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第1話 自己犠牲を否定したい

 ―――戦いは終わった。

 泥まみれの鎧を纏った巨体が、膝を突いて空を仰ぐ。

 胸に深々と突き刺さっているのは、黄金の輝きを放つ聖剣レーヴァ=ルクス。あの子が託してくれた、世界を救う鍵の力。


「……やったぞ、リーネ」


 傷だらけの少年が、息も絶え絶えになりながら振り返る。


「……はい」


 砂と泥に塗れたこの広大な世界の果てで、たった二人の生き残りが笑顔を交わす。


 物語の主人公―――名もなき英雄と。

 メインヒロイン、剣の聖女―――リーネフォルテ。


 少年が意識を失い、砂の山の中に沈む。

 視界が白んで、リーネフォルテの声が遠ざかっていく。


 暗転した世界に、文字が浮かんだ。



『剣亡き夜明けのフォストリエ』


     ◇


「おわったぁぁぁぁぁぁぁぁ! エンドA終わり!! 強かったなぁ、あのラスボス。深淵の王!!」


 世界の創造者であるそうそうたる面子の名前がズラリと並ぶスタッフロールを見届けて、あたしはコントローラーを握ったまま、大きく伸びをした。


「いやもう、鬱ゲーかよってレベルで人が死ぬじゃん。最後の生き残り、主人公とリーネだけだし」


 瞼に浮かんだ涙をパーカーの袖で拭いながら、ズレた眼鏡をかけ直す。


 真っ白だった視界が開けて、街の景色が戻ってくる。

 主人公の背中が映り、コントローラーがブブッと震えた。


「さてと、ちょっと試してみたいスキル構成思いついたんだよね。早速リーネを魔改造っと……あれ?」


 おかしい。レベルカンストまで育てたはずのリーネフォルテが、パーティーメンバーから外れている。


「編成リセットされてんのかな。ったく、なんでこんなところは気が利かないのかなぁ」


 UIを操作して、パーティーの編成の画面を開く。

 十数体の登場キャラクターが、画面の左端に一覧としてズラッと並ぶ。

 でもそこに、リーネのアイコンがない。


「……え」


 嫌な予感がして、キャラクター一覧を開いた。

 ……いない。いつも、主人公の隣にいるから、十字ボタン一回押すだけでよかったのに、主人公の隣は違うキャラになっていた。


「ちょっと待って、なにこれ、どういうこと?」


 カーソルがアイテムボックスを叩く。

 ない……ない……ない……!

 リーネの専用装備、聖剣レーヴァ=ルクスがどこにもない!!


「なんで!? え、捨てた? 周回持ち込み禁止!? でもあたしまだ周回はしてないよ!!」


 武器一覧―――ない。

 防具一覧―――ここにあったらバグだ。

 消費アイテム一覧―――あるわけないだろ!

 大切なもの―――入ってたら、よかったのに。


「そうだ、シナリオ序盤でリーネに貰った誓いの指輪っ!!」


 子供時代に主人公が貰い受ける守り人の指輪―――は、ある。

 ボタンを押せば、フレーバーテキストが表示される。


     ◇


 剣の聖女■■■■■■■が、唯一信頼する守り人へ贈った指輪。

 守り人とは剣の聖女の護衛であり、そして同時に、共に救世の旅を成す仲間である。


 装備することで、HP、MP、スタミナが一定量増加する。


     ◇


「……おかしくない?」


 何故か、その名前が消えていた。

 リーネフォルテという、彼女の名前が。



 剣亡き夜明けのフォストリエ―――というゲームがあった。

 崩壊しかけた世界「フォストリエ」を舞台に、世界を覆う脅威「深淵の波」と、それに対抗する「剣の聖女」リーネフォルテらをはじめとした、多くの英雄たちの戦いを描いた、オープンワールドアクションRPG。


