十八話 義務を果たすオッサンと迫る脅威
広子やJK達が暴走した日から2日後
信雄とJK達は、農作業を終わらせた後、庭に案山子を用意し、魔法を練習していた。
広子は家の中で昼食を作っている。
信雄とJK達は共同での農作業や魔法の練習等を通じ、始めて会った時が嘘の様に、打ち解けていた。
「いいかい?皆、まずはマナ切れを経験してみよう、腕を案山子に向けて、水鉄砲を止まるまで噴射するんだ、やってみて!」
「わかりました!」
「りょうかい!」
「うん、わかった!」
三人は案山子に手をかざし、魔法を発動すると、手から水道を全快にしたくらいの水が吹き出し、案山子に当たったが、少ししたら、三人の水は止まり、三人は膝を着いた。
「「「ぜぇーはぁーはぁー」」」
「頭が痛い!」
「怠い!」
「眩暈がする・・」
「それがマナ切れだ、しばらく、キツイぞ!」
「どのくらい続くんです?」
「30分くらいかな、君達のマナ量だと!」
「「そんな~!」」
三人は三者三様の状態で信雄を見て、話をしている。
そんな時、家の中から、広子が出てきた。
「お昼ですよ~!」
広子のその声に信雄とマナ切れの三人は、足を引き摺りながら家の中にはいる。
昼飯はカレーだった。
「匂いはしていたが、カレーか!」
「カレーなんて、久しぶりだ!」
「カレーだよ、カレー!」
「夢にまで見たカレーだよ!」
「はい、沢山作りました!おかわりもありますよ!」
「大変だったろ、ありがとうな!」
皆、思い思い喜ぶなか、信雄は広子の頭を撫でながら、お礼を言った。
若さだろうか、マナ切れでキツそうにしていた三人はカレーの登場に調子が戻っていた。
その後、トッピングの種類や飲み物でひと悶着あったのは言うまでもなかった。
皆で昼食を終えた後、皆に国司の館に、酒を納めに行ってくると言って、信雄は重力魔法と風の魔法の複合魔法を起動し、国司の館を目指し飛行する。
大体15分程飛んだ所で、聞いていた国府が見えた為、信雄は国府の少し手前で降下した。
そうして、陰陽服にストレージの服装切り替えで着替え、魔導ショップの業務スーパーで日本酒の樽酒72L入りを三樽と、板チョコレート10枚、塩鮭を5匹ストレージ内に用意した。
信雄は国司の館を目指し足を進め、しばらく歩いた後、国府に着いた。
それと、入口の門兵に聞いたところ出雲国の行政を司っている場所だと言っていたので、信雄は初めてここ周辺が、未来に島根県と呼ばれる場所だと知った。
信雄は門兵にストレージから出した、飴の入った小さな箱を、お礼を渡し、国府の敷居を跨ぎ、歩を進める。
国府の中を進むと、辺りに糞便の匂いが充満しており、死体や其を齧るネズミがちらほらいて、それらを捕まえて食べている物乞い達がいる、カオスな状態だった。
信雄は、絡まれない様に目を合わせず、国司の館を目指すと、立派な門構えの屋敷が有ったので門前の人に聞いたら国司の館との事だったので、信雄は門兵に自分が楠木信雄であることを伝え、取り次いでもらった。
しばらくしたら、前に信雄の家に来た、源長家の侍従が出てきて、一礼した後に、中に通された。
その際、侍従から長家が病で臥せっており、どんな医者の薬や陰陽師の祈祷でも効かず、発熱、怠さ、血の混じった下痢の症状が治まらず全身が萎びてきて死にそうになっていると、涙ながらに言ってきた。
信雄は約定が反故にされる事の阻止と、恩を売る為、長家に合わせてほしいと、思い侍従に話した。
「それは、大変な状況ですね、もし良ければ、長家様の容態を見せていただけませんか?自分はその症例と治療方法に心当たりがあります。」
「なんと!本当ですか?!是非お願いします!!長家様を助けて下さい!!」
信雄の言葉に希望が出たのか、侍従は泣きながら信雄の手を握り懇願してきた。
信雄は長家の部屋に通されると、部屋の臭いを誤魔化す為に、部屋全体に香木が焚かれており、その中の御簾の中に畳を、敷き布団にし、掻巻を掛け布団にして長家が寝ており、その周りを陰陽師がやったのだろう、しめ縄が囲んでいた。
