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第四十三話 『襲撃の時間』

 二日目。

 今日も午前中は小鬼との訓練から始まる。

 

 翔英は行動を移す際に強く意識することを志した。

 だが、そう簡単に慣れるようなものではなく、昨日と同じように苦戦を強いられる。

 そんな耐える時間もあっという間に終わり、それぞれの訓練へと取り掛かり始めた。


 翔英の現在の目標は戦闘で使えるカードを増やすこと。

 そのために、剣として使用している『これ』を他の物に変形できるようにしたいと考えている。


 とりあえずは、自身の弱点である防御のために盾を出そうとする。

 

 彼は記憶をたどる。

 初めてこの剣と出会ったころまで。

 

 あの時は、ひたすら願った。

 ミネカを護るための、戦う力を。


 そうなると、大事なのは何かを求める気持ちだろうか。 

 

 なら、今の翔英にもそれは十分にあるはずだ。

 『みんなを護りたい』という思いは。


 護りたいという思いは『盾』にぴったりだろう。

 そう確信した翔英は、心からの念を込め、首元の宝石に祈りを捧げる。


 「…………まだ、ダメだな、こりゃ」


 と、ため息と共に零す翔英。

 昨日のと比べれば多少マシになったものの、まだまだ自信を持って盾と言えるようなものではない。


 「お? ショウエイくん。ちょっとよくなったんじゃない? 昨日のよりもいい形してる。なにかコツが掴めたの?」


 様子を見ていたオーが後ろで手を組みながら近づいてくる。

 彼の仕事は部活動の顧問のように、メンバーのできを見ながらアドバイスを与えることだ。


 「オーさん。まあ、コツというか、剣の時はどんな感じだったかを思い出してただけですよ。それに、ちょっとよくなったって言っても、まだまだこんなものじゃ一撃で壊されてお終いですよ」


 「うん、まあそうだね」


 と、即答するオー。

 気休めなどは意味のないことはお互い分かっている。


 「で、どんな感じだったのか分かった? その剣が作れた時は」


 「はい。とにかく、願ったって感じです。あの時は……ミネカが魔物に殺されそうになってて、ミネカを助けたいってこいつに願ったら、剣になってた」


 「なるほどね。強い思いが力の源ってことか。となると、今のショウエイくんに足りないのは、その『思い』ってことかな?」


 一瞬、苦い顔をする翔英。

 実際、オーの言う通りなのだろうが、思いが足りないというのは受け入れがたいものだ。

 

 「……今の俺は、ミネカを、みんなを助けたいって、本気で思っています。……だから、足りないと言われても、これ以上なにを思えばいいのか……」


 「うん。君のその気持ちは嘘じゃないと分かっている。……とすると、まだ足りないのは…………………あっ、今何時だ!?」


 真剣に考えていた最中なのに、急に時間を気にしだすオー。

 いきなりすぎて、翔英も言葉を返すことができない。


 「……十一時十五分だ!! くーーー忘れてた!!」


 腕の時計を確認しながら、らしくない声を出す。

 あまりに突然の嘆きに、翔英も慌てる慌てる。


 「え、ど、どうしたんですか? なにかあったんですか?」


 「いや……!! ごめんね驚かせて。十一時に人と会う約束してたんだよ。ショウエイくんたちの調子を少し見たら、一旦三十分ぐらい抜けようと思っててね。とにかく、今から行ってくるから、頑張っててね。できるだけすぐに戻ってくるから。あ、ラフェルくんとソルちゃんにも言っとかないと」


 「え、あ、はい、分かりました……」


 翔英が言葉を挟む隙も無く、急いで修練場を出ていくオー。

 なんかいろいろ突っ込みたいところはあれど、また盾の製作に取り掛かり始める。

 

