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二十七話 魔導ショップからの通知を受け取るオッサンと機械仕掛けのちゃん姉現る!!

信雄がウエストベリーで新通貨を導入してから二十日。シルバーバレットの駐屯地と町は、活発な経済の熱気に包まれていました。各地から集まった人々が思い思いに商売や買い物を楽しみ、あちこちで威勢のいいやり取りが響いています。

「いらっしゃい、何にする?」

「紙タバコとブランデーを頼む!」

「合わせて1540クレジットだ」

「高いな……。なら、つまみのジャーキーも付けてその値段でどうだい?」

「よし、交渉成立だ!」

別の角では、親子連れが足を止めていました。

「お母さん、チョコレート欲しい!」

「もう、しょうがないわね。店員さん、チョコ一つちょうだい」

「200クレジットになります」

「はい、お代ね」

さらに高級品を求める客も。

「この葉巻、一本いくらだ?」

「2000クレジットです」

「うわっ、高いな! 少しまけてくれよ」

「じゃあ1950クレジットで。これ以上は店長に怒られちゃいますよ」

「……分かった、買うよ! 二本くれ。ここ数日の日雇い稼ぎが飛んでいくな」

町中に溢れるこうした活気ある光景に、住民や移住者たちは確信していました。この賑わいはさらに広がり、かつての黄金期「ガメリカ」の再建も、決して遠い夢ではないのだと。


その頃、タウンメーカー製の自宅リビングにて、信雄は座布団を二つ折りにした即席の枕に頭を乗せ、これからの計画に思いを馳せていた。その時、魔導ショップから通知音が鳴る。

「ん、通知?」

端末を確認すると、最先端武装開発局傘下の販売所からのメッセージが表示されていた。

『信雄様、多大なるご寄付に感謝申し上げます。貴方の支援により新装備が完成いたしました。つきましては、その優先販売をご提案させていただきます』

内容を読んだ信雄は、通知をタップして詳細を確認した。


「新装備だと……!?」

突如届いた通知に目を輝かせた信雄は、魔導ショップ最先端開発局の販売画面を開いた。そこに並ぶのは「常温核融合炉搭載型反重力航空巡洋艦」。価格は驚愕の1200億コルン。

転売で稼ぎ続けた2兆コルンの残高を確認し、信雄は躊躇なく購入ボタンを押した。ストレージ転送の通知と共に、胸の高鳴りは頂点に達する。

彼はすぐさまジョン隊長、広子、JKトリオ、ジェイムズ少佐を招集。完全武装の騎士団を護衛に従え、ゴンドラでウエストベリーを離れ、広大な荒野へと向かった。


「さて、次はどんな騒ぎを起こす気だ?」

「さすがは我が主!何が起きても驚かないぞ!」

「……で、何か聞いてるか?奥方様」

「いや、かなり興奮してたこと以外、特には」「私たちも聞いてないわ」

「おじさんは秘密主義だしね」

「ほんとほんと、女心がわかってないんだから!」

ジョン隊長の問いかけに対する反応は、どれもこれも辛辣だった。

「さて、何をやる気だか」

「「信雄さんのことだから」」

「「「主殿だからね」」」

……いや、これは信頼……なのか?




