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第二十八話 『終わらない』

 レウラに迫るガロト。

 例によって、レウラは左手をガロトに向ける。

 しかし、レウラの手が触れる前に、ガロトは動いた。

 

 「――――なっ!! なんじゃあこれは……!!」


 思わぬ攻撃にレウラは驚きの声を挙げる。

 ガロトはマフラーを伸ばしてレウラの両腕と体に巻きつけ、彼女の動きを封じたのだった。


 「く……! お、おのれ……!! ふざけたことを……!!」


 マフラーを解こうともがくレウラ。

 だが、パワーでガロトに勝てるはずもなく、縛られたまま攻撃ができずにいる。 

 そして、ガロトはレウラの両手を合わせ、そのまま腕を固定させた。


 「な、何をするんじゃ貴様っ!!」


 ただ腕を固定させるためにやったことだが、偶然にも能力を解除する条件を満たしたガロト。

 魔能の効果が切れた結果、翔英は再び動き出した。


 うずくまったまま停止していた翔英。

 肉体は既に限界を迎えていたため、激しい痛みが襲う。

 あまりの傷に顔を上げることができず、ガロトにも気づかずにいるようだ。

 ガロトの方は翔英が動きを取り戻したことに気付くと、急いでミネカに声を掛ける。


 「ショウエイ……!! 能力が解けたのか……!! ミネカ!! ショウエイの意識が戻った……!! すぐにショウエイを治してやってくれ!!!」


 「……!! は、はい!! 分かりました!! ショウエイさん……!! 今、行きます……!!」


 翔英の元に駆けつけるミネカ。

 聞き慣れた二人の声が聞こえた翔英は、耳を疑いながら、ゆっくりと顔を持ち上げた。


 「………あれ……ミネカ………それに……ガロトさんも………そっか………来て……くれたのか……」


 「はい……! すぐに治しますわ……!」


 ミネカは魔力をフル活用して翔英の治療を開始した。

 さすがは、国一番の回復魔法の使い手と言うべきか、重症だった翔英の体が少しずつ元に戻っていく。

 その様子を見ていたリュノンも、翔英の無事に安堵の表情を浮かべている。


 唯一、この状況に腹を立てているレウラ。

 彼女は翔英が回復していくのをなんとか阻止しようと体をばたつかせるが、一向に脱出することができない。


 「なんてことじゃあ……!! あの小僧にトドメを刺さねばならぬというのに……! ……はなせ!! はなすのじゃ貴様!!!」


 ガロトは黙って、拳を構えた。

 そして、拳に全エネルギーを集中させていく。


 「な……! まさか……貴様!! この状態のわらわを殴るつもりか!! 身動きが取れぬわらわを……!! …………最低じゃぞ……!! あまりにも……!!」


 「…………それは君だ」


 「やっ……やめてっ……!! ……やめろおおっ………!!!」 


 ガロトは思いっきり、レウラの顔面に拳を叩きつけた。


 「ぎゃああああ!!!」


 直撃。

 重い一撃を受けたレウラは、あまりの衝撃に気を失った。

 マフラーから離し、レウラを寝かせるガロト。


 「ガロトさん!! やりましたね!!!」


 勝利を確信したリュノンがガロトと合流する。

 翔英はミネカに治療されながら、二人を見つめていた。

 

 「やった……のか…………はっ、すげえな……やっぱ、あの人は……」


 「ええ……! さすがは、ガロトさんですわ……! …………あっ、ショウエイさん、お体の具合はどうですか? できるところまでは治せましたが」


 「……ん? ……ああ。大分良くなったよ! 毎度のことだけど、ありがとな、ミネカ! 二人が来てくれなかったら、絶対死んでたわ、俺」


 すっかり傷が治った翔英。

 立ち上がると、彼らもガロトの元に向かって行った。


 「――――それで……どうするんです? この魔物。肉体が消滅しないってことは、まだ生きてるんですよね」


 「ああ。だが、今は殺さない」


 「殺さないって……このままにするってことですか!?」


 リュノンとガロトが今後について話す中、翔英は二人の所に到達する。

 翔英に気づいたガロトは、いつもよりも若干笑顔で彼を迎え入れた。


 「おおショウエイ。元気になったようで安心したよ。ミネカもご苦労だった」


 「はい。ありがとうございました、ガロトさん」


 また翔英と話せたことを嬉しく思うガロト。

 ガロトはマフラーを外し、レウラの両手を縛ると、三人に向けて話し始める。


 「――――この魔物の強力な魔能に口ぶり、おそらく、かなり上位の魔物なのは間違いないが、トップとは考えにくい。それにしては、魔能以外の点が未熟すぎる。だから、この魔物の上に、さらなる敵がいると私は考えている」


