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二十二話 オッサンと砂塵が舞う平行世界

傭兵たちの拠点設営中にジョンへ確認を取り、信雄は一度自宅に戻った。そこで待機していた4人の女性たちに状況を説明し、護衛対象であることを伝えて自己紹介をさせた。彼女たちは翻訳リングを装着している。

「杉崎真緒です、よろしくお願いします!」

「木崎理佳だよ、よろしくね傭兵さん達!」

「小日向鈴美です、傭兵さん達よろー!」

女子高生の彼女たちの挨拶を受け、傭兵たちが活気づく中、一人が名乗りを上げた。

「お嬢様方、俺たちナイトに任せておけ!必ず無事に送り届けてやるぜ。俺はガルシアだ!」

「その通り、大きな船に乗ったつもりで安心しな!化け物どもはシルバーバレットの名にかけて抹殺してやる。嬢ちゃんたち、よろしくな。俺はバスチスだ!」

「やれやれ、相変わらず調子がいいねバスチス。少し前までボスの話で玉が縮んでたのにさ。……よろしくね、嬢ちゃんたち。あたいはリンダ」

「うるせぇ!お前には縮むタマすらねぇだろ、リンダ!その割には男と間違われるんだろ!」

「まあね。でも、あんたも男によく間違われるんじゃない?バスチス」

「「「「……一本取られたな、バスチス!わはははは!」」」」

一同は大笑いし、その場は和やかな空気に包まれた。


そんな、ピー音まみれになりそうな会話の応酬が続く中、一人の傭兵が広子の自己紹介が終わってないと言ったので、信雄は自己紹介させた。


「私は広子です、信雄さんの妻です!よろしくお願いします!」

その言葉に傭兵達から、厳しい視線が向けられるが、信雄は甘んじて受け、言った。


「この時代では、12~13才で女性は結婚するから、広子は16でかなり遅い結婚だぞ!」

そう、信雄が言うと、一同に困惑が広がり、無理やり納得していた。


その後、隊長のジョンが纏め、自己紹介は終わった。


その後、信雄とジョンが仮設の作戦本部で小隊長達とこれから向かう世界でどう立ち回るか打ち合わせが終わり、装備点検後、先ずは行き先の状態が分からないので、防護服と酸素マスクを装備し、信雄、ジョン含む一般傭兵三人の合計五人が転移する事になった。


信雄はいつも使用している、転移ボタンの横にある転移先選択の検索機能で、JK三人の知っているワードを入れ、時代を彼女達が転移した日に設定し、検索すると、87356件のリストが表示され、信雄が目頭を押さえる。


一瞬怯みそうになったが、信雄は社畜時代に培われた鋼のメンタルで耐え、努めて冷静に、考え、一つの考えが浮かんだ、転移からの日にちを1年程後にずらし、不審な失踪で検索を再度かける。

すると、1341件に減った、信雄は一番上に表示されている世界を選択する。

わかりにくいので、一番上をワールドα0001の数字を振り、選択して転移した。


異世界へ転移した5人が目にしたのは、ただ荒涼とした荒野だった。遠く霞む景色の中に、ポツンと寂れたガソリンスタンドが浮かび上がっている。

信雄は「鑑定」スキルで周囲の環境を確認。大気、放射線量ともに異常なしを確認すると、防護装備を脱ぐよう指示した。普通の文明圏である可能性を考慮し、私服に着替え、装備は拳銃のみという軽装で調査へ向かうことにする。

地名を特定すべく、傭兵たちが武装を解除した軍用ハンヴィーを取り出し、運転する傭兵たちと共にそのガソリンスタンドへ向かった。

古びた店舗の横にハンヴィーを停め、傭兵3人が調査のために降りていく。

少しして、店舗の奥を確認した傭兵たちが引き返してきたが、入口付近にたどり着くや否や、堪えきれない様子で激しく嘔吐した。

ハンヴィーに待機していたジョンが、緊迫した様子で無線を入れる。

「マルコフ、どうした!? 中で何を見たんだ!」

無線越しに聞こえるマルコフの返答は、えずき混じりで酷くかすれていた。


「たっ、隊長……死体です。腐乱した遺体が転がっています……おぇっ! 凄まじい死臭だ。まるで何かに食い荒らされたような……」

ジョンの指示を待たず、傍らにいた信雄が鋭く口を挟んだ。

「呼び戻せ。装備を重武装に切り替えさせるんだ。最悪の事態を想定しておけ」

「了解。……マルコフ、直ちに撤退しろ!周囲の警戒を解くな。全員こちらへ戻れ!」

ジョンの合図とともに信雄も車を降り、合流した傭兵たちに重武装を命じた。信雄自らも武器を手に取り、部隊を引き連れて再び不気味な静寂に包まれた店舗内へと足を踏み入れた。