ウエストベリーのゴンドラ乗り場から約1キロ、荒涼とした荒野の中心で信雄は足を止めた。

「ここなら十分だ。……行くぞ!」

その声とともに、信雄はストレージから巨大な影を解き放つ。

「「「「なっ……!?」」」」

「ええっ!?」

「嘘……だろ……」

驚愕に染まる一同の視線の先。全長約300メートル、全幅50メートルにも及ぶ、無骨な黒鉄の塊――近未来的な航空巡洋艦が、轟音と共に大地に鎮座していた。


「常温核融合炉搭載型反重力航空巡洋艦 命名は鳴神だ!これで敵の頭を抑える事ができ、海も越えられる!」

信雄の話を聞き、その場の男達や一部女子が盛り上がっている。

ウエストベリーからも、視線を感じる。


「流石ですな我らの主は、やはりわかっていらっしゃる!!」

「ああ、子供の頃に夢見た乗り物だ!」

「武骨さがいい味を出している!」

「航空巡洋艦 鳴神、響きがいいな!」

「鳴神、雷神の別名ですか・・・」

「航空巡洋艦???」

「「でっかいなぁ~」」


信雄が携帯端末を操作すると、巡洋艦の側面からタラップがせり出し、重厚な装甲扉が静かに開いた。

「さあ、乗り込むぞ!」

信雄の号令に、メンバーたちは期待に胸を膨らませて後に続く。

扉をくぐった信雄の前に立っていたのは、一人の女性だった。ストレートなシルバーのロングヘアに、身体にフィットした黒のバトルドレス。その洗練されたスタイルと凛とした立ち姿に、信雄は思わずたじろぎ、後ろの騎士たちは圧倒されたように見入ってしまう。

「「「「うわあ! すごく綺麗な人だ!」」」」

「本当、……痛たたた!」


いつの間にか口元が緩んでいたのだろう。信雄は背後に気配を感じる間もなく、三方向から容赦ない「お仕置き」を見舞われた。振り返ると、広子、木崎、小日向が、三者三様の不満を顔に張り付かせている。

「信雄さん、とても幸せそうなご様子ですね」

嫌味を込めた広子の言葉を皮切りに、木崎が吐き捨てるように言った。

「おじさんって、本当に分かりやすいわね。あんな脂肪の塊にそんな価値があるわけ?」

「全くだよ。真緒先輩の胸をチラチラ見てるの、みんな知ってるんだから」

小日向の呆れたような指摘が、逃げ場のない事実として突き刺さった。


広子の瞳から光が消え、底冷えするような笑みが浮かぶ。木崎と小日向は己の胸元を意識しながらも、万力のような力で信雄の背を容赦なくつねり上げた。一方の杉崎は、腕を組んで豊かな胸を強調し、赤らめた顔で熱い視線を信雄に突き刺している。身に覚えのない?四面楚歌の責め苦に信雄が悶絶していると、一人の女性が救いの手(あるいは新たな火種)を差し伸べるように声をかけてきた。



「信雄様、お客様方。当艦へのご乗船、歓迎いたします。艦橋へご案内しますので、こちらへ」

「……ん? 君は?」

「失礼いたしました。私は本艦のサポートAI『X-AI-439-Beta』です。このアンドロイドは私の外部端末ですが、……その、お気に召しましたか?」

正面のアンドロイドが答えづらい問いを投げかけてきた。俺は苦笑でやり過ごしつつ、話を続けた。


「少し呼びにくいな。俺はこの艦を『鳴神』と呼ぶことにした。お前もそう名乗らないか?……お前こそが、この艦そのものなんだから」

「な、なるかみ……鳴神。承知いたしました。これより私は『鳴神』と名乗ります。素晴らしいお名前を……ありがとうございます、マスター」

鳴神は感激した様子で、深々と頭を下げた。

「……旦那様、アンドロイドとはどのような存在ですか?」

広子が不思議そうに尋ねる。信雄は、家でよく観るSF映画に登場する人型アンドロイドを引き合いに出して説明した。


「ごめんなさい信雄さん私てっきり、うふふふ!」

「ごめんね、おじさん、なんだアンドロイドだったのか、アハハ!」

「おじさん、ごみん!ははは!」


広子、木崎、小日向はまさかの人間ではない事を知ると先ほどまでの機嫌の悪さは何処に行ったのかわからない様に、軽く謝り笑って誤魔化していた。


鳴神に案内されて艦橋へと足を踏み入れると、そこは往年の宇宙戦艦を彷彿とさせる光景が広がっていた。前方には操縦席が並び、中央にホロディスプレイ、側面には観測・通信用のタッチパネルが配置され、後方には艦長席が構えている。前面と左右の大型窓からは、壮大な景色が見渡せた。

艦長席を除くすべての席には、鳴神と同様の、しかし個別の容貌を持つ女性型アンドロイドたちが着席していた。彼女たちはスタイリッシュで際どいラバー製のピチピチな全身タイツスーツに身を包み、起動手順を進めている。

その様子に同行の紳士陣は思わず色めき立って前屈みになっていたが、信雄は背後に広子たちの視線——殺気とも取れる気配——を感じて、目の前の艶姿あですがたを楽しむ余裕など微塵もなかった。



