一話 オッサン迷子になるのは人生だけだと思ってたよ!!
「風だ……まさか、出口か?」
信雄は漆黒の横穴へと顔を寄せ、その闇の深淵を覗き込んだ。奥は底知れぬ漆黒に包まれている。しかし、振り返れば彼を追う絶望があるだけ。戻るという選択肢は、とうに消え失せていた。
「行くしかないか……」
覚悟を決め、泥にまみれたブーツで重い一歩を踏み出す。コツ、コツ、コツ……。硬質な靴音が、洞窟の壁に孤独に響き渡り、やがて闇に吸い込まれていった。
その時だった。頭上の天井から、不意に何かが落下してきた。
「……誰だ!?」
咄嗟に誘導棒の明かりを向けると、そこにあったのは、奇妙に輝く半透明のゼリー状の丸い物体だった。ぽよん、と不気味に跳ねたかと思うと、その物体は意思を持つかのように、信雄に向かって勢いよく突進してきた。
「化け物……っ!」
信雄は叫び声を上げながら誘導棒をベルトに差し込み、代わりに腰の鉄パイプを抜き放つ。野球バットのように構え、全身の力をその一振りに乗せて、渾身の力で振り抜いた。
ブォン! 空気を切り裂く轟音。
ベシュッ!! 鈍い手応え。
スライムは悲鳴も上げず、光の粒子となって霧散した。
(ティロリロリン♪)
(スライムを討伐しました)
(経験値12を獲得。レベルがアップしました)
脳内に直接響く機械的な無機質な音声。信雄は霧散する光を見つめ、鉄パイプを握り直した。
名前:楠木 信雄
レベル:1→2
称号:マダオ
ジョブ:交通誘導員(仮)
体力:25→30
マナ:30→40
攻撃力:23→27+7
防御力:9→12
魔法攻撃力:15→20
魔法防御力:10→13
速さ:9→13
次のレベルまで:13
「レベルアップ……だと? 今の、魔物だったのか……!」
脳内に響いた無機質な通知音に驚愕しつつも、信雄は即座に戦慄を殺した。震える足に力を込め、暗闇の先へ進む。
数度にわたる魔物の強襲を紙一重で切り抜け、歩くこと30分。突如、前方に眩い光が差し込んだ。
「なんだ、この灯りは……?」
眩しさに目を細めながら足を進めると、そこは先ほどの洞窟とは別世界だった。精巧に加工された石材が幾何学的な模様を描く通路。壁に埋め込まれた松明が幻想的な青い炎を揺らし、遺跡の内部を照らし出している。
「あの粗末な洞窟から、いきなりこんな立派な遺跡に……?」
呟きながら振り返った瞬間、信雄は息を飲んだ。
「嘘だろ……戻る道が、ない」
先ほどまで確実にあってはずの通路が、跡形もなく消え去っていた。壁は滑らかな一枚岩に変わり、出口を示す影も形もない。ただの閉ざされた空間だった。
(……落ち着け、信雄。冷静になれ。まずは、状況把握だ)
心臓の鼓動が早鐘を打つのを感じながら、深く、長い息を吐き出す。信雄はステータス画面を呼び出し、目の前に広がる冷徹な現実(数字)を見つめた。
名前:楠木 信雄
レベル:2→6
称号:マダオ
ジョブ:交通誘導員(仮)
体力:30→51
マナ:40→83
攻撃力:27→44
防御力:12→23
魔法攻撃力:20→43
魔法防御力:13→36
速さ:13→18
次のレベルまで:95
「身体の変化を感じる……この調子なら、かなりの成長を見込めるな」
と確信した瞬間、ぐ〜!という音がお腹から。
休憩を潰してここへ来たことを少し後悔するレベルの空腹感。
「さて、魔導ショップで飯でも探すか」
(パンパカパン!!)
