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第四十五話 『答え合わせ』

 翔英は欲していた――――新しい力を。

 

 それには、強い思いが必要だった。

 みんなを『護る』という強い思いが。

 

 その思いが、戦いの中で力を呼び起こしたのだ。

 

 「――――やった……のか。この盾……うん、成功だ」


 静かに喜びを滲ませる翔英。


 しかし、まだ戦いは終わっていない。

 彼は盾を手に取ると、敵の攻撃に備えた。


 「……やりましたね、ショウエイさん……!!」

 

 「おう。ありがとう、ソル」


 武器が一つ増えたことで、翔英は自信にあふれていた。

 あの盾は、敵の攻撃を完璧に防いでいたのだ。

 これで、反撃の芽が翔英の目に見えた。


 「グアアアァっ!!」


 襲い掛かる怪物。

 翔英は盾を構え、敵の攻撃に備える。


 弾く、弾く。

 繰り出す拳を遮断し、完全にガードに成功する。


 「……少しだけ、お前に感謝しなきゃな。お前のおかげで、俺はこの盾を完成させることができた。……だけど、倒させてもらうぜ。二人を傷つけたからな」


 ここぞとばかりに強気な台詞を並べながら、再び盾を剣に戻す翔英。

 戻すのに少し手間取ってしまうが、怪物はなぜかそれを見守ってくれた。


 そして、分かったことがある。

 

 弱点はおそらく右半身部分だ。 

 左部分は剣で斬りつけても大したダメージにはならなかったが、右部分は盾で弾いただけで怯んでいた。


 剣を構える翔英。

 今ならやれる気がする。

 そう感じながら、怪物に向かって行った。


 「…………!! ……え……!?」


 だが、怪物は嬉しそうにニンマリと笑うと、猛スピードで引き返していった。

 

 一瞬で扉をくぐり、修練場を後にする怪物。

 予想だにしなかった出来事に、あんぐりと口を開く翔英。


 「…………な、なに? 帰ったの……? あんなに俺が倒す流れだったのに、帰宅したの……? …………でも、一件落着ってことなのか……? ……まさか、俺に負けると悟って…………いや、めっちゃ笑ってたけど……あいつ…………って、そうだ、ラフェル!! ソル!! 二人とも大丈夫か!!?」


 「うん」


 「えっ!!!?」


 後ろを振り返った翔英の前に、何事もなかったようにラフェルとソルが突っ立っていた。

 二人とも嬉しそうな笑顔を浮かべている。


 「いつの間に……! だ、大丈夫なのか、二人とも!?」


 「うん。全然大丈夫だよ。盾、完成してよかったね」


 「ああ、ありがとう。…………じゃなくて!! ……まあいいか、無事だったんなら、それで」


 激しく心配する翔英を他所に、あっけらかんとしているラフェル。

 ソルとラフェルは顔を合わせると、後ろの出口付近を振り向いた。


 「いやーよかったよかった、成功して。上手くいったみたいだね~」


 聞こえてくるダンディーな声。

 拍手をしながら、こちらに近づいてきる人影がある。


 オー・ラッセだ。

 突然用があると言い出し、この場を後にしていた男が帰ってきた。


 「あっ!! オーさんっ!! 無事だったのか!! っていうか、なんで今になって……めちゃくちゃ大変だったんだぞ、俺たち」


 当然、彼がいなくなって怪物がすぐに現れたこと、怪物がいなくなってオーがすぐに帰ってきたことに言及する翔英。


 「うん、知ってるよ。ずっと見てたからね」


 「えっ!? 見てた!?」


 オーの発言に衝撃が走る。

 そしてすぐに、翔英の目は疑念のものに変わった。


 「……どういうことですか……? 俺たちが襲われたのを見てたって……?」


 「さっきの鬼はボクが呼んだからね」


 再び衝撃。

 ただし驚きは先の二倍だ。


 「あいつを……オーさんが……!? ……なんで……どういうことだよ……はっ……!」


 翔英は気づいた。

 確かにあの怪物は、オーが作り出す小鬼に少し似ている。

 少し動きが読めていたこと。色が分かれている右部分が弱点だったこと。

 言われてみれば、納得できる点が浮かんでくる。


 「…………じゃあ、あんたのせいだったのか。さっき起こったこと、全部」


 静かな怒りを滾らせる翔英。

 そして剣を目の前の男に向ける。


 「ち、違うよショウエイ!! オーさんはショウエイのために、あいつを呼んでくれたんだよ!!」


 「は……? なんだよ、俺のためにって。それになんでラフェルが……」


 翔英の怒りを鎮めるラフェル。

 身体を癒すため、みんなに回復魔法を掛けるソル。

 全く状況が飲み込めない、勘が悪すぎる翔英。


 オーたちは、そんな翔英に先の出来事について詳しく説明した。


 簡単に説明するとこうだ。

 