信雄は部屋の入口で侍従に部屋に入って、長家の身体に触って良いか聞いた。
侍従は「お願いします!責任は自分が取ります!」と言い、漢を見せてきたので、信雄は頷き、部屋に入り、長家の近くに寄り、鑑定した。
名前:源 長家
称号:呑兵衛
ジョブ:国司
体力:25/11
マナ:10/1
状態:脱水症状 中度、赤痢 重度 八十禍津日神の眷属の影響
スキル
剣術Lv2 計算Lv3 儀礼Lv5
信雄は鑑定結果を見て、神聖魔法の浄化の力を展開し、屋敷全体に結界を張ると、柏手を打つ演技をしながら、神聖魔法で館内の不浄な物を消し飛ばし、長家の胸に手を当て、体内の病魔を先ほどと同じ要領で殲滅した。
その後、神聖魔法の力を浄化から治癒に変更し長家に掛けると、長家の目が開いた。
「の、信雄殿・・か?!どうしてここに?」
「私が長家様が心配で信雄殿を部屋に入れました!」
長家は、其を言った侍従を近くに寄らせ、手を握り「ありがとう、お前が私の侍従で良かった・・・」と言い、二人は美しい主従の関係を見せてきた。
その後、信雄は長家の鑑定を再度行った。
名前:源 長家
称号:呑兵衛
ジョブ:国司
体力:25/11
マナ:10/1
状態:脱水症状 中度
スキル
剣術Lv2 計算Lv3 儀礼Lv5
すると、赤痢の症状が消えており、少し脱水症状があるので、スポーツドリンクをコップに入れ渡した。
「信雄殿これは何ですか?」
「身体の水分を通常の水より簡単に補給出来る飲み物です」
「この少し白く濁っているものがですか?」
長家は少し躊躇したが、少し口に含むと、相当身体が水分を欲していたのだろう、三杯くらい一気に飲み干した。
「ずいぶん良い飲みぷりですね」
「信雄殿この水は甘くて、凄く飲みやすいですな!」
「砂糖と塩が少し混ぜてあり、身体の体液に近い成分になってます」
信雄が長家に中に入っている物を説明すると、狼狽気味に言ってきた。
「さ、砂糖ですか?!それは大層な物を頂きまして感謝いたします!御代はいかほどでしょうか?」
「いえいえ、今回に関しては要りませんよ、私が助けたかったからやったまでです、助かって何よりでした!」
「やはり、貴方は人格者だ!力を持ちながらも立場の弱い者に寄り添い、相手の立場に立って考え、尽くすことができ、それには驕りが見られない、私の眼には狂いは無かった!」
長家は信雄の高潔な振る舞いに、深く感銘を受けていた。
その後、信雄は用意していた、酒樽とおまけのチョコレートと塩鮭を納める事にした。
納める際、長家は終始、「受け取れません!」と言っていたが、受け取らせ、「約定は約定です!」信雄はそう言い納める。
此から、一年の税が完全に免責された瞬間だった。
納めた後、信雄は長家に納めた物品のチョコレートを指差し言った。
「ああそうそうこれは、冷暗所に保管し、早めに食べてください、悪くなるので!」
「それは、何ですか?」
信雄の話しに長家が聞いた。
「チョコレートと言います、甘く、滋養がかなりあり、夜も強くなるとか」
「なんと、誠ですか・・!」
喰い気味に聞いてくる長家に、信雄はストレージからチョコレートを一枚出し、包みを開いて中身の端を割り食べ、追加で更に割り、長家に差し出し言った。
「毒味をしました、毒は入ってませんよ!」
「では、一口!」
長家はチョコレートを口に放り込み咀嚼する。
「な、なんと深い甘さとコクだろうか?!それに、身体に力が漲る様だ!」
その後、信雄は長家に、チョコレート10枚を追加で卸す変わりに、複数の調度品と反物あと米10俵をせしめる事に成功した。
そうして、しばらく、長家の館で、最近の都の状況や都で流行している名品の話をして外が夕闇に支配され始め、そろそろ帰ろうとお暇を告げようとした時、外がざわざわと騒がしくなった。
ダダダダダ!
