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暁のエーヴァルⅠ〜その手は、狂騒を鎮めるために。〜  作者: かとくら(かず)
序章

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第一話 使ってはいけない力

 お昼時。


 家で妹と昼食をとろうとした時、

 ポケットのスマホが震えた。


 通知の見出しは『緊急出動』の四文字。

 せっかくのかわいい妹との穏やかな時間が、無機質な画面の光に切り裂かれた。


「お兄ちゃん、今日も仕事?」


 肩より少し長い黒髪を揺らしながら、不服そうな顔をして、妹――美雨が尋ねる。俺に似た目元は、時々母さんを思わせるくらい鋭い光を宿す。


「あぁ、すぐ戻る。留守番を頼んだぞ」


 刀掛にある『相棒』と木刀を携える。


 美雨が毎日欠かさず水を替えている小さな神棚に一瞬目を向け、俺は玄関を飛び出した。



 ――――――――


 

 走りながら無線機を取り出し、仲間に連絡を取る。


「こちら神代。鬼塚、鷹宮。応答しろ」


 『あ?なんすか隊長。今話しかけんな!』


 『鬼塚さん、隊長の話を聞かないと。

 重大な話だったらどうするんですか』


 『へいへい、わかってますよー』


 ……おい、緊張感無さすぎだろ。


「もう少し気を引き締めろ。全員もう現地に向かってるな?」


 『なあ隊長。その言葉、俺より鷹宮に言ったほうがいいんじゃ?』


 『その通りです。だって今パジャマ姿ですし』


 舐めやがって。呼び出しかかったら即集合だろ。人の命がかかってるんだぞ。


「とにかく支度して合流しろ!」


 『了解でーす』


 無線機越しからやる気のなさそうな声が聞こえる。


 というか今正午だぞ?

 どんだけ寝てんだ。


「もういい。鬼塚――」


 そう言いかけた途端、鬼塚の向こうから激しい銃声が鳴り響いた。


 『——ちっ。今交戦を始めた!隊長も急げ!』


「了解」


 気持ちを切り替える。


 通信が切れた瞬間、俺は「神刻」の一歩手前まで集中力を高め、ビルの合間の路地を最速で駆け抜けた。



 ――――――――



「今向かってる。鬼塚、交戦場所は?」


 『ああ?!今戦ってる最中だ!気が散るから連絡してくるんじゃねえ!!』


「場所を言わないと合流できないだろっ!」


 プツッと切断の音が響く。


 あいつ、通信切りやがった……。

 ……仕方がない。自力で探すか。


 高層ビルが林立する市街地をむやみに探しても時間の無駄だ。

 一度立ち止まり、耳を澄ませる。


 ――遠くで発砲音。

 方向は――あっちか。

 薄い煙が立ち上り、破壊された窓ガラスが光を反射している。

 間違いない、あそこだ。



 ――――――――



 ガラスの破片が散らばる現場には、すでに二人の姿があった。


「……パジャマ姿って言ってた割には、到着が早くないか?鷹宮」


「遅いぞ隊長、鷹宮が先だ!」


 防弾ジョッキを着た、赤髪を短く荒っぽくセットした厳つい顔の鬼塚が俺の遅刻を責める。


「全く……隊長が遅刻ですか……」


 さっきまでパジャマ姿だったはずの、高身長で整った顔立ちの鷹宮が、呆れたようにため息をつく。

 育ちの良さを感じさせる涼しげな顔立ちだが、その緩い表情が、残念イケメンと評される所以だった。


 お前には言われたくないが、事実だ。


 俺は少し考えた結果――


「すまん!」


 深く頭を下げることにした。



 ――――――――



 気を取り直して、戦況確認だ。


「敵の数は?」


「俺が何人か倒してるから……あと二十くらいだ」


 ――敵の数を数える時だけ、こいつ本当に楽しそうだな。


「三十人規模ですか……久しぶりですね、三人で相手にするのは」


「市民も数人やられてる。被害が広がる前に早く対処しねぇと」


 この集団は神刻者が仕切っているのだろう。

 一般の構成員まで全員武装している。

 俺たちも、油断すれば命を落とす。


 ——覚悟を決め、二人に指示を出す。


「よし、配置につくぞ!」


 俺が木刀を抜くだけで、二人の空気がガラッと変わる。


「おう!隊長の背後は任せとけ!」


「後方から援護します。心配いりませんよ。外したことありませんから」


 鬼塚はサブマシンガン二丁を構えて突撃し、鷹宮は素早く物陰の遮蔽物へと身を隠してライフルを据える。


 俺は木刀を正眼に構え、鬼塚とは別の方向で固まっている武装集団へと単身突入した。


「おい!一人でこっちに突っ込んでくるバカがいるぞ!銃もねぇ!」


「格好の的だなぁ!集中砲火だ!弾丸の雨を浴びせろ!」


 チンピラのような風貌だが、相手はれっきとした強者側の人間だ。


 奴らが一斉射撃をしてくる。


 遮蔽物も距離もなし。

 一歩間違えれば即死。


 ――わかっている。

 でも、俺には切り札がある。


 そして同時に、使いたくない理由もある。


 深く息を吸う。


 胸の奥で、何かがざわつく。


 使えば勝てる。


 だが、衝動に呑まれれば――俺はまたこの力に頼ることになる。


「隊長!」


 鬼塚の叫び。


 時が経つにつれ、弾丸が目前に迫る。

 時間が極端に引き延ばされたように感じた。


 ――使え。


 この力を。


 覚悟を決め、限界まで神経を研ぎ澄ます。

 次の瞬間――すべての銃声が消え去り、世界は完全な静寂に包まれた。

はじめまして!

かとくらと申します。

この度は「暁のエーヴァルⅠ〜この手は、狂騒を鎮めるために。〜」を読んでいただき、ありがとうございました。

この第一話は、主人公の能力、人格などなど、今後につながる伏線が多く入っています。

ぜひ考察してみてください。コメントで考察してくれたら喜びます。ネタバレはしませんが。

これから壮大な物語が始まりますしね。

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― 新着の感想 ―
初っ端から事件発生! 緊張感のあるシーン、主人公の能力への布石、男が好きな要素を詰め込んでいますね! 展開も早く、続きへの牽引力もあり、THE・現代ファンタジーといっか感じです! 少し思ったのは、主…
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