 重厚で残酷、それでもその中に確かな美しさを抱えた壮大な世界観。

 マップの果てから果て、全てを探索可能なオープンワールド。

 アニメ調の美麗グラフィックを活かした、自由度の高いキャラクリエイト。

 イージーからベリーハードまで、四つの難易度を選択可能で、コアゲーマーからアクション苦手なライト層まで幅広くカバーしたバランス設定。


 主にその四つの要素が開発元の日本で話題となって、ゲームとしての完成度の高さがじわりと世界に広がって初週の売り上げ二十万本を記録した、人気ゲーム。


(まぁ、ほぼwikiの丸写しなんだけど)


 あたしはそのゲームのヒロイン、リーネフォルテが大好きだった!


 いやもう大好きなんて安易な言葉で片付けていい存在じゃない。

 最推し、生きる指標、文字通り人生を捧げた相手!!


 発売前からビジュアルに一目惚れし、公式サイトのキャラ設定でガチ惚れして、情報公開時からかれこれ百枚? 二百枚近くファンアートを描いてはSNSに投稿を繰り返してようやく迎えた発売日。


 もちろん、発売日に買って爆速でプレイした。

 有給使って寝る間も惜しんでプレイしましたよそりゃ! だって楽しみで仕方がなかったんだから!!


 感想? うん、まぁ、うん……クソ、ではなかったよ。うん、ボロボロに泣いたし。


 あたしには、唯一許せないことがあったのです。

 リーネフォルテは、このゲームに存在する全てのエンディングで消滅する。


 世界が平和になって、エンディングを迎え、スタッフロールが終わって操作可能になった途端、パーティーメンバーからいつの間にかいなくなっている。


 それだけじゃなかった。

 リーネに装備させていたアイテムはいつの間にかインベントリに戻っていて、アーカイブを開いても、リーネフォルテのデータがあった箇所は「NO DATA」で埋め尽くされている。

 NPCたちのセリフからも、フレーバーテキストからも。


 世界のありとあらゆる場所から……リーネフォルテの名前は消えていた。


 基本エンディング三つ。

 内容こそ大きく異なっているけれど、物語の最後に世界が創り直されて、平和な未来がやってくることは共通している。

 その全てで例外なく、リーネフォルテはいつの間にか消えていた。


 マップ上に存在する全ての街を、隅々まで探した。

 もしかしたらフィールドにいるんじゃないかって、エネミーを狩りながらくまなく探索した。

 それなのに……二周目を始めない限り、リーネフォルテの姿はどこにもなかった。


 そんなことない。きっとあの子が幸せになる未来があるんだってやり込んだ。


 全編通してノーダメクリアの鬼畜条件かな。

 そう思って、全てのエネミーの行動を把握して、「一度だけ攻撃無効」系の魔法も併用しながら、一周を駆け抜けた。


 だめだった……リーネフォルテは消えていた。


 最後の希望は―――トゥルーエンド。

 突入条件はわかっていた。でも、基本エンディングに希望があるかもしれなかったから、トゥルーエンドを見るのは控えていた。


 正直……予想はできていたんだ。

 トゥルーエンドを最後まで駆け抜けた。

 超狂暴化したラスボスを倒して、エンディング。


 基本三つのエンディングでは、主人公が気絶しちゃって、いつの間にか世界が元通りになっている。

 でも今回は違った。

 主人公は気を失うことなく、世界が平和になる過程を知った。

 そこに、リーネフォルテが何故消滅したのか、その答えが隠されていた。


 基本エンド三つで、世界は平和になる。それは嘘だ。

 世界は滅ぶ。人類は滅亡する。それは決して変えることのできない未来。

 ラスボスを倒したからって、世界が元通りになるなんてことはない。


 じゃあどうして、世界は平和になったの?

