第16話「榊原豊埜“魔王モード”覚醒」
第16話「榊原豊埜“魔王モード”覚醒」
屋上 朝日が昇った直後に穴倉御行は倒れリタイア、神堂仲矢とシャーク=セイモンは能力を封じられ、戦意を喪失。
戦いは終わったかに見えた。
しかし――榊原豊埜が、突然、地面を叩いて立ち上がった。
「……まだよ」瞳が、真紅に燃えている。「まだ……終わらせない!!」
彼女の体から、これまでとは比べ物にならないほどの赤黒い波動が爆発的に溢れ出す。
屋上のコンクリートがひび割れ、空気が歪み、全員の心に直接、破壊衝動が叩き込まれる。梨子が頭を抱える。「なにこれ……水が出せない……!」
立神も膝をつく。「風が……俺を拒絶してる……!」
在滝涼葉が叫ぶ。「これは……能力じゃない!純粋な“狂気”の具現化”よ!!」
榊原豊埜 完全なる魔王モード覚醒。
彼女の声が、低く、重く、屋上全体に響き渡る。
「私は……ずっと我慢してた。この学校の腐ったルールも、裏切りだらけの人間関係も、 全部全部、壊したかった……!!」
赤い波動が実体化し、巨大な魔王の影が彼女の背後に浮かび上がる。
朝飛が、血を吐きながら立ち上がる。
「榊原……お前も、この学校の被害者なんだろ!?こんな力、望んで手に入れたわけじゃ――」
榊原が、涙を流しながら叫ぶ。「違う!!私は望んだのよ!!この力があれば、全部壊せるって思った!!でも……壊せば壊すほど、私自身が壊れていくだけだった……!!」
彼女が両手を掲げる。屋上全体が、真紅の炎に包まれる。
「だったら、いっそ全部燃やして終わりましょう!この学校も、君たちも、私も!!」
炎が、朝飛たちを襲う。全員が、焼け死ぬ寸前。その瞬間、誰かが、榊原の背後から、そっと抱きしめた。――穴倉御行ではなかった。梨子でも、朝飛でもない。
それは、放送室派閥の、もう一人のメンバーだった。片田泉実。
控え目の性格であまり自分の意見を出していなかった彼女が、涙を流しながら榊原を抱きしめていた。
「……豊埜ちゃん、ひとりじゃないよ」榊原の体が、びくりと震える。
「私……ずっと、豊埜ちゃんのこと見てた。魔王モードのときも、普通に笑ってるときも……全部、大好きだった」
泉実の声が、たった一言。「だから、もう壊さなくていいよ」
榊原の赤い瞳が、ゆっくりと、元の色に戻っていく。魔王の影が、音もなく崩れ落ちる。
「……泉実……?」彼女が、ぽろぽろと涙をこぼす。
「……私……ずっと、怖かっただけなの…… 誰にも本当の気持ち、言えなくて……」
泉実が、優しく背中を撫でる。「知ってるよ。だから、今ここにいる」
榊原豊埜が、完全に魔王モードを解除。
そして、屋上に膝をついた。「……ごめんなさい…… みんなを……傷つけて……」
朝飛が、ゆっくりと歩み寄り、彼女に手を差し伸べる。
「もう、誰も傷つけない。一緒に、新しい学校を、俺たちで作ろう」
榊原が、その手を取る。「……うん」
朝日が、完全に昇った。屋上に集まった全員が、
初めて、本当に、心から笑った。
そのとき、校内放送が鳴った。老人のかすれた声。
『河越朝飛……あなた方は……もう逃げられない。理科室の三人……在滝涼葉、宮河佳奈、玉木咲久は、すでに生徒指導室に監禁済みです。大人しく降伏しなさい。さもないと……三人とも、消されますよ』
全員が凍りついた。朝飛が立ち上がる。
「……次は、生徒指導室だ」「絶対に、みんなで帰る」
空き教室派閥は、初めて“欠けた”状態で、次の戦場へ向けて動き始めた。
第16話 終
(次回、第17話「生徒指導室救出編・開幕 監禁された仲間を奪還せよ!)




