第11話「偽りの宣戦布告」
第11話「偽りの宣戦布告」
放課後、校舎のスピーカーが一斉に鳴り響いた。
『こちら放送室より緊急放送です!運動場派閥および体育館派閥は、本日限りで実習教室棟の全文化系派閥に対し、全面戦争を宣言します!今夜20時、運動場にて決戦!
逃げた者は“島流し”! 従わない者は全員敵!』
校舎中が凍りついた。廊下を走る生徒たち。泣き叫ぶ新入生。
武器を抱えて集合する文化系派閥の面々。
空き教室派閥の本拠──旧3年X組の教室。全員がモニターを見つめていた。
画面には、運動場派閥ボス・崇角と体育館派閥ボス・閑前が、肩を並べて映っている。
崇角が冷酷に告げる。「文化系どもが調子に乗るのはここまでだ。今夜一晩で、全部潰してやる」
閑前が笑う。「逃げられると思うなよ。プールも放送室も、もう俺たちの味方だ」
映像が途切れる。梨子が舌打ち。「完全にハメられた……」
情報室の篠尾凛乃がモニターを叩いた。「これ、完全に捏造! 放送室が乗っ取られてる!」阿乗灯大が静かに言った。「予想通りだ。職員室は、運動系と文化系をぶつけて共倒れさせ、
勝ったほうを“暴徒”として全員処分するつもりだ」
朝飛が立ち上がる。「……だったら、俺たちが止めるしかない」
立神がサングラスを光らせた。「ほな、文化系連合と運動系連合、両方同時に相手するか!」在滝涼葉が試験管を回しながらニヤリ。「面白くなってきたわね」
校内放送が再び鳴る。『追加情報です!空き教室派閥は中立を宣言した偽善者です!
奴らも敵!見つけ次第即座に制圧してください!』
全員が顔を見合わせる。梨子が笑った。「……完全に孤立したわね」
朝飛は窓を開け、夕陽に染まる校庭を見下ろした。
運動場ではすでに、野球部、テニス部、サッカー部、ハンドボール部……
運動系生徒たちが武器を持って集結し始めている。
体育館のシャッターが開き、バスケ部、体操部、バレー部、バドミントン部が整列。対する文化系側も、和室の残党、美術室、技術室、情報室、理科室、家庭科室……
全員が武器を手に、校舎の窓から睨み合っている。
完全に二分された校庭。その中心に、朝飛たちは立っていた。梨子が水を発生させ、
立神が風を巻き上げ、実山真梨が爆弾を構え、伊勢姉妹が巫女の舞を舞い始める。
朝飛が大声で叫んだ。「聞いてくれ!!俺たちはどっちの味方でもない!!でも、こんな戦争を止めるためにここに立ってる!!」
運動場側の崇角が嘲笑う。「うるせぇ! お前らもまとめて潰す!!」
体育館側の閑前が吼える。「逃げる奴は一人も許さん!!」
その瞬間、校舎の屋上から、榊原豊埜の声が響いた。魔王モード全開の、狂気的な笑い声。「さあ、始めなさい。殺し合いなさい。全部、全部壊れればいい!!」
赤い光が校庭を染める。
榊原の能力──心の冷静さを奪い、凶暴化させる。運動系も文化系も、一瞬で理性が吹き飛んだ。
「うおおおおお!!」「死ねぇぇぇ!!」
双方が一斉に突撃開始。まさに地獄絵図。
だが、朝飛は叫んだ。「今だ!!」
空き教室派閥、全員が一斉に動いた。梨子の水の壁で衝突を阻止。
立神の風で両軍を引き離す。実山の爆弾で地面を爆破し、強制的に分断。
在滝涼葉が投げた薬剤で、凶暴化を一時的に抑制。
朝飛が、再び叫ぶ。「俺たちは戦わない!!お前たちを止めるために戦う!!」
その声に、最初に反応したのは、元プール派閥の夙浦凛花だった。
そして、立神敦起。「俺たちも……もううんざりや!!」
続いて、美術室、技術室、情報室、理科室、家庭科室……
文化系の全員が、武器を下ろし始めた。運動系の中にも、「もう……やりたくねぇ……」と呟く者が現れる。だが、崇角と閑前はまだ狂気に支配されていた。「裏切り者は殺す!!」そのとき、阿乗灯大が静かに歩み出た。「……まあまあ落ち着いて。もう、終わりだよ」
彼がポケットから取り出したのは、榊原豊埜の“冷静さ”を封じる特殊な薬。
在滝涼葉が作った最終兵器。
屋上の榊原が、突然体を震わせる。「な……なに……?」
能力が解除され、校庭の凶暴化が一気に収束。全員が我に返る。
朝飛が、最後に叫んだ。「もう誰も戦わせない!!俺たちが、新しいルールを作る!!」
校庭に、静寂が戻った。誰もが、初めて、自分の意志で武器を置いた。
第11話 終
(次回、第12話「運動場と体育館の同時崩壊」 最後の決戦、そして最大の裏切りが明らかに――)




