第四話 鬼塚の狂瀾
リーダーを失った敵が、一斉に崩れた。
逃げる気か――甘い。
「おつかれ!隊長。いやぁ、派手にやったな」
「お疲れ様です、隊長。こちらは問題なく片付きました。想定どおりです」
鷹宮と鬼塚が合流する。
「おつかれ、二人とも。まだ終わりじゃない。散った敵を掃討するぞ」
「うげぇ……やっぱやるのか?」
「正直、逃げ足速い連中の掃討って面倒なんですよ。」
まぁ……たしかに面倒くさいが、ほかの敵集団に合流されても面倒だ。
「つべこべ言うな。さっさと片付けて、祝勝会にするぞ」
俺は敵の殲滅のために走り出す。
「まじで!?祝勝会は絶対ファミレスな!」
俺の速度に容易についてくる鬼塚が、子供のようにキラキラさせた目でこちらを見てくる。
……まぁいいか。
今くらいは、騒がしいくらいが丁度いい。
「お前ほんとファミレス好きだな」
「The庶民って感じでいいじゃないですか」
おぼっちゃま鷹宮は空走盤に掴まりながら鬼塚を肯定する。
こいつ、急に素で毒吐いてくるな。
ファミレスの人に怒られるぞ。
あと物理的に見下すな。地味に腹立つ。
――――――――
「鷹宮、上昇しろ。鬼塚は付いてこい」
俺が指示すると、鷹宮は上空でスナイパーライフルを構えた。
空中で長い銃を片手に構え、迷いなく狙撃する。普通なら無茶だが、あいつはそれを平然とやってのける。
「隊長、俺は何をすればいい?」
「先に敵の殲滅に行ってくれ」
「おう!いくぜ――《――狂瀾・猛進轟烈――》!!」
鬼塚が技を発動させたと同時に、鬼塚の姿が一瞬で掻き消えた。
遅れて砂煙だけが激しく巻き上がる。
「相変わらず、突っ込むことに特化した優秀なアタッカーだな……」
――――――――
スキル使用後、周りの景色が形を崩すように変わる。
もう制御は効かねぇ。このまま突っ走って終わらせてやる!
目の前に二人か……邪魔だな。
俺がサブマシンガンを構える。が、後方から2発の銃声が聞こえる。
バァン!バァン!!
撃たれたか?と、思ったが、2発の銃弾は俺に直撃することなく、俺の前にいた二人に直撃した。
……あいつの援護射撃か。相変わらずタイミングが完璧だ。おかげで遠慮なく突っ込める。
「お、おい……来やがったぞ!狂乱者だ!」
敵の一人が俺の姿を見て恐怖で震え出す。
いいぜ、もっと見せろ。
「くそっ、この化け物どもがっ!!」
嗚呼……いい。もっとだ……もっと俺を畏怖しろ。
その顔を見るたび、体の奥が熱くなる。
――戦いたくて仕方なくなる。
……便利だけど、ろくでもない体質だ。
「ヨォ……お前らが大好きな鬼塚さんが来てやったぜ?」
俺が言葉を発した瞬間、敵は恐怖で凍りつく。
……今の俺の気分は最高潮……。
もう誰にも止められない。
今すぐ誰かをブチのめしたくてたまらない。
敵の一人が、震えながら俺に銃口を向けてきた。
その瞬間、俺の中の理性が弾け飛ぶ。
俺は、口角を釣り上げながら言った。
「いいぜ?死にたい奴からかかってきな!」
体の奥で何かが疼く。
理性の鎖を、自分で外す。
止める理由なんて、もう残ってない。
そして――それを解放した。
――《能力・狂戦士》――
――――――――
引き金に指をかけた瞬間、
世界が一拍だけ静止する。
俺は目の前にあるものを片っ端から壊していった。
人も、物も、瓦礫も――
もう区別なんてつかない。
動くものは全部、排除対象だ。
使っているのは麻酔弾だ。死にはしない。
だから――遠慮なく撃てる。
一人、また一人と倒れていく。
爽快だ。
戦ってる時以外、こんなに気分が高揚することはない。
恐怖で引き攣った顔を浮かべながら奴らは倒れていく。
「テメェで最後だ」
最後の一人に、俺は至近距離まで近づく。
普通の人では、認識すらできない速度で踏み込む。
振り向く間すら与えず、最後の一人へ弾丸を叩き込む。
これで終わりだ――そう確信していた。
これで終わりか。
もう少し暴れてもよかったけど――まぁいい。
今日は祝勝会だしな。
第四話まで読んでいただきありがとうございます。
今回は鬼塚の戦闘と人物像を少し掘り下げる回でした。普段は勢いとノリで動いている彼ですが、その裏にある「戦いへの距離感」や隊の空気感が少しでも伝わっていたら嬉しいです。
次回は少し肩の力を抜いた祝勝会パートになる予定です。戦いの合間の日常や、キャラ同士の関係も描いていきますので、引き続き読んでもらえたら励みになります。