 リーネフォルテがその身を捧げていたからだ。

 彼女は自身の存在と記憶を代償に、崩壊した世界を再構築していた。


「……は?」


 その事実を知って数日、ありとあらゆるやる気が消え失せてた。

 SNS更新も「ついに来た発売日! クリアまで駆け抜けるぞ~!!」で止まってて、更新する気力もない、ご飯も食べたくない、もうだるい、ねむい、何もしたくない。

 あ、なんか、目の前にリーネが見える。


 笑ってた。

 世界のために自分を捧げた、あの時と同じように。


 こうしてあたしの意識は、プツンと途切れたのだった。



     ◇



 たぶん、栄養失調とかそういう方向での衰弱死。ずっと放心状態だったから。

 死に方がアホらしい? うるせぇ、あたしの最推しは死ぬどころか世界から忘れられてんだぞ。


 とまぁ、そんな嘆きはさておき、聞いてしまったら親戚やめたくなるくらいには間抜けな死に方をしてしまったこのあたし、木島夏音きじまかのんなんですが―――


 ここ、どこですか?


 目の前に広がってんのは神殿なんだよね、どこかの。

 石造りだけど、少なくともあたしの知識フォルダを参照する限りは、こんなつくりの神殿は地球には存在しないと思うんだ。

 いやまぁ、一般オタク女子であるあたしの知識がゴミなのは置いといて、そもそもここが地球じゃないなって一個だけ確信できるのが、現在進行形であたしの視界に映ってまして。


「……ここ、スタート地点じゃん」


 ふわふわと浮かぶ正十六面体のクリスタル。

 ゲーム開始時、主人公が謎の神託と一緒に召喚される「果ての祭壇」

 初見プレイ時は「ここから物語が、あたしのリーネとの冒険がはじまるんだ!」とウッキウキになってくまなく探索していたあの場所が、目の前にあった。


 で、見知らぬ世界に飛ばされて、普通はここ、取り乱すべきだと思うんだけど。


「なるほど、異世界召喚―――いや転生か」


 手を握ってみる。

 前よりも明らかに小さいし、細い。肌もガサガサしてない、え、なにこれすっごいすべすべなんですけど、子供の柔肌ってやつ?


 うん、やっぱり、どう考えても木島夏音の身体じゃないね。


 そう、あたしは訓練されたオタクなので、この状況をすんなり納得できちゃった。


 元々、現実世界に未練なんてなかったし。

 コミュ障だから人間社会で生きるのが毎日苦痛でしかなかったし。

 唯一の心の拠り所であるリーネもあたしが最も望まない最悪な消え方をしちゃったわけだし。


 だからまぁ、なんというか、あれだ。

 もしここがフォストリエなら、あたしのやるべきことはあの子が命を賭して救ったこの世界を全力で生き抜くこと。


 ……いーや、違うな。


 まずはここにいるかもしれないリーネを探す。話はそれからだ。


 心機一転、ここから異世界生活、頑張っていこう!!



     ◇



 ゲームなら、操作説明がてら軽い戦闘が挟まって、世界観をバシッと説明してくれるイベントが果ての祭壇で起きるんだけど……どういうわけか、あたしの身にはなーんも起きなかった。


 当然のように、あたしを召喚した神様が「こうするのじゃ」と導いてくれるわけもなくて。


 もちろん、人の気配のしない神殿を一通り歩き回ってもみた。何も起きなかったけど。


 で、仕方なく徒歩で、リーネを探して街にやってきたんだけど。


 西洋風の建築様式と、違和感しかない機械兵たち。

 空中を飛び交う妖精と、綺麗な街並み

 すごい、見覚えのある景色しか広がってない!


 はじまりの街にしてラストダンジョン直前エリア、妖精の国クレストリア。

 これから世界を覆うことになる「深淵の波」に最初に滅ぼされる国であり、主人公とリーネの故郷。


 リーネはここで、創世の聖剣レーヴァ=ルクスの担い手「剣の聖女」として選ばれて、世界を救う旅に出るんだ!


 ここで、あたしに電流が走った。

 天啓が降りた、と言ってもいいのかもしれない。


 もしかしてあたし、これからこの国に起きること全部知ってるし、その気になれば事前に阻止できるのでは?