そうして、店舗内の探索が開始された。


「ひどい悪臭だ。少し浄化きれいにするとしよう」

信雄が神聖魔法を紡ぐと、展示スペースの空気が一変した。腐乱死体はそのままに、悪臭の元だけを分解・浄化していく。

急に無臭の空間となり、傭兵たちは戸惑った。

「あれ?匂いが消えた……鼻がイカれたか?」

「いや、本当に消えてる!」

「ゲロ吐かずに済みそうだ!」

「ボス、何しやがったんです?」

信雄が「術でこの場を清めた」と伝えると、傭兵たちは感嘆の声を上げた。

「さすがエクソシストの親戚!やることが別格だぜ!」

「陰陽師だ!何度も言わせるな!」

信雄の訂正もどこ吹く風。ジョンから広まった誤解は、傭兵たちの間で確固たるものになっていた。


その後、バックヤードや居住スペースを見回り、ある新聞記事を見つけた。



足元に転がっていたのは、インクの滲んだ一枚の紙片だった。

『USGトゥデイ』

そんな名に聞き覚えはない。だが、書きなぐられた見出しは、異様なまでの熱を帯びて網膜に突き刺さった。

【アフリコ大陸で新型伝染病発生か!? 死者が歩く! 我ら取材班は真実に迫ることにした!!】

三流紙特有の、扇情的で、どこか空々しい叫び。しかし、信雄の指先を凍り付かせたのは、その記事の隅に記された日付だった。

「……三ヶ月、後?」

それは、あの少女たちが姿を消した日から、正確に三ヶ月後の未来を示していた。

乾いた風が吹き抜け、紙面がカサリと音を立てる。

信雄は、周囲に物言わぬ肉塊となって散乱する「死体」へと、ゆっくりと視線を落とした。

もし、この記事が「予言」ではなく「事実」の記録なのだとしたら。

もし、目の前の骸たちが、ただの屍ではないのだとしたら。

彼は震える手で、その悍ましい可能性を暴くための『鑑定』を、動かぬ肉の山へと注ぎ込んだ。


名前:マーク・トンプソン

ジョブ:ガソリンスタンド店員

体力:15/0


状態:死亡 死後3週間バイターからの攻撃により死亡しました。


信雄はその鑑定結果を見た後、即座に、ジョンに言った。

「ジョン、こいつは化け物の仕業だ! 全員集めろ。一度退いて体勢を立て直し、戦力を整えてから出直しだ!」

信雄が言い切る間もなく、無線から傭兵たちの悲鳴と怒号が飛び込み、生々しい連続銃声が周囲に鳴り響いた。


「なんだこいつは!? 隊長、子供みたいな小柄な奴が……がはっ!」

「ポールが飛ばされた! 撃て! 殺せ! 速すぎて追えない!」

乾いた発砲音と肉を削る衝撃音。

「心臓に当たってるはずだ……! なぜ止まらねえ! 化け物め!」

狂乱の通信を耳にしながら、信雄とジョンは顔を見合わせ、凄まじい勢いで現場へと急行した。


信雄はストレージから「封魔刀」を呼び出すと、走りながら陰陽服へと身を包み、修羅場と化した戦場へ乱入した。

視界には、倒れ伏す二人の仲間と、弾幕を張りつつ化け物と対峙するマルコフの姿。マルコフが弾切れでリロードを挟んだ一瞬、肉薄しようとした化け物の横腹に、信雄の鋭いドロップキックが炸裂した。

凄まじい衝撃音とともに背骨が砕け散るが、化け物は上半身のみで這いずり、執念深く動きを止めない。信雄はその背を力強く踏みつけ、封魔刀で執拗に急所を突き刺していく。

「まずは心臓か」

刃が心臓を貫くも、反応はない。

「なら延髄……」

身体の自由は奪ったが、未だ頭部が蠢いている。

「やはり、頭か」

信雄が呟くと同時に、刀をその脳天へ深々と突き立てる。刹那、化け物は完全に物言わぬ屍へと変わった。



脅威の沈黙を確認した信雄は、すぐさま傭兵たちを鋭い視線で射抜いた。

「噛まれた奴、欠損や重傷を負った奴はいないか? 正直に言え。俺の術なら治せる!」

信雄は、肋骨と右腕を砕かれたポールを神聖魔法で完治させ、続けて腕を食いちぎられ腹に穴の空いたマーカスに手をかざした。失われた四肢を再生し、傷口を塞ぎ、体内のウイルスまでをも浄化。鑑定で異常がないことを確かめる。