「信雄様、こちらが艦橋です。ご覧の通り、この艦の全機能はAI内蔵型のアンドロイドが管理しており、貴方の命令一つで動きます。私たちは末永く、貴方にお仕えいたします」

彼女たちの圧倒的な忠誠心に気圧されつつも、信雄は決意した。


「承知した。貴公らの忠誠、この楠木信雄がしかと胸に刻もう」

姉妹たちの代表が深く頭を下げ、それに呼応してアンドロイドたちの軍靴が鋭く音を鳴らした。王のごとく、信雄は自らに課せられた『支配者』という仮面を被る。

「……おじさんのあの声、たまらないわ。大人の色気が溢れてる」

「本当ね、普段からあんなに凛々しければいいのに」

「いつもの信雄様も素敵ですが……あんな姿を見せられたら、鼓動が止まりません!」

「こら、静かに。今は厳粛な儀式の最中なんだから!」


「そんな事言う真緒先輩だって、おじさんの真面目な声色とか聞いたり、鋭い目付き見たりすると、うっとりしてるじゃ」

「生意気な口を利くのはこの口かな~!」

「いたぃでふぅ、いたぃでふぅ、まほぉせんふぁい!」

杉崎が赤面しながら生意気な小日向の頬の両側を引っ張りお仕置きしていた。


まったく締まらない信雄達一向である。


そして話は変わり、秋津洲公国へ向かう話になる。


「確か、戸岐県だったよな?」

「はい、そうです!」

「そうだよ、おじさん!」

「ジェイムズ少佐、地図はあるか?」

「ガメリカの地図はあるが秋津洲の地図は無いな!」

初手で躓いたと思ったら、鳴神がホロディスプレイを起動した。

「皆様をお迎えしている合間に、この星の地形のスキャンは終わっていますマスター!」


「鳴神、ご苦労!」

「恐縮です、マスター!」


信雄がホロディスプレイの地球儀をスワイプし、信雄達の世界ではアメリカの位置に動かした。

「ジェイムズ少佐、ここがガメリカで合っているか?」

「ああ、我が祖国だ!」

そして、更にスワイプし、日本の位置に移動し聞いた。

「杉崎、木崎、小日向、秋津洲公国はここで合っているか?」

「「「うん・・・」」」

三人は頷き、ジェイムズもそれに続いた。


「決まりだ、野郎ども!秋津洲公国へ殴り込みをかけるぞ!準備を急げ!パラディン、騎士たち!非番の連中も総員起こしだ!」

「「「「イエス、マイロード!!」」」」

騎士たちは船外へ飛び出し、スラスターの光の尾を引いてウエストベリーへと向かった。

「ジェイムズ少佐、防衛隊の指揮はお前に任せた!」

「ちょっと待てよ信雄、俺を仲間外れにする気か?酷いじゃないか。大体、秋津洲公国には昔、観戦武官で行ったことがあるんだ、軍の知り合いも多いし役に立つ。あの魔改造したウエストベリーなら、副官に任せておけば防衛は完璧さ!」


ジェイムズの熱意に押され、信雄はついに首を縦に振った。

「いいだろう。だがジェイムズ少佐、護衛としてガメリカの兵士を数名同行させろ」

「どういう意図だ?」

「万が一に備え、自分の身を守る戦力を持っておけということだ。……まあ、そこまで俺を信頼してくれるのは悪い気はしないがな」

そんな二人のやり取りを、木崎と小日向はニヤニヤと楽しげに眺めていた。


「ねえ、今の会話って男同士のそういう雰囲気、感じなかった?」

「りーちゃんも好きだねー!」

「すーちゃんこそ、食いついてる!」

「やだもう、おじさん同士のやり取りなのに(笑)」

「だから良いんじゃん!普段はツンツンしてる二人が、ふとした瞬間に見せる優しさ……たまんないよね!」

「「滾ってきたー!」」

「こら!」

バシッ!バシッ!と、阿呆な妄想を口にしていた二人の頭に、杉崎の鋭いツッコミが炸裂する。

「「痛っ!」」

「アホな話をするな!」

「「すいましぇん」」

杉崎に首根っこを掴まれて引きずられていく二人。

こうして、出発は二日後に決まった。



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