第2話「体育倉庫の密談」
第2話「体育倉庫の密談」
翌朝。体育館裏の倉庫。河越朝飛はまだ手首に縄の跡が残ったまま、草むしりを強制されていた。
隣では、運動場派閥の偵察任務を押しつけられていた磯辺梨子が、偵察という名目で監視をしていた。「行くわよ、変態。ちゃんと私を見失わないようにね」
「ちょっと待って! 俺は草むしり係だからここから移動したら怒られるって!」
梨子は呆れた顔でため息をつき、体育館の裏口へ向かおうとしたそのとき――
「待て、新入り」
体育館派閥の幹部・宮津間が現れた。
顔に傷、バスケ部らしい長身。
「お前、昨日の夜に、倉庫で女の声が聞こえたらしいが何か知ってるか?」
朝飛は一瞬で血の気が引いた。
(やばい、梨子が偵察として居たのがバレてる……!)
宮津間はニヤリと笑い、朝飛の襟首を掴む。
「体育館派閥の縄張りで、敵のスパイを匿うとはいい度胸だな。
……ま、楽しそうだ。お前たち二人とも、今夜“島流し”決定だ」
その夜。体育館と運動場のボスたちが顔を合わせる緊急会議。
運動場派閥ボス・崇角は冷たく告げた。
「新入りの女が高塙の命令を無視して逃げようとした。見せしめが必要だ」
閑前は頷き、プール派閥に連絡を入れる。
「更衣室監獄に二人ともぶち込んでくれ。……ああ、そいつらならちょうどいい“見せしめ”になる」
深夜。朝飛と梨子は後ろ手に縛られ、プールサイドへと連行された。
月明かりの下、更衣室監獄の扉が開く。
出迎えたのは、監視役・夙浦凛花だった。
「新入りさんたち、お帰りなさい♪」
監獄の奥。鉄格子越しに、関西弁の男・立神敦起が手を振った。
「おおきに! やっと新しい顔や!俺、立神敦起や。よろしくな!」
朝飛は思わず聞いた。
「ここ……どれくらい閉じ込められてるんですか?」
立神はサングラスを光らせて答えた。
「2年やで。無罪やのに“派閥に属さない”ってだけでな」
梨子が呟く。「……最低ね、この学校」
そのとき、監視役の凛花が小声で囁いた。
「ねえ、あなたたち……本気で言ってた?派閥争いを終わらせたいって」
朝飛は驚いて顔を上げた。梨子も目を見開く。
凛花は鍵を握りしめ、静かに続けた。
「私たちも……ずっと待ってた。誰かが、このクソみたいな伝統を壊してくれるのを」
立神が笑った。
「ほな決まりやな! 今夜、脱獄や!」
監獄の奥で、悟座(ござ/水分吸収能力者)と雨方(うがた/透明化能力者)が眠っている隙を狙って――
四人と二人の監視役は、静かに動き始めた。
梨子が朝飛に小声で言った。
「……あんた、意外と頼れるじゃない」
朝飛は照れながら答えた。
「俺……可愛い子のためなら、なんでもするよ」
梨子は「はぁ?」と顔を赤くしながら蹴りを入れた。
第2話 終
(次回、「更衣室監獄脱出作戦」)