「毎回この音は少し恥ずかしい……」
(レベル5到達。拡張可能です)
候補一覧を見て、食欲に任せて一つを選択した。
「間違いなく、業務スーパーモリタだ!」
震える指で空間に浮かぶウィンドウを操作し、信雄は確信を持ってその名を登録した。商品リストに目を通せば、現代の「最強の食材」たちがずらりと並んでいる。安堵と欲望が入り混じった笑みが、彼の顔に浮かぶ。
「これと、これと、あとは……これだ」
『アイテムはストレージに転送されました』
機械的な通知音が脳内に響き、目の前の空間が歪んだ。ついに手に入れた。
至高の補給物資たちを。
「さぁて、食うか!」
周囲に気配がないことを確認し、信雄は殺風景な地面に尻を下ろした。虚空から取り出したのは、溢れんばかりの揚げ物詰め合わせ、ずっしりとした重みを感じるお握り、そして冷えたお茶だ。
一つ、大ぶりの唐揚げを手に取り、大きく口を開けて喰らう。
――安っぽい、油の味。肉汁というより、人工的な旨味。
だが、それがいい。それが、俺の求めていた味なんだ。
「これだよ……これで良いんだよな」
がぶ、モグモグ、ぐびぐび。
揚げ物の油を特茶で流し込み、米の甘味を噛み締める。食事というより、これは乾いた魂への燃料注入だった。胃袋が急速に満たされていく。
「……にしても、このペースだと、コルンの消費が早すぎるか」
戦利品を見つめながら、信雄は現実的な問題に眉をひそめた。食後の糖分が脳に回ったその時、突然、頭の中に閃光のような天啓が降りてきた。
(そうだ、業務スーパーで買った物を魔導ショップに売ってみたらどうだろう?)
信雄は業務スーパーを開き砂糖と胡椒を1キロずつ購入した。
胡椒:300コルン
砂糖:260コルン
購入金額:560コルン
(これを魔導ショップに売る)
信雄は業務スーパーの画面を閉じ魔導ショップを開いた。
(物の指定で砂糖と胡椒を売却っと)
胡椒1㎏:1800000コルン
砂糖1㎏:700000コルン
買い取り金額:2500000コルン
「来たこれ!勝ち確定じゃん!!」
信雄は驚きのあまり鼻水垂らしながら金額を見て叫んだ。
残金:2517000コルン
信雄は小金持ちになったのと同時に頭を切り替えた。
(戦力を整えるか)
信雄は魔導ショップの武器の一覧から武器を指定し購入した。
品名:魔鋼鉄の剣
攻撃力:50
魔法攻撃力:85
金額:1250000コルン
「高い!!けど買いだ!!」
(品物はストレージに転送しました。)
アナウンスが鳴る
信雄はあまりの金額に怯みながらも次に魔導ショップの防具の一覧を開いた。
「防具はあまり動きを阻害しない物がいいな」
そんな事を一人ごちながら、信雄の目は一つの腕輪に目が行った。
品名:防護の腕輪
防御力:50
魔法防御力:50
金額:1000000コルン
「マジで高けー!けど買うしかない!!」
そんな事を言いながら信雄は購入した。
残金:267000コルン
いつもの通知のアナウンスを聞いてストレージから武器と防具を取り出し装備した。
名前:楠木 信雄
レベル:6
称号:マダオ
ジョブ:交通誘導員(仮)
体力:51
マナ:83
攻撃力:44+50
防御力:23+50
魔法攻撃力:43+85
魔法防御力:36+50
速さ:18
次のレベルまで:95
「ん?」
ステータスを見ていた信雄は気になる事に気が付いた。
(魔法攻撃力とあるが、魔法が使えるのだろうか?)
ふとそんな事を考え、魔導ショップの書物の一覧を見た。
そこには複数の属性の魔導書が並んでいた。
品名:魔導書 地、水、火、風
値段:各30000コルン
信雄は地、水、火、風の魔導書を購入した。
残金:147000コルン
「おっと、まずいまずい夢中で買い物してたら金が少なくなってきた」
(胡椒100キロ購入っと)
残金:117000コルン
業務スーパーを使った錬金術で次は胡椒100キロを魔導ショップに持ち込んだ
買い取り金額:180000000コルン
「相変わらずスゲー化けるな、まさか1億8000万も稼げるなんて」
信雄はウキウキでストレージから火の魔導書を取り出し中を見た。
「何だろう、頭に何か刻まれる」
(火の魔法を獲得しました)
その通知を聞くとステータスを確認する。
スキル
交通誘導Lv1 計算Lv4 社交Lv2 料理Lv4
new 火の魔法初級
「火の魔法が増えている、他の魔導書も読むか」
(地、水、風の魔法を獲得しました。)
交通誘導Lv1 計算Lv4 社交Lv2 料理Lv4
new 地の魔法初級 new 水の魔法初級 火の魔法初級 new 風の魔法初級
「一通り手に入れたな、いざというときの為に、一回使ってみるか」
信雄は目の前の壁に手をかざす。
(火の玉よ出ろ!!)
信雄が心で念じると野球ボールくらいの火の玉がかざした手から発射され石壁にぶつかり少し壁面が焦げているようだった。
少しの疲れを感じたのでステータスを開いて数値を確認した。
マナ:83/73
マナの量が10減っていた。
「まあ、飛び道具が手に入っただけでも御の字か」
信雄はそうごちると、風の流れる方の通路に足を進めるのだった。