 何なら、リーネが犠牲にならない未来、あたしならつくれるのでは!?


「こうしちゃいられない。今すぐリーネのもとに───」

「どこに行こうと言うのですか、カノン?」


 リーネが待つ王城に向けて駆け出そうとしたあたしの首根っこを引っ掴んで、すらっとした細身の、メガネが特徴的な糸目の男がそこに立っていた。


 あたしはこの男の名前を知っている。


 オルクス・ユークラフト。

 リーネが頻繁に通っていた孤児院『灯火の家』の院長。

 ゲーム序盤、チュートリアルボス「断界機ソルファリオ」の暴走事故で死んだ───と思わせておいて、汚染されて再登場する、実質的なラスボスの男。

 今は汚染前だから、多分普通の好青年なんだろうけど。


 改めて見ると、糸目に眼鏡にオールバックとか、ビジュだけで怪しさ満点だな。


 もちろん、あたしはプレイ当時、「こいつ絶対裏切る!」と確信していた。

 裏切りとは、ちょっと違う形での再登場だったけど。


 てかあれ、もしかして今、あたしの名前呼んだ?


「カノン。カノン・フィリア。聞いていますか?」


 頭のどこかがチクリと痛む。そう、あたしの名前はカノン・フィリアだと、何故か確信できてしまった。


「あっ、はい、聞いてます!」

「リーネフォルテ様がお探しでしたよ。さぁ、こちらへ」


 オルクスは丁寧な口調であたしの手を取り、孤児院に連れ帰っていく。

 リーネを探さなきゃって思ってたけど、気付いたらリーネがあたしを探してました。

 神様、あたしは一体、前世でどれだけ目に見えない善行を積んでしまったのでしょうか?



 オルクスに手を引かれて街を歩いている最中、ふと建物のガラスに、あたしの姿が映ったのが見えた。


 毛先にかけて赤くグラデーションのかかった桃色の短髪。

 くりくりした丸く大きな空色の瞳。

 十三歳くらいかな、と思われる、小さく華奢な身体。


 間違いない。どう見たって美少女だ。木島夏音の身体じゃない!


 あたし、最高の美少女に転生してる!


 あ、いや、違う。一番はリーネフォルテね。


 だから、あたしが思う最高から二番目の美少女に転生してる!!

 と浮かれていても、ちゃっかり孤児院まで引きずられて連行されたわけ。


 ズキリと頭が痛んで、何故だかすっと情報がインストールされる。

 あたし、カノン・フィリアはこの孤児院で暮らす人間らしい。


 中庭に足を運ぶと、そこに女神が待ってた。

 そう、女神。あたしの生きる希望。


 リーネフォルテ・エル・クレストリア。


 白くて長い髪を風に揺らしながら空を見上げていたリーネは、あたしを見つけると笑顔でこちらに手を振ってくる。


 これ、本当に現実でいいんですか?


「こんにちは、カノン。今日はなんだか遅かったですね。どこに行ってたんですか?」


 精巧に作られた銀鈴のような声が、あたしの名前を確かに呼んだ。


 心臓が脈打つ、思考がうまくまとまらない。

 え、これってもしかして、恋?


 そりゃ恋はしてるよ、ガチ恋だからね。むしろこの気持ちは、まさしく愛だから。


「あ、えっと、こ、こんにちは、リーネフォルテ、様……」


 リーネの反応からして、あたし───カノンと彼女は仲が良いみたいなんですけど、コミュ障オタクのあたしには、最推しとの会話なんて無理難題なわけで。

 あたしは見事に、声を詰まらせて引きつった笑みを浮かべていた。

 何やってんだおい。


 そんなあたしを前にすれば、そりゃ疑問は湧くわけで、リーネは首を傾げて、その琥珀の瞳であたしを見てきた。


「どうしたのですか、カノン。いつものようにリーネと呼んでください」


 なるほど、リーネ呼びを許している間柄なのか、カノン・フィリア。


 ゲーム通りなら、彼女がリーネ呼びを許すのは本当に信頼できる相手だけ。

 つまりあたしは、リーネの信頼度ピラミッドの頂点にいるわけですよ!


