表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第六話 笑う狂戦士(改)

 朝。目覚めてすぐ、スマホに手を伸ばした。

 通知が溜まっている。

 

 ……嫌な予感がする。


 「呼び出しかかってるじゃねぇか!?」


 慌てて支度を済ませ、階段を駆け下りた。


 「お兄ちゃんおはよう!あれ?急ぎ?」


 一階で朝食の用意をしていた美雨に声をかけられる。


 「ああ、早くいかないと遅刻するからな!」


 「じゃあこれ持って行って」


 美雨におにぎりを手渡された。

 いつの間に用意したんだ。


 もちろん食べるが。


 「ありがとう、もっていくよ」


 「うん!行ってらっしゃい!」


 「行ってきます」



 ――――――――



 「たいちょー、今日はギリだな」


 「ああ、完全に寝坊した」


 どうにか間に合ったが、二度続けて時間を守れなかった俺に、鬼塚は呆れ顔だ。


 「鷹宮はどこだ?」


 「遅れるってよ」


 あいつ、本気かよ。

 俺よりやばいじゃねえか。


 「しかたない。今日は先に行こうか」


 「そうだな、待ってても仕方がないしな」



 ――――――――



 「鬼塚。今回の敵の情報は知っているか?」


 「いいや、まったく。驚くほど何も知らされていない」


 俺のほうにも情報は来ていない。

 となると、天衡機関の情報部は敵情報を何もつかめなかったってことか。


 情報部の連中、またやらかしたな。


 「市民の避難は?」


 「それは終わっているらしい。そこは、さすが公的機関ってとこだ」


 仕事してないのは情報部だけか。

 帰ったら説教だな。


 「隊長、もう近くまで来てる」


 俺は周囲の気配を探る。


 「いや……囲まれたな」


 「は?」


 俺が鬼塚に伝えた瞬間、ビルの上の階から銃声が鳴り響く。


 俺は迷わず、高速で飛んでくる弾丸を切り裂き、二人とも臨戦状態に入る。


 すでに囲まれている以上、油断はできない。


 会話中も警戒は緩めていない。

 つまり、指揮官も部下も相当な手練れだ。

 

 「鬼塚、やれるな?」

 

 そう尋ねると、鬼塚は口角を上げ、楽しそうに笑う。


 「あたりめぇだろ」



 ――――――――――


 一瞬、呼吸を止める。

 ――ここで使って、早く終わらせる。

 

 ――《抜刀術・桜花爛漫》――


 ――《狂瀾・猛進轟烈》――


 桜の花びらが舞い散る中、鬼塚の突進によりさらに広範囲に散らばる。


 技の範囲が広がった。視界外の敵も巻き込めるはずだ。


 ん?なんだ?この違和感……。


 この胸のざわめき、あいつの気配に似ている……けど、違う。


 だけど確信した。

 あいつに近い気配のやつがいるということは、相当な手練れがこの集団にいる。



 ――――――――


 周囲の銃声が、わずかに減った。


 倒れる音と、逃げる足音だけが残る。


 ……静かすぎる。

 

 「ちっ、敵のリーダーはどこだ?」


 うまく潜伏しやがって、まったく気配がしねえ。


 索敵に意識を割いた、その瞬間だった。


 ふと背後に殺意を感じる。


 「!!ッ」


 遅かった……。

 背後に意識を向けた途端、激痛が走る。


 肩が熱い。

 血が服の内側を伝う。


 体をわずかに逸らしたが、深く斬られた。


 常人なら即死だ。


 能力を一部だけ開放し、痛みを和らげる。

 全部開放したら、確実に暴走してしまう。


 狂気に飲まれるな。


 そして、攻撃してきた張本人を視界にとらえる。

 斬った直後だというのに、そいつはまるで油断していない。体勢も崩れていない。

 

 「お前だな?この集団の指揮官は」


 そいつは不気味に口角をゆがめる。


 「いかにも、私が黄昏教団所属、月城透と申します」


 丁寧にお辞儀をして自己紹介をしてくる。

 だというのに、そいつにはまるで隙がなかった。


 まて、黄昏教団のナイフ使い?

 まさか……。


 「――宵位第五席の月城か?」


 「おや、博識ですね。あなたは」


 冗談だろ。

 宵位——敵幹部の最上位に与えられる称号だ。


 しかもナイフ使いか。最悪の相性だ。

 俺は銃を構えた。


 「おや、話はもういいのですか?」


 ぬかしたことを言いやがって……。


 「俺たちに会話が必要なのか?」


 そいつが少し考えた後……。


 「それもそうですね。では、私も昨日あなたたちにやられた部下の敵討ちと行きましょうか」


 そいつが地面を蹴った直後、

 一瞬で視界から外れる。


 速い——視認が追いつかない。


 横から一瞬殺気を感知する。


 手練れのくせに、殺気が雑だ。

 その方向へ振り向く。

 ——誰もいない。


 違う。


 罠だ。


 慌てて振り向くと、やつが喉元までナイフを向けていた。


 すぐに後方へ跳び、射撃をする。


 無数の銃声が鳴り響く。


 だが、弾はかすりもしない。やつは自在に体を捌き、距離を詰めてくる。


 やつの足が着地と同時に片方の銃でナイフを裁くが、もう片方のナイフで腕を浅く切られてしまう。


 すると、急に動きを緩める。

 油断はしていない。


 「君、戦う時だけ呼吸が浅くなるね。

 ああ……楽しくなってるんだ。」


 そいつは……月城は急にそんなわけのわからないことを言い出した。


 「痛みで笑うな。気色悪い。」


 笑ってる?この俺が?

 

 自分の顔に手を当てる。

 すると、口角が上がっているのがわかった。


 俺は……戦いを、楽しんでいる?


 その時、俺は気づく。

 これは、能力、狂戦士の反動の前兆だ。

 ……まだ、踏み込んでいないはずなのに。


 だが、そいつは俺が動揺しているのを見逃すはずもなく、真正面からナイフで切りかかってきた。


 ナイフの軌道は不規則だ。とても読めたもんじゃない。

 だが、それは無駄な動きにもなりえる。


 半歩退き、踏み止まり、銃で受ける。


 「守るって言いながら、一番楽しんでるのは君だ。」


 ——なぜ、それを。


 「君は守るために戦ってない。

 自分が壊れないために戦ってる。」


「――だから、壊れた時が一番きれいだ。」


  月城は、楽しそうに観察していた。

 まるで、壊れる瞬間を待っているかのように。


 否定できない。

 あの時、父親を止めた時も、翔を守るという気持ちとは別に、ほかの欲望があった。

 

 ――戦う欲望。

 

 俺は——

 能力に飲まれないために戦っている。

 

 ……違う。

 俺は、守るために戦ってきたはずだ。

 

 ——なのに。


 口角が、どうしても下がらない。


 

 

 

 

第六話、ここまで読んでいただきありがとうございます。


鬼塚の戦いはいかがだったでしょうか。


守るために戦っているはずの彼が、

戦うことそのものに惹かれている――。


今回の話は、強敵との戦闘というよりも、

鬼塚という人間の「本質」に触れる回でした。


そして、月城という存在は、

ただ強いだけでなく、相手の奥底を暴く敵として描いています。


彼がどこまで踏み込んでくるのか。

鬼塚はどこまで踏みとどまれるのか。


次話もぜひ見届けていただければ嬉しいです。


若干改変しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