表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/79

第六十話 『禁忌の再生』

 途方もない悲しみに感情を爆ぜるミネカ。

 しかし、高まっていくのは感情だけではなかった。


 圧倒的な『力』。


 「――――なんだ……!? ……この『魔力』は……!! ……あの子が出しているのか……!? ……世界が揺れているようなこの感覚……」


 「……坊ちゃん……こいつは……こいつは……まるで……!!!」


 言葉の続きを飲み込むデゼスポ。

 ロジェも同じことを思っていただろう。

 彼もまた、それを口に出すことを恐れた。


 『神のようだ』


 そう言おうとした。

 

 ロジェとデゼスポ。

 彼らにとって、もっとも強大な魔力を持っているのは『魔王』という認識だった。

 魔王以上の力を彼らは知らない。


 それ以上の力をあえて言葉で表すとすれば、『神』しかない。

 

 つまり彼らは、数十年の戦いで体験したことのある中で、もっとも強い力。

 世界を轟かすような力を、死に掛けの少女から感じたのだった。


 「……こいつはまずいですよ、坊ちゃん!!! この空気は普通じゃあねえ!!! 早く、早くあの女を殺さねえと!!!!」


 「……いや、今彼女を攻撃するのはかえってまずいかもしれない。あの力をまともに受けたら、いくら僕たちでもどうなるか分からない。……それに、これから何が起きるのか、僕はとっても興味をひかれているよ……」


 「…………分かりやしたよ……」


 冷や汗をかきながらも、この場から離れないことを決めるロジェ。

 長年ロジェと共にしてきたデゼスポは、彼の意思に絶対服従だ。

 

 二体の魔物が見つめる中、次第に強まる魔力のオーラは、空気の壁のような目に見えるほどのものとなり、ミネカとその周りを包み始めた。

 

 その異様な状況が続くこと―――― 一分。


 「……ようやく黙りやがったか……随分、奇妙なことしてくれるじゃあねえか……」


 「……だが、あの強大な魔力はまだ残っている……おそらく、あそこに……」


 ミネカは叫び疲れたのか、己の使命を果たしたのか、こと切れたように頭から倒れた。

 しかし、ロジェの言うように普通じゃない気配は消えていない。

 

 まだ、何かが起ころうとしている。


 「……坊ちゃん、あいつの近く、なんか変じゃないですかい……? あそこだけ、空気が歪んでいるように見える……」


 「……ああ……目が回りそうだ。見ているだけで、気持ち悪くなってくる……」


 どんどんその歪みが強くなっていく。

 もはや恐怖を感じるほどに。


 そしてとうとう、景色を確認できないほどの歪みとなった。

 

 ミネカのすぐ近くだけが、他の場所から遮断されているようだ。

 二人とも一歩も動けないまま、さらに一分近く経過した。


 「魔力が完全に消えた……妙な感じだった……一体何が起こったんだ……」


 「……見なよ、デゼスポ。あそこに何かある……!!」


 やがて歪みは消え始め、元の景色に戻っていく。

 そこには、彼らの信じられない光景があった。


 「な、なんだと……!! な、なんで、てめえがそこにいやがる!? 確かに、死んだはずだろうが!!!」


 「まさか……どうして君が………」


 ロジェは自身の目を疑い始める。

 その最期を目の当たりしたのだ。


 デゼスポも信じられないといった様子だ。

 自身の手で、確かに爆殺したのだから。

 


 「――――な、何が……何が起きたんだ…………俺は確か…………」


 突如、二体の魔物の目の前に立った青年が口を開いた。

 

 デゼスポの魔能によって黒焦げになっていたその姿は、まるで戦いが始まる前のようにきれいに戻っている。


 ショウエイ・キスギ。

 殺されたはずの男が、そこにはいた。


 だが彼はまだ、自分の状況を飲み込めていない。

 動揺しているのは、二人の魔物も同様だ。


 「…………そうだ、ロジェに負けて……ぶっ壊れた鍵を渡して………」


 そこからのことは、何も覚えていなかった。

 当然と言えば当然だ、鍵を渡した直後に、翔英は死んだのだから。

 しかし、肉体の方は、記憶以前の状態に戻っている。

 翔英本人を含めて、ここにいる誰もが驚きを隠せない。


 その光景に頭を痛めるデゼスポを他所に、『ロジェは』現状について考察する。


 ショウエイ・キスギの復活。

 その原因は間違いなく『この女』だと。


 普通ならばありえない。

 死者を復活させる力など聞いたことがない。

 そんな力が実在しているのならば、長年前線で戦い続けてきた自分の耳には入っているはずだ、


 だが、実際に『起きている』

 

 先刻、彼女が見せていた恐怖すら感じるほどの力を考えてみれば、頷くこともできる。


 あの圧倒的な力の向かった先は、ショウエイだったのだ。

 

 ――――ロジェは笑った。

 二度と話せないと思っていた男が再び立ち上がったこと。

 常識外れの力を目の当たりにできたこと。

 そして――――ミネカ・ベルギアに対して。


 ミネカ・ベルギアという人間。

 彼女の力は、これから先の戦いに大きく関係するだろう。

 

 ――――ロジェは決めた。


 魔王を越える力への興味は深い。

 その力をもっと知りたい。

 

 ロジェは、ミネカを捕らえることにする。


 ミネカを野放しにすること。

 それは避けねばならないと、先程の力と現象を目の当たりにしたロジェは確信した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