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十九話 迎え撃て!!オッサンの国府防衛戦

開けた原野に佇む平城、国府。そこは、大軍を迎え撃つにはあまりに脆弱な場所だった。

信雄は長家の同意を得ると、直ちに「地の魔法」を展開。国府四面に幅5メートル、深さ10メートルもの巨大な空堀を穿ち、そこから出た莫大な土砂で国府全体を底上げする。さらに、召喚した巨大な岩塊で門を封鎖し、登城階段まで備えた強固な塀を築き上げた。

既存の材料を活かした魔法的工法により、マナ消費を最小限に抑えつつ、わずか2時間という驚異的な速さで簡易防御陣地を完成させたのだ。

その圧倒的な光景に、兵士や侍従、そして長家までもが涙を流し、感謝を胸に弓を手に配置につく。

――そして、奴らが来た。

松明の群れが地平線を埋め尽くす。偵察では二千の敵、しかし現れたのは紛れもなく一万の大軍。突如として膨れ上がった死の行軍に、長家たちは息をのむ。

敵軍の先遣隊二十匹が門前へ現れ、袋をハンマー投げの要領で投げ込んできた。

転がった袋の中身は、生首。婦人や子供までもが混ざり、進軍途中に惨殺された者たちの凄惨な光景に、全員が絶望に顔を歪めた。

その時だ。


「これほど開けた場所で、あろうことか密集するとは……正気の沙汰ではないな。嗚呼、滑稽、実に滑稽だ! わはははは!」

温厚な仮面をかなぐり捨てた信雄は、鬼神のごとき不敵な笑みを轟かせた。彼が突き立てた中指は、敵軍への最大級の侮蔑と殺意を物語っている。

「無力な民草しか血祭りに上げられぬ、腰抜けのゴミめ! どいつもこいつも、一匹残らず地獄の業火で焼き尽くし、閻魔の元へ送り返してくれるわ!」

狂気すら孕んだ極限下の胆力。傲然と胸を張るその豹変ぶりに、長家たちは息を呑んだ。しかし、凍りついていた兵たちの心に、不思議なほど熱く、頼もしい信頼感が伝播する。恐怖は一瞬にして、闘志へと昇華された。

漆黒の鎧を纏った鬼の軍勢は、まさに進撃の陣形を整えんとしていた。

その死地を前に、信雄は薄く笑みを浮かべて長家に問いかける。


「……薙ぎ払っても、よろしいですね?」

信雄の問いに、長家の声は緊張で上擦っていた。だが、その瞳にはもはや迷いはない。

「う、うむ……頼む、やってくれ!」

応諾の言葉が響くと同時に、信雄は天へと右手を掲げた。

その刹那、世界が変質する。大気は極限まで圧縮され、逃げ場を失った空が悲鳴を上げた。

「――裁きの雷よ、塵一つ残さず焼き尽くせ!」

解き放たれた全魔力。それは慈悲なき神の如き一撃。

視界を白一色に染め上げる、最高出力の極大雷撃魔法が放たれた。

バチバチバチバチッ――!!

バヒューーーンッ!!

ズガガガガッ!! ズドォーーン!!!!

