十二話 腹が据わたオッサンは敵にしたくない
広子が帰った日の昼頃
信雄の家に来訪者があった。
来ていたのは深刻そうな顔をしている弥助と晴子と喜一郎そして浄泉だった。
信雄は四人を家に上げて、暖かい緑茶の玉露と茶菓子のどら焼を出した。
「どうぞ、お召し上がり下さい!」
信雄にそう言われ、四人は春とはいえ、まだ少し肌寒い事と、緊張で喉が渇いていたのか、茶に口をつける。
「旨い!」
「ホッとするわ~!」
「旨いな、これ何なんだ?」
「むっ!旨いな、前に本山で飲んだものとは比較にならないくらい旨い!」
「お茶のかなりいい物ですよ、お口に合ってなによりです。」
信雄は四人が茶菓子に手をつけないのを見て、何か厄介事かと思い身構え、聞いた。
「それで、今日は何の用だったのでしょうか?」
「「「っ!・・・」」」
弥助と晴子と喜一郎が急に本題を聞かれ言い澱んでいると、浄泉が話し始めた。
「信雄、いや、信雄殿、先ずは屋敷の落成と広子との婚約おめでとうございます!」
「はあ・・・、ありがとうございます。」
「鬼騒動の件や便所の件でもかなり私達の村は感謝している。」
「いえいえ、自分の良心に従い、当たり前の事をしたまでです。」
「その、当たり前の事がなかなか出来ないのがこの世です、ですが貴方は力を正しく使う心をもっている。」
「あまり、持ち上げないで下さい、恥ずかしいです。」
信雄と浄泉がその様な事を話していると、浄泉と今まで控えていた三人が佇まいを正し、土下座し、浄泉が話してくる。
「信雄殿!恥を忍んでお願いが御座います!!」
「やめて下さい!頭を上げてください!自分達はあの恐怖の夜を乗り越えた仲間なんですから!そんな事をしなくても、話を聞きますよ!」
「有難い」
そんな事を言い四人は頭を上げ、今回の経緯を説明し始めた。
「事の始まりは、国司からの要請で労役に行っていた若い奴が信雄殿の渡した酒を村の外に持ち出して米に替えようとしたらしい、その際、国司の部下に見つかり問い質され、信雄殿の話をだした。」
浄泉は、苦悶の表情で信雄の顔をしており、話を続けた。
「それで、どうやらその話が国司の耳に入り、国司自ら村に赴き信雄殿を見定めると言ってきおった!だから、信雄には国司の相手ををお願いしたいのだ!」
信雄はまさかそんな事になっていると思わず驚愕したが、努めて冷静に返答した。
「承知いたしました、自分が相手を致しましょう!」
信雄も姿勢を正し、四人の方を見てそう返答し、続ける。
「なんだ、そんな事ですか、自分を討伐する軍が組織されたのかと思いましたよ、ハハハ!」
そんな言葉を四人に返すと、四人はポカンとした表情をしたかと思うと、ホッとしたのか、お茶のおかわりを飲んで、どら焼を食べ笑顔で帰って行った。
その際、浄泉は、三日後に、来ると言っていた。
信雄は四人を見送った後、直ぐに現代に転移し、和風家具専門店で、縁が綺麗な漆で塗装された風神雷神の屏風と金箔が使われた御膳、雅な食器類、彫りの凄い座卓、野外用の雅な卓、雅な椅子、大きな深紅の敷物、笏を購入し、かなり高めの日本酒を樽で2樽程の購入し、その次の日に築地に行き新鮮な魚介を購入した。
それを、実家に戻り調理して、買った器に盛り数十人分の料理と盃を御膳に起き、ストレージに収納する。
その後、野菜の種を購入した道の駅に繰り出し桜の苗木を購入し、前と同じ要領でストレージにいれた。
その日は準備が終ると父と母と妹に挨拶し直ぐに、平安時代に戻り庭に桜を植え、魔導ショップから購入した植物用のポーションをぶっかけるとみるみるうちに、桜の木が大きくなり花の蕾が出てきた。
そうしていると、その日は夕方になり、信雄は眠った。
そして、国司が来る日になった。
信雄は陰陽服に身を包み、家の中の準備を整え玄関前で国司一行の到着を待った。
少し後、村の方から牛車が信雄の家の前で停車し、平安貴族風の男が降りてきた。
家来が源長家様の御成りだと言ってきた。
信雄は笏を両手に持ち、立って礼をし、言った。
「私は、楠木信雄と申します。」
「長家様の到着を待っておりました、どうぞ、御上がり下さい!」
信雄はそう言うと家の飾られた客間に一行を通す。
そこには、迫力のある屏風とふかふかの座布団と座卓がおいてあり、庭の桜の木が見える部屋だった。
信雄は上座に長家を座らせると言う。
「式神に言って、茶を用意させましょう!」
その後、手を叩き、ストレージから人数分の緑茶の玉露と雅な皿の上に置かれた、茶菓子を御膳に載せ出した。
「「「「なんじゃ!もののけか!!」」」」
「っ!・・・・」
長家以外の家来は、ここで刀を抜きそうになっていたため、諫めようとしたら、長家は家来達を諭す為の言葉を発した。
「ここを何処だと思っておるのだその方らは?私の名を汚す気か?!」
「「「「申し訳御座いません!」」」」
「信雄殿、すまぬな私の教育が足りないせいだ、申し訳ない」
そんな事を、言い、信雄に謝罪してきた。
信雄はその謝罪を受け取り、一行は茶を飲んでも大騒ぎした後、長家は更に力を見せろと言い、庭の桜を笏でさし、咲かせて見せてくれと言ってきた。
信雄は適当な呪文の後、風の魔法で南の暖かい風を呼び桜に当てた。
「なんと!・・・真の力を持った陰陽師であったのか?!」
そんな事を言う長家の目の前では、満開の桜が咲いていた。
その後、最初の堅苦しい雰囲気はなくなり、酒宴を桜の見える庭に大きな深紅の敷物と雅な卓と椅子を信雄が出し、行う事になった。
「さあ一杯どうぞ!」
「うむ!」
そんな事を言いながら長家と家来達は料理と酒をたらふく飲みべろんべろんになった状態で、信雄が長家を持ち上げまくると、信雄が整地した土地と家の保証と定期的に酒をくれるなら、信雄は無税で弥助達の村は、労役含め、現在の6公4民を2公8民でよいと言われ、了承したら、証文を渡された。
その後、べろんべろんに酔っ払った長家達一行は信雄から貰った酒を土産に国司の館に帰って行ったのだった。
「上手く行ったな、あんなにぐいぐい飲んだらまともな判断なんて出来る訳がない、誘導されているのにも気付かないとは、酒は飲んでも飲まれるな常識だろうに、フフフ、あはははは!」
信雄は証文を見て、そう言い、笑っていた。




