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第四十話 『奇妙な訓練』

 「――――なるほど……それじゃあ、さっき図書館で偶然会ってたのか。でも、自己紹介はまだなんだよね?」


 「ああ、はい、そうです。えっと、俺はショウエイ・キスギ。聖鳳軍には最近入ったばっかりで、まだ五軍です。よろしく」


 「よろしくお願いします。……あ、あなたがショウエイさんだったんですね。お話は、姉さまや母さまからよく聞いておりました」


 翔英は目を丸くした。

 だが、すぐにピンときた。

 ピースが埋まり、頭の中にあったモヤモヤが晴れたのだった。


 「そうか……!! ヒナノさんの……!! うん、確かに似てる……!!」


 明朗快活な姉に対し、内気でおとなしい妹。

 顔立ちは似ているが、その対照的な性格が表情に違いをもたらしている。


 「はい……そうです。聖鳳軍二軍、ソル・スエリア。……ヒナノ・スエリアは私の姉です」


 「君がヒナノさんやクーレさんの家族だったなんてな……まあ、とにかくよろしく!!!」


 「はい……頑張りましょう……!!」


 ヒナノの七個下の妹。

 ソルとの挨拶を済ませた。

 

 「――――あっ確かもう一人いるんだっけ? 全員集まってからの方がよかったかな」

 

 と、自己紹介するのが早かったんじゃないかと心配だする翔英。

 

 しかし、


 「いや、もう一人は君を含めてもう会ってるから大丈夫だよ」


 と、オーから返って来た。


 翔英はオーの発言を受けて考える。

 

 既に知り合い。

 まさか一軍と合同とは考えにくいだろう。

 ということはミネカかリュノンか。もしかしたら、最初に共に行動したルンベかもしれない。


 まあ誰にせよ、彼らが一緒というのは嬉しいものだ。


 再び開く扉。

 その奥から、誰かが近づいてくる。


 翔英の予想とは裏腹に、その人物はミネカでもリュノンでも、はたまたルンベでもなかった。


 「よーショウエイ!!! オーさんもソルもな!!!」


 その男は、青髪をなびかせた少年で、翔英にとっても懐かしい人物だった。

 初めて会ったのは、二週間くらい前だろうか。

 

 「あっ!! ラフェル!!!」


 ラフェル・フルミーネ。

 翔英とは共に入隊試験に臨んだ仲であり、互いに唯一の同期である。

 実際に会うのは、あの入隊試験の時以来だが、互いにその活躍は耳にしていた。


 翔英の方は、初となる任務で魔物の撃破。

 ラフェルの方は、救助活動、魔物の討伐など、目まぐるしい活躍を見せ名を轟かし、史上最速で三軍へと昇格していた。

 

 一言で言うなら、『天才児』だ。

 

 「そうか!! もう一人ってラフェルのことだったのか!!」


 「そういうこと。ショウエイも頑張ってるって聞いてたよ。一緒に頑張ろうぜ」


 「でも、ラフェルってもう三軍なんだろ? 試験の時から思ってたけど、やっぱりお前すごいよ」


 「まあ、俺は入隊してすぐに任務に出てたからね」


 ショウエイ・キスギ。

 ラフェル・フルミーネ。

 ソル・スエリア。

 

 これで今回のメンバー全員がそろったようだ。


 「――――じゃあおしゃべりはこの辺にして、これからの話をしよう。まず聞いておきたいことがあるんだけど、君たちの今の『目標』を教えてほしい。強くなるためには目標は不可欠だ。それを達成するためにどうしたらいいか皆で考える。じゃあ、ラフェル君からいい?」

 

 「ああ、はい。俺はスピードを上げたいと思っています。何か一つ、他と差をつけられる圧倒的な武器が欲しい。俺にとってそれはスピードだと考えています」


 いつになく真剣な眼差しを送るラフェル。

 ちなみに彼は現在、軍の中で最年少である。


 「なるほど、そっか。それならヴァナ爺さんが担当した方がよかったかもな……よし分かった。じゃあ次は、ソルちゃん」


 「は、はい。えっと……私は、魔法……です。戦いで使える魔法を使えるようになりたいです」


 先程の図書館での出来事を思い出す翔英。

 彼女は、難しそうな魔法の本を積んでいた。 


 そしてまた、彼女が魔法を使いたいと願うのは姉が関係あるのではと直感した。


 「魔法か……分かった。……君がそう言うのなら、こっちも全力でサポートするよ。じゃあ、最後にショウエイ君、君は?」


 「あ、はい……んっと…………」


 いざ考えてみると意外と難しい。


 これまでは漠然と『強くなりたい』としか考えていなかった。

 だが、二人のように明確な目標は作るべきだろう。

 この間のように、ただ打って打たれるだけでは限界がある。

 