 先ほど現れた怪物は、翔英の力を呼び覚ますために、オーが送り込んだ。

 翔英との会話から、新たな武器を形作るには誰かを護りたいという強い思いが必要だと知ったオー。


 わざと翔英を追いこむために、オー自身は修練場からいきなり出ていき、あたかも襲撃されたかのように見せた。

 当然、オーに用事などはなかった。


 ソルとラフェルは最初からそのことを知っており、翔英のために一芝居打っていたのだ。


 「…………っ!!! なんじゃそりゃあ!!!!」


 翔英が叫ぶのも無理はないだろう。

 彼は本気で命の危機にあると思っていたのだから。

 まあ、自分のためにやったことなので、怒るに怒れないが。


 「…………分かるわけないぜ……あんな化物と二人がグルだったなんて…………それに、扉もぶっ壊して、こんな派手な登場するしよ……」


 「俺たちもさっきいきなり言われたんだ。最初に聞いた時はびっくりしたけどね」


 「……それにしてはずいぶん上手かったな。……まあ、成功したから文句は言いづらいけどよ。……ありがとう、ソル、ラフェル。それに……オーさんも」


 やり方はともかく、こんな短時間で目標が達成できるとは。

 その硬度も先の戦闘で確認済みだ。

 

 みんなの協力には感謝しかない。


 「でも何でソルは、俺に助けを呼びに行けって言ったんだ? あのまま俺が外に出てたら、無意味になっちゃうのに」


 「……ショウエイさんなら、助けに来てくれると思ったからです……」


 もしショウエイが戻って来なかったら、鬼が翔英の前に飛び出して来ただろう。

 しかし、ソルは自分の危機に戻ってくれると信じていた。

 

 『姉やミネカが言っていた』ような男ならば。 

 先の彼の行動により、ソルは二人の翔英に対する評価が本当だと分かった。


 「……そうなの……? そりゃ、ありがとう……」


 「…………と、ショウエイくん。もう一回、やって見せてくれないかい? 成果がどんなものか知りたいんだ」


 「ああはい、分かりました」


 翔英は手元の剣に力を込め、もう一度盾を描こうとする。


 すると、先の物とまったく同じ盾が現れる。


 しかし、翔英もオーも完全に満足はしていなかった。

 盾の質にではない。かかる時間だ。

 盾を作り出す前に、ざっと十秒はかかっている。


 「……その盾は強力な武器だ。僕の鬼くんの攻撃を止められるほどのね。だけど、実戦で使うには、ちょっと隙がありすぎるかな」


 「……はい、分かってます。とりあえず、第一の目標はクリアできたので、次は変形時間の短縮……!! 一瞬でできるように、頑張ります」


 「ふふ……ようし、その意気だ。……じゃあ、お昼休憩にしようか!! けっこういい時間だしね」


 ずっと気を張り詰めていたので気付かなかったが、時刻は正午を回っていた。

 このまま訓練を続けたい気持ちがあった翔英だが、ソルとラフェルに押され根負けし、食堂へと向かった。


 「――――そういえば、この扉どうするんすか? ぶっ壊れちまってますけど」


 出口に差し掛かったところで、足元に転がっている扉について尋ねる翔英。

 この登場の仕方が、一気に緊張感を強める要因となっていたので、破壊自体には意味があったと思っているが。


 「ああ、それね。後で直してもらうよ。多分今日中には直せるんじゃないかな」


 「そうなんすね。……でも、よく見ると綺麗に壊されてますね。ガコッと外したみたいに」


 「まあ、バラバラにしたりしたら怒られちゃうからね。僕には直せないし」


 「ショウエイ!! そんなところで止まっていないで、早く行こうよ!!」


 「おう、わかった!! 今行く!!」


 一行は食堂で昼食を済まし休憩を取ると、再び修練場での訓練を始めるのだった。

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