全に止まっていたが、まだ上流から流れてくる。


後は、元を断たなければだめだ。

かろうじて、溶岩はまだ街中へは到達していなかった。

それでも、堰を越えてくれば、また危険は増大する。


新太は美月と共にシャトルへ乗り込むと、ラズホンディア山の山頂へと向かった。相変わらず、噴火は地震を伴って続いている。


途中で確認したアド・ウィストリア卿の別荘や、ロングバンテ家の別荘も骨組みだけを残して焼け落ちていた。


魚雷の操作は美月に任せた。美月は、ラズホンディア山の噴火口の中へ標準を合わせて、たて続けに3発の魚雷を発射した。


魚雷の赤い球は、吸い込まれるように噴火口の中へと落ちて行く。噴火口の内側で魚雷は大爆発して、その壁を山の頂から下方へ、高さ30メートルにわたって壊してしまった。


そして、その大量の土砂は火口内部へと落ちて行く。

その爆発で山頂の一部が吹き飛んだのは、(ふもと)から見るとあたかも噴火自体が山を壊したかのように見えた。


こうしてやっと、ラズホンディア山の噴火は収まって行った。

後は、ゆっくりと流れていた溶岩が、雪と寒さで冷やされていって、その流れを止めるのを待つだけだ。麓の街は、溶岩の被害から免れた。


シャトルはステルス機能を発動させていたし、新太も美月も自然の中へ溶け込み、その姿は発見されていない。こうして、一連のラズホンディア山の噴火に因る騒動は収まった。


 山頂爆破の後、新太がロングバンテ家へ戻ると、アド・ウィストリア卿夫妻は滞在していた。美月は、遠慮してロングバンテ家へは寄らず、先にアローへと戻っていた。


新太を見つけると、ウィストリア卿が早速話しかけて来た。

「アラタさんとおっしゃるのですね。私と妻が命拾いしたのは、あなたのお陰です。どんなにお礼をしても、しきれるものではありません。本当に有難うございました。私に出来る事が有れば、何でもさせて頂きます。」


新太は、どう答えて良いか迷っていた。シャトルや美月の事を、説明した方が良いのか?

頭の中で考えを巡らしていると、ジェルマンが助け船を出してくれた。


「ウィストリア卿、今日起こったことは、なかった事にしてもらえませんか?心の中だけに留めておいていただきたく思います。」

ウィストリアは、その真意を推し量ったようだ。


「そうですね。実は私も夢を見ているようで、よく分からないのです。ただ、私が助けられたことは間違いがない。だから、それだけは忘れないようにしたいと思います。」


すると、ジェルマンが新太に話しかけて来た。

「ウィストリア卿は王都の官僚で、先ごろはこの商都の治安を請け負っていた正規軍の長官だった人です。今は退官されてご子息が後を継いでおられる。もし、街中まちなかで困ったことが起きたら、ご相談するといい。」


「はい、有難うございます。ウィストリア卿、今後ともよろしくお願いいたします。」

新太は改めて、ウィストリア卿に頭を下げた。


2日後に、ウィストリア夫妻は傷も癒えて自宅へと戻って行った。

ウィストリア卿の前では、言えなかった話をしなければならない。新太は、ジェルマンとエレオノールに向き合う事にした。


「あの空に浮かぶ、黒い箱と、一緒に居た女性についてですが・・・。」

そう切り出した。


それからは、リリアに説明したように、自分は地球という惑星から来たこと、その途中で正体不明の宇宙船に襲われて、父親が亡くなった事、一人助けられてこの惑星にたどり着いた事、それらは、リリアには話をして納得してもらった事、などなどを美月に対する説明と共に丁寧に説明した。


ジェルマンは、非常に思慮深い人のようだ。新太の話を、(さえぎ)ることなくすべて聞いてくれた。そして、最後にこう言った。


「すべて理解した、とは言いませんが、リリアが納得しているのならそれでいいでしょう。ただし、今後もリリアを泣かすような事が有れば、私は決して許しません。私はアラタに期待以上の信頼を置いていますから。余計に、そう思っています。」


続きは明日。 4 漂流者-1

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