天地を揺るがす轟音。白銀の雷光が龍の如くのたうち回り、漆黒の軍勢を縦横無尽に引き裂いていく。

鬼たちは悲鳴を上げることすら許されない。ただ圧倒的なエネルギーに飲み込まれ、軍勢の6割が、その存在を虚無へと変えられ消滅した。

訪れる、一瞬の静寂。そして、その後に続く敵軍の崩壊。

地獄を具現化したような凄絶な光景を目の当たりにし、長家の内側で熱い高揚感が爆発した。彼は喉も裂けよとばかりに、軍勢へ向けて吼えた。

「見たか、化け物共! 我らには、天下無双の陰陽師・楠木信雄殿がついておられるのだ! 全軍、鬨の声を上げよ! 敵を恐怖の底に震え上がらせてやれ!」

「「「「おぉぉ――――っ!! えい、えい、おぉ――――!! えい、えい、おぉ――――!!」」」」

地平を揺らす咆哮が戦場を支配した。かつて絶望に沈んでいた国府側の士気は天を突き、勝利の予感が空気を震わせる。

一撃で半数を失った敵軍は、その圧倒的な力と人間たちの気勢に呑まれ、浮き足立って後退を開始。再編を試みるべく国府から距離を取り始めた。

だが、その狂騒の中心にいる信雄の視界は、不快な歪みに覆われていた。

脳を直接灼かれるような激痛と、泥のように重い倦怠感。

信雄は崩れそうになる意識を繋ぎ止め、己の限界を悟りながら、震える手で自身のステータスを展開した。


名前:楠木 信雄

レベル:19→93

称号:鬼殺し

ジョブ:陰陽師

体力:103→556

マナ:221→668

攻撃力:92→422

防御力:78→391

魔法攻撃力:134→514

魔法防御力:96→492

速さ:51→182


次のレベルまで:10235


先ほどの攻撃で大幅にレベルが上がっていた。


信雄は体力とマナを通知を解除し見た。


体力:556/103

マナ:968/12 +300


今回のレベルアップで体力とマナの最大値が上がり、不調が発生していた。 信雄はしばらく、敵が止まったのを確認し、体力ポーションとマナポーションをがぶ飲みした。 空の小瓶が信雄の足元に数十本転がる事になる、信雄の腹はポーションでたぷたぷになっていた。 信雄がポーションを吐かない様に、やすんでいると、話し掛けられた。 「信雄殿、いや信雄様、大丈夫ですか?」 長家だった。 「長家様止めてください、貴方はこの場所の最高位です、へりくだるのは勘弁願いたい!それに、私達は同じ戦場にいる生死を共にする戦友です!!」 「信雄殿!!」 ガバリと、長家が泣きながら抱きついてきた。 「すまぬ、少しでもお前の性根を疑った私を赦してくれ!!」 信雄は長家を受け止めると、返答した。 「それはお互い様です、私も貴方が私や周りの兵達を当てにし、此処から逃げ安全な後方で指揮を取る様なら見捨てていました!」 信雄と長家のオブラートに包まない、話しに周りが固まっていると、二人は笑い始めた。 「「ふっはははは!!あーはははは!!」」 二人はひとしきり笑うと、互いに笑みを浮かべ拳を付き合わせる。 「死ぬなよ信雄殿!」 「貴方もですよ長家様!」 二人のその様子に周りの空気は弛緩した。 その後、1時間程経ったところで、敵軍に動きが見られた。言い換え少し膨らませてかっこよく

今回のレベルアップに伴う体力・マナのキャパシティ急増は、信雄に「ステータス異常」にも似た強烈な不調をもたらしていた。敵軍の進軍停止を確認し、信雄は休息もそこそこに、体力・マナポーションを堰を切ったように流し込む。足元には、数分で数十本もの空瓶が山を築き、その腹は液体でパンパンに膨れ上がっていた。

喉元まで競り上がってくるポーションを必死に飲み込みながら耐えていると、声を掛けられた。長家だった。

「信雄殿……いや、信雄様。お体は大丈夫か?」

その声音はへりくだるというより、畏敬の念すらこもっていた。

「長家様、止めてください。貴方はこの戦場における最高指揮官だ。そんな謙遜は不要。……それに、俺たちは同じ地獄を這いずり回る『生死の戦友』でしょう」

その瞬間、長家が泣き崩れるように信雄へ抱きついてきた。

「許してくれ……一時でも、お前のその性根を疑った自分を!」

信雄はその背を受け止め、静かに返した。

「……お互い様ですよ。もし長家様が、俺や兵を見捨てて後方で安全に指揮を取るような男なら、俺も貴方を見捨てていた」

濁りのない、真の信頼から来る殺伐とした会話。周囲の兵たちが呆気にとられる中、やがて二人は顔を見合わせ、大笑いし始めた。

「「ふっはははは!! あーはははは!!」」

笑い合った後、二人は互いに拳を付き合わせる。

「死ぬなよ、信雄殿」

「貴方もですよ、長家様」

そのやり取りに、戦場の凍りついた空気が一気に緩和された。



約一時間。静寂に包まれていた敵陣が、再び不穏な殺気をはらんで動き出した。

敵兵は密集を避け、間隔を空けた散兵陣形にてじりじりと攻め寄せてくる。

信雄は即座に火の魔法を展開し、堀の前に高き炎の壁を築き上げた。明るく照らし出された敵の影を、国府軍の弓隊が確実に仕留めていく。それと並行し、信雄は敵に悟られぬよう、周囲にいくつもの火球を乱射し、罠を仕掛けた。