その超常的な光景を目の当たりにしたジョンとマルコフは、戦慄とともに悟った。自分たちは契約が切れるまで、死ぬことさえ許されないのだと。

その後、信雄たちはハンヴィーをストレージに収めると、平安時代の傭兵キャンプへと転移した。



転移して、戻った平安時代は昼で、傭兵達の拠点には、カレーのいい匂いが立ち込めており、帰還した、五人を傭兵達と四人の少女達が出迎えた。


食欲をそそる芳醇な香りに、ジョンが目を細める。

「何の匂いだ?」

「ジャパニーズカレーです、隊長」

部下の報告に、マルコフ、ポール、マーカスが顔を見合わせた。

「あの伝説の……!」

感嘆の声を上げ、三人は実物を確認しに駆けだす。

「これから不快な報告をする前だ、先に腹を満たそう」

「同意するよ」

信雄とジョンは、湯気の立つビーフカレーを静かに味わった。


しばらくして、少女たちと傭兵が集まるブリーフィングルーム。そこは重苦しい空気の中、信雄による転移先説明の場となっていた。


「マジかよ、隊長! 100キロ超えのポールを吹っ飛ばして、あのマーカスの腕を噛みちぎるガキの化け物だと? 弱点は頭と背骨だけ。銃すらまともに効かねえなんて、冗談じゃねえぞ!

おまけに速くてウイルス持ちかよ。そんなクソったれな相手に刀で渡り合ったボスは、どこの化け物だよ。

……まあ、いいさ。ボスがそれだけ強けりゃ、俺たちがケツを拭いてやる必要もねえ。守られなきゃ死ぬようなタマじゃない。おかげで俺たちの命も、少しは長生きできそうだな!」

そうバスチスが皮肉混じりに言った。


「おい、もし奴らがダース単位で押し寄せてきたら、この手持ちの装備(5.56mm)じゃ豆鉄砲扱いだ。止まりゃしねえ、圧倒的にパワー不足だ。せめて7.62mm級は欲しいところだな」

「それか、AA-12の自動ショットガンで弾幕を張って足止めし、遠距離からバレットM82で仕留めるか。野外ならM2重機関銃でハチの巣にするのが確実だ」

傭兵たちが次々と現実的な戦術を口にする中、バスチスがふと思いついたように呟いた。


「なぁ……一つ気になってたんだが、向こうの『アメリカ』って、まだ残ってんのか? 俺たちよりずっといい装備してた連中、全滅しちまってるんじゃねえだろうな……?」

バスチスがタブーとも言える懸念をストレートに口にしたことで、その場は空気が凍りついた。非難の視線を向ける者、無言で頷く者、あるいは冷静に殲滅のシミュレーションを続ける者など、反応は様々でカオスと化していた。隊長のジョンさえも返答に窮する中、信雄は騒めきを制し、口を開いた。


「いい武器さえあれば何とかなる、そう言いたいわけか?」

「しかし、マルコフの報告では我々の武器はほとんど通用しませんでした……」

ジョンの言葉に、信雄は「普通の武器、か……」と小さく呟く。

「……よし、休憩!広子、JKたちと協力して、彼らにお茶を出してくれ。少し頭を冷やしたい。ジョン、一時間後に再開な」

広子たちが頷いて給仕を始め、ジョンも場を静める。雑然とした部屋を後にした信雄は、自宅の洋式トイレという唯一のプライベート空間で魔導ショップ(システム)を起動した。


残金:258,201,058,500コルン




そこには、少し前の、二億くらいしか無かった状況は跡形も無かった。


信雄は現実世界で投資をするなか、出来た資金を対価用の物品収集に使い、売ってコルンを稼ぎ、錬金術の装備とスキルの最上級の物を揃え、人工的な宝石の自分の能力限界のデカイ原石を現代で材料を大量に仕入れ、大量に作って売却したことで、多額の魔導ショップ通貨を現代で稼いでいた。


信雄はそれを一瞥し、支店追加のアイコンを押し、装備を探し始め、一つの店舗に目が止まった。


最先端武装開発局傘下販売所


信雄は装備一覧を見て、支店登録する。


信雄は気に入った装備品一式を購入した。


残金:257,200,258,500コルン


約10億と少しのコルンが残金から引かれ、ストレージに納品された。


その支店のページ下にコルンを入れると、装備の開発により、新商品が出ると書いてあったので、300億程入れた、良い物には金を惜しまない信雄であった。


残金:227,200,258,500コルン


残金が少し目減りしたのを確認し、信雄はウインドウを閉じて、傭兵達の待つブリーフィングルームに戻る事にしたのだった。


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