 「おーいショウエイ!! そっちの調子はどうだ!?」


 しばらくトライアンドエラーを繰り返していると、隣で修業していたラフェルに声を掛けられた。

 相変わらず元気いっぱいだ。


 「ラフェル。ちょっとだけ進歩したよ。ちょっとだけどな」


 翔英は手に持っていた盾をラフェルに見せる。

 並べて比べてばなんとか分かる程度だが、歩みを進めることはできている。


 「んー………ホントだ。やるじゃんショウエイ」


 「これじゃ、実戦で使えるようになるまでどれくらいかかるか分からないけどな。ラフェルはどんな感じ?」


 「うん。まだ駄目だね。威力の調整が難しくて、弾かれちゃう。ソルに協力してもらってるんだけどさ」


 後ろを指差すラフェル。

 指の先では、ソルが心配そうにこちらを見ている。


 「ソルに? じゃあ今、二人で一緒にやってるってこと?」


 「そ。おーいソル!! ソルもこっち来てよ!!」


 ラフェルに呼ばれたソルは、とぼとぼと翔英たちの側へやってきた。

 

 「ラフェルくん……」


 「ソル、今俺たちのことショウエイに教えててさ」


 「あ、そうだったんだ」


 ラフェルが戻ってくるのを待っていたソル。

 退屈していたので、呼ばれたことを内心嬉しく思っていた。


 「俺たちの目標に少し重なるところがあったからさ、一緒に訓練することにしたんだ。俺は風を変化させること。ソルは、魔法の強化。だから、俺の風にソルの魔法を合わせる」


 「あーなるほど。ソルは魔法の練習になると同時に、ラフェルの風の可能性も試せるってことか」


 「そういうこと。本当は俺一人でできたら一番良いんだけど、ちょっと難しくてさ。この技は、誰かとの連携技ってことになるかな」


 魔法と異能。

 二つの力を合わせることで、新たな道を切り開こうとしているラフェル。

 ソルの方も、誰かの力になれることに喜びを感じていた。

 ちなみにこれは、オーの案を採用したものだった。


 もちろん、一日中二人でというわけではない。

 ラフェルはスピードを鍛える訓練、ソルは魔法の限界を超える鍛錬をそれぞれ個人でもこなしている。


 「……ラフェルくん。もう一回やってみよう。オーさんいないけど、一応今は訓練中だし」


 「うん、そうだな。戻るか。よかったら見ててよショウエイ」


 二人は共同訓練を再開するため、持ち場に戻っていった。


 「一回くらい見てみるか」と翔英も彼らに視線をやる。


 「じゃあ行くよ、ソル!!!」


 「うん!!!」


 目に見えるほどの突風を発生させるラフェル。

 その風は、回転しながら渦を起こしている。

 風というよりは軽いサイクロンだ。


 そこに炎の魔法を突っ込むソル。

 ソルが出した炎の玉は、回転に乗りながら風の中心へ入っていった。


 ソルとラフェルの狙いは、炎を纏う風を生み出すことだった。


 しかし、一度は入った炎が外に弾き飛ばされ、風もその力を保つことが出来ずに消滅してしまう。


 「あーまた失敗か。多分、俺の風の回転が弾いちゃってるんだよな。だから炎を取り込めるように、合わせるようにしないと」


 「私も、まだまだ威力が足りない……弾かれちゃうのは、私の力不足だと思う……」


 「まあ、練習あるのみだな。もう一回やろうぜ!!!」


 その様子を見ていた翔英。

 二人の姿に背中を押され、自身の課題に再挑戦しようとする。


 「(……思う力だ……あいつらを護りたいという、強い思い……!!)」


 だが、その直後――――入口の扉が突如吹き飛んだ。


 全員手を止め、扉に釘付けになる。


 「…………!! なんだよ、あいつ……!!?」


 扉の奥から修練場に足を踏み入れる影が見えてきた。

 扉を吹き飛ばしたのは、間違いなくこいつだ。


 その姿は完全に人の物ではなかった。

 

 「…………ウウウ……!!! グワアアアァ!!!」


 大きな角に全身が赤と青に包まれている。

 そして上げる魔獣のような咆哮。

 その普通ではない見た目をした生き物は、三人との距離をゆっくりと詰めていく。

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