 その考えは、翔英とリュノンも同じだ。

 確かにレウラは強かったが、王たる威厳や凄みを感じなかった。

 ある程度は戦えていたこともある。

 考えたくはないが、魔物との戦いはまだ続くだろう。


 「――――だから、情報を聞き出すため、そして、この魔物の魔能について調べるために、この魔物を『研究部門』に引き渡す。そして私はこの魔物を『極めて上に近い存在』だとみている」


 「研究部門……ですか。……なるほど、この魔物を情報源として活かすということですね」


 納得を見せるリュノン。

 そういえば、レウラが『本部』とか言っていたような気もする。 

 反対に、翔英はまだ眉をひそめていた。


 「な、なあミネカ。研究部門ってどこにあるんだ? っていうか、何を研究してるところなの?」

 という質問に、ミネカは穏やかな口ぶりで解説を始める。


 「はい。研究部門は、主に魔物に関する分野を研究しています。一軍のお一人、マーノ・ジャッロさんが代表を務められていますわ。マーノさん達は研究を進め、魔物の弱点や能力、生活について解析を進めています。私とショウエイさんが初めて出会った時のあの任務も、研究部門から出されましたの」


 「なるほど」


 マーノ。

 どこかで聞いたような名前だが、思い出せない翔英。

 

 ガロトはレウラを持ち上げ、帰還の準備に取り掛かる。


 「そういうことだ。マーノに任せれば大丈夫だろう。とりあえず、今日の調査はこれで終わりにしよう。三人とも疲れただろう。この魔物をマーノに引き渡し終わったら、私が何かごちそうしよう」


 三人は顔を合わせると、胸を弾ませながら、洞窟の出口に向かい始めた。

 

 長い一日が終わった。

 何より、全員無事だ。

 みんなと話したいこともたくさんある。 


 「――――なあ、ショウエイは何か好きな食べ物とかあんのか?」


 唐突に平和な質問を投げかけるリュノン。

 それに対し翔英は、何と答えるか少し迷いながら 

 「うーん、そうだな…………肉、かな?」

 と答えた。


 本当は違うが、本当のことを言っても伝わらなさそうなので適当に。


 「肉か……そりゃなんとも普通の答えだな。……なら、俺がいい店知ってるぜ!! あそこの料理はめちゃくちゃ旨いんだ……!! 『ホサルトン』ってとこなんだけどさ!」


 「ふふ、リュノンさん本当にあの店がお好きなんですね」


 「もちろん! そこにしようぜ!! ミネカさんとガロトさんもいいよな!?」


 ガロトは無言で頷く。

 ミネカも笑顔でリュノンの提案に乗った。

 もちろん、翔英も。

 だってこの町のレストランなんて、全然知らないし。 


 「あと、聞いて驚くなよ! そこのシェフが俺の育ての親なんだ!」


 「え!? なんだそれ!!」

  

 最後尾で無言のガロトを除き、同世代三人は話を弾ませながら歩いていく。

 数分後、光が差し込むのが見えた。


 「なんか外に出るのがめちゃくちゃ久しぶりな気がするな」


 洞窟を後にする一行。

 まずは町長に成果を報告するため、町へ向かおうとする。


 ――――しかし、


 「な……! なんだよあれ……!」


 彼らは外の異変に気付く。

 翔英たちの頭上に、漆黒の雲が浮かんでいた。

 雲は山を覆う程度の大きさで、その周りは雲一つない。

 それはかえって不気味さを冗長させていた。

 

 そして、その雲の上から『何か』が飛来してきた。


 「――――やはり来たか、聖鳳軍」


 ――――そう、今日はまだ終わっていなかった。

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