これを見て敵軍は「敵が混乱している」と誤認し、全軍を挙げた総攻撃を決断する。信雄は敵が思うままに盤上へ乗ったのを見届け、薄く唇を歪めた。

「……奴ら、いま自分たちが死地へ向かっていることにすら気づいていない」

信雄は仕掛けていた四方の火球に対し、風の魔法を指向した。四方八方から吹き込む風が、炎を爆発的に煽る。

敵が重厚な鎧を纏い、物理的な矢が通りにくいことは百も承知。信雄が用意したのは、炎そのもの。いや、ただの火ではない。風の魔法で酸素を限界まで高濃度に混入させた、いわば大規模な「青き高温のガスバーナー」である。

青白き炎の奔流が瞬く間に敵軍を飲み込んだ。国府の屏に立つ兵たちが、物凄い熱風に晒され、恐怖と警戒の汗を流しながらその光景を見つめる中、敵軍は惨烈な光に包まれる。


地獄の様相を呈する戦場。逃げ惑う敵軍の幹部たちが背を向けたその時、冷徹な死の静寂を切り裂くように、信雄の声が響き渡った。


「……何処へ行く?」


敵軍の幹部たちが、金棒や妖刀を構え、声の主を睨みつける。そこに立っていたのは、陰陽師・信雄。静かに佇むその背には、常人ならざる覇気が漂っていた。


「「「ダレダ、オマエ!! ドコカラキタ!!」」」


罵声を無視し、信雄は静かに尋ねる。

「誰の指図だ? この殺戮の真意を問う」


「ニンゲン、ブレイダゾ!」

豪奢な絹を纏った鬼が叫ぶと、側近の鬼たちが即座に壁となり、信雄へ斬りかかった。信雄は眉一つ動かさず、「封魔刀」を鞘から抜く。神速の閃光が戦場を駆け抜け、首魁以外の鬼たちは一瞬にして灰へと化した。

「答えろ。誰に命じられた」

刃を突きつけられ、震える鬼は口を開いた。

「……八十禍津日神やそまがつひのかみに認められし者から、直々に命令が下った。現世を手中に納める妨害をした、小賢しい人間への懲罰だ。ただそれだけのこと!」

「国司の疫病の件か」

「その通りよ、人の子よ! そして、その指図をしたのは……ぐあぁぁあ!?」

信雄が真名を問おうとした瞬間、鬼の体から青白い炎が噴き出した。

「裏切りやがったな、あの男……! シャクだから教えてやる。俺たちを操っていたのは……芦屋道満だ!」

その名を口にした直後、鬼は凄まじい火柱に包まれ、何もかもが灰となって風に消えた。

残されたのは、凍りつくような静寂と、冷ややかな視線を道満の名に向けた信雄のみであった。


「芦屋道満はまだこの世にいないはずだが?」

信雄は歴史の授業で聞いた事を思いだし、その情報に一抹の不安を懐きながら、ステータスを確認した。


名前:楠木 信雄

レベル:93→127

称号:鬼殺し

ジョブ:陰陽師

体力:556→701

マナ:668→826

攻撃力:422→594

防御力:391→504

魔法攻撃力:514→707

魔法防御力:492→642

速さ:182→262


次のレベルまで:102706


更に、レベルが上がっていた。


信雄がステータスを確認していると、魔導ショップのアイコンが光っているのに気が付き開くと、ファンファーレが鳴り響き通知が表示された。


レベルアップにより支店を6店舗登録出来ます。


その通知を閉じると、別の通知が表示されたので見る。


レベルアップにより時空間転移の機能が拡張され、平行世界間の移動が可能になり、転移による負荷が軽減されました。


それらの通知を見て、信雄は嬉しかったが、草臥れていたので、画面を閉じ、国府へ転移する。


国府内からは、信雄と長家を称える声と、兵と国府へ避難していた人達の歓声が上がり、上も下も無く、祝宴ムードだった。


「ほら、皆の者、これを飲んで良いぞ!」


そう言い、信雄が納めた酒を長家が皆に放出し、その勝利の美酒をその場の全員が飲み干し夜が明けた。


信雄はその後の国府を挙げての宴会を辞退し、信雄の家に転移した。


こうして、信雄の国府防衛戦は終わりを告げたのだった。


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