駆け足で長家の家来が部屋に入って来た。
「騒々しいぞ!如何した!」
「長家様に報告します!国府へ化け物の軍団が進軍中との事です!!」
「何!数はどのくらいだ?!」
「おおよそ、2000の大軍です!!」
「2000だと、国府の兵を全て集めても、250程だぞ!!」
そんな事を長家は叫ぶと、信雄や侍従達見て言った。
「一刻の猶予も無い、信雄殿逃げられよ、裏から早馬で逃げよ、その方らもだ、早く家族を連れて逃げよ!!」
長家のその言葉に、侍従が聞いた。
「長家様はどうされるのですか?!まさか!!」
「私は逃げる訳にはいかない、私は今まで、生まれの良さでここまで来た、自分で自覚できる程の無能だ、一人では何も出来ない、だからこそ、私は勤めを果たさないといけない、此処で逃げる訳にはいかないのだ!!」
その話を聞いた侍従や、兵達は泣きながら、鎧や武器を用意し始めた。
それを見た長家は、喚いた。
「何をしている!!早く逃げろ!!何をしているんだ!!!」
「「「我々も最後まで長家様と共に逝きます。」」」
「お前らは、本当に馬鹿だ!!本当の大馬鹿だ!!!逃げれば良かろうに!!」
そんな主従のやり取りを見た信雄は、長家が部下から心酔される理由を知り、お節介を焼くことにした。
「長家様、私も参戦致します、せっかく結んだ関係を終わらせたくありませんし、それに、陰陽師無しでどうやって化け物と戦うのですか?」
信雄が長家にそう言うと、長家はクシャリと顔を歪ませ泣きながら、返してきた。
「皆、大馬鹿だ!!信雄殿、感謝する!!お前らもありがとう!!」
長家は涙を拭くと、侍従達の助けで、鎧を纏い、兵達を集め大声で号令をかけた。
「皆のもの聴け、今現在この国府に軍勢が差し向けられた、相手は多くそして化け物だ!だが、我らの味方に天下無双の陰陽師、楠木信雄が付いている、勝算はある!!者共奮起し戦え!!出陣だ!!!」
「「「「えい、えい、おー!!!!えい、えい、おー!!!!」」」」
そんな、地鳴りの様な鬨の声を挙げ、今、国府防衛の戦が幕を開けようとしていた。
一方、信雄の家では、帰って来ない信雄を不安に思いながらも広子とJKの三人が夕食後の皿洗いをしていた。
つるりと信雄の皿が落下し割れる。
広子は不安で泣きそうになりながら割れた皿を片付け、JK三人も片付けを手伝い、広子を慰めていた。
「あの無茶苦茶に魔法が使えるおじさんが殺られるわけないよ!」
「そうそう!」
「広子ちゃん、信雄さんは私達の魔法の先生だ、引き際は間違わないさ!」
その三人の言葉に広子は頷き、涙を浮かべ言った。
「そうですよね、どうせ、少ししたら腹が減ったとか言って帰って来ますよね・・・」
広子はそう言った後、心の中で神に祈った。
(八百万の神よ、信雄さんを・・旦那様をお守り下さい!)