 翔英は頭を巡らせた。


 「……攻撃手段を増やす……です。今の俺にはあまりにも手数が少なすぎる。もっと、戦いに応用を利かせられるように、なりたいです」

 

 先日の魔物との戦いを振り返り、答えを出す翔英。

 武器が無くても戦いたい、そんな単純な理由だった。 


 「……手数ね。いい目標じゃない」


 「はい……!!」


 結構いい答えだったんじゃないかと考える翔英。

 でも、そこまでへの道筋はまだ思いつかない。


 「――――よし、大体君たちの希望が分かった。今日から、こっちで予め決めておいた共通の訓練を一通りこなしてから、各自の目標に向けた課題に取り組んでもらう。これは毎回。そんなに重いものじゃないから、そこは安心してね」


 オーは少し考えるような素振りを見せると、


 「どうする? もう始めちゃうかい? 今日は、共通のものと各自やってもらうものを決めるところまでやりたいんだけど」


 と、提案する。


 「はいっ!! やります!!!」


 真っ先に返事をするラフェル少年。

 ラフェルに続いて隣の二人も了承する。


 「よおし、じゃあやろうか。おにごっこ」


 「え!? おにごっこ!?」


 思わぬ修業内容に驚きの声を上げる翔英。

 そして同時に、安堵もしていた。


 「はい! おにごっこってなんですか? 鬼を倒すの?」


 質問をしたのはラフェルだ。

 この世界にも現世と同じ遊びがあることを嬉しく思うと同時に、あまり浸透はしていないのだと頷く翔英。

 しかし、


 「うん、半分は当たってるね。まあ、今から説明するよ」


 「(え……? 半分当たってんの? なんで?)」

 

 眉をひそめる翔英を他所に、オーは腰に携えた刀を取り出すと、地面に突き刺した。


 ――――するとなんと、地面の中から奇妙な生物が生まれ出した。

 その姿は、まさしく小さな鬼といった風貌だ。

 赤いのと青いのがおり、数は合計十を超えている。 

 

 「な……!? なんですかこいつら!? どっから現れた!?」


 「僕のこの刀は『いわくつき』でね。その地に眠る戦いの記憶を鬼の姿で呼び起こすんだ。怖がらなくていいよ。この子たちは僕がコントロールしている」


 奇妙なことを口走りながら刀を縦に振るオー。

 すると、鬼たちは訓練された兵士のように横一列に並び始めた。


 よくみると意外とかわいい顔をしている。

 そのキビキビと動く姿に、三人は思わず笑みを零す。  


 「おにごっこは、この子達を使って行う。この子達が君たちを追いかけ、攻撃してくるから、それに対応する。攻撃と防御、そして咄嗟の判断を鍛えるものだ」


 「ただし、おにごっこにはルールがある。今鬼を二種類に分けたけど、それぞれ求められる対応が違う。赤い鬼にはどんどん攻撃してくれ。そこまで強くはないから、倒すことは簡単だよ。だけど、青い鬼は、攻撃を受け付けない。彼らが来たら、ひたすら避けてくれ。この修練場全体がステージだ。慣れてきたら鬼を少しづつ増やしていく。こんな感じなんだけど、だいたい分かったかな?」


 「………はい。分かりました……!!」


 ラフェルとソルは即答する。

 翔英はまだ飲み込み切れてないが、二人の子供に流されてしまう。


 「よし、始めよう。三人同時にやるからね。あっ攻撃はなんでも大丈夫。武器や魔法もオーケーだ。じゃあ、一分後開始で」


 三人はばらけて開始を待った。

 すぐに一分立ち、奇妙な合同訓練が開始された。 

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