 あー、最高、その事実だけでご飯三杯は食える。


「もう、カノン、聞いていますか?」

「あっ、はい」


 あたしを妄想から現実に引き戻したのは、両の頬に触れるリーネの小さな手だった。


 細いな、小さいな、肌めっちゃ綺麗だ。でもぷにぷにしてる、子供の手って感じがする。


 てか顔近い、うわすっごいいい匂いする、これがクレストリアの王族スメルってやつなのか。あたしの知識が終わってるせいでこれを形容する言葉が見つかんない。


「カノン。今日は、あなたにお別れを伝えにきたんです」

「へっ?」


 今、なんて言った?

 お別れ……って言ったよね、確かに。おかわりじゃないもんね。


「あ、あの、どうして、お別れ……あたし、何か、リーネの気に障るようなこと……した?」

「いいえ。前も伝えたはずです。『選定の儀』が近付いていると」


 その言葉を聞いて、あたしはハッとする。


 選定の儀───クレストリアの王女が成人を迎える際に行う、聖剣の継承イベント。

 継承といっても、誰かから受け継ぐとかじゃなくて。

 クレストリア都市郊外の泉の神殿に安置された剣を、鞘から引き抜くだけの儀式。


 抜けなかったら、妖精王の伴侶として捧げられちゃう。


 伝承じゃ、その剣が抜き放たれる時世界に脅威が訪れて、クレストリアの王女は『剣の聖女』として、世を導き、背負う運命にあるんだってさ。


 ……いやその『背負う運命』を押しつけられたのが、他でもないリーネなんだけど。


 そしてリーネのおかげで、今日がいつなのかだいたいわかった。

 光暦3113年。

 隅から隅までマップを探索し、あらゆるフレーバーテキストをかき集め、アーカイブを全部埋めるかつほぼ全てを記憶したあたしには、心当たりしかない年号だ。


 リーネフォルテの成人の年。


 彼女が、創世の聖剣レーヴァ=ルクスを引き抜き、世界のために犠牲となる、そんな最悪な運命が確定してしまった年。


「リーネ、選定の儀って、いつ?」


 焦燥に駆られたあたしに、リーネはそっと微笑みこう言った。


「明日です。結果がどうであれ、失敗すれば私はこうしてお忍びであなたと会うこともできなくなるでしょう。ですから―――カノン?」


 真剣に友達に別れを告げようとしているリーネの前で、あたしは頭を抱えて蹲る。


 なんてこった……最悪で、最高の日じゃないか。

 一度見た明日を、書き換える最高のチャンス到来っ!!


 明日、リーネは聖剣を引き抜いて世界の英雄となる運命を歩む。

 そしてあたしは、その未来を全て知っている転生者。


 もうそういうことでしょ、神様。そうってことにしちゃうからね。


「任せて、リーネ!」


 よく距離感を間違えて他人からドン引きされていた勢いで、あたしはリーネの両手を握った。

 驚きで琥珀の瞳が見開かれて、真っ直ぐにあたしを見る。


 あ、すっご、リーネの目に反射するあたし、超キマッた顔してるじゃん。

 でもやっぱ、カノンの顔も可愛いなぁ。


 あたしは一つ息を吐き、高らかにこう宣言した。


「その運命、あたしが全部ぶっ壊してあげるッ!!」


 社会人中二病オタク女子、木島夏音―――転生して、カノン・フィリア。

 推しが世界のために犠牲にならない未来をつくる。

 これはそのために、人生を捧げたあたしの物語。


 大丈夫だよ、リーネ。

 あなたが犠牲になる必要なんてない。

 そんな世界も、脚本も―――全部あたしが、ぶっ壊してあげるから!!

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