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第十九話 『闘う青年』

 二体の魔物と対峙する翔英とリュノン。

 リュノンは虫の魔物であるステップラー。

 翔英は少女の魔物であるルラールの相手をしようとする。


 「(奴らの会話を聞く限り、おそらく強いのはあの虫のほうだろう……ショウエイはほとんど初めての実戦だ……虫の相手は俺がする方がいい……)」


 翔英とリュノンがそれぞれ自分の相手に向かう。

 ――――しかし、それより早くステップラーが動いた。


 「そりゃあ!!」

 という掛け声とともに、バッタのようにぴょーんと跳ねるステップラー。

 ステップラーは真っ先に『翔英の方』に攻撃を仕掛けた。

 敵のパンチが翔英の顔に命中する。


 すかさず翔英の助太刀に向かうリュノン。

 その前に、ルラールが立ちはだかる。


 「あなたの相手は私……よろしくね」


 翔英とリュノンの希望は実現せず、翔英とステップラー、リュノンとルラールがそれぞれ対峙した。

 

 不意打ちを受けた翔英。

 幸い、あまり深くはなかったようですぐに起き上がった。

 

 「い、痛い……! くそ……! まだ武器も出してないってのに……!!」


 「――――俺は常に弱者から狙うようにしている。お前とあの赤髪の小僧、どちらが上かは一目瞭然だ。よって、お前は俺が殺す」


 「……まあ正解なんだけどさ……そんなかっこ悪いことかっこつけながら言うなよ……まあいいや! あんたの相手受けて立つぜ!!」


 不思議と恐怖は消えていた。

 さっきの不意討ちをもらったことで、翔英の闘志に火がついたようだ。

 一発目を耐えられたことが、彼に勝機を宿らせる。


 翔英は首元に祈りを捧げ、赤く輝く剣を取り出した。


 「な、なんだその剣は! どこから出しやがった!?」


 「教えねえよ!!」


 激突する人間と魔物。

 その様子を見ていたルラールと戦うリュノンは少し安堵する。


 「ショウエイのやつ……あんな武器を持ってたのか……!! うん、勝てるかもしれない……!! ショウエイ!! 予定変更! そいつの相手は任せたぞ!!」


 「……おう!」


 返事をした翔英だが、彼は思いのほか自分が魔物と戦えていることに驚いていた。

 『敵の攻撃が見える』

 

 ――――ここで彼は思い出す。


 翔英はこれまでのガロトとの修業の成果を実感した。

 ひたすらガロトの攻撃を受け続けたことで、目が攻撃を追うようになっていた。

 何より、ガロトという達人の攻撃を味わい続けたことが大きかった。

 ガロトより遥かに劣るステップラーの攻撃は、翔英には甘く感じられたのだ。

 スピードもパワーも角度も全てが読みやすかった。


 「(ガロトさんとの修業が効いてる……! さっきのこいつの攻撃が思ったより大丈夫だったのも、ガロトさんの攻撃に体が慣れつつあったからか……!! ありがとうガロトさん……!! 俺、こいつに勝って見せます……!!)」


 「な、なぜだ……! こんな素人感満載の小僧に俺の攻撃がまともに入らない……!!」


 ――――ついに、攻撃の隙をかいくぐった翔英の一撃がステップラーの胸元に入った。


 「よし! 行けるぞ!!」

 と、自らを鼓舞する翔英。


 ステップラーは焦る焦る。

 気持ちいいくらい翔英優勢だ。 


 そんな戦いの様子を傍観していた、魔物のジックルがステップラーに怒声を上げた。


 「何をしているんだステップラー!! お前の力はこんなものではないだろう!! ……まさか、この状況でまだあんなつまらんことにこだわっているんじゃないだろうな!?」


 「い、いえ……そんなことは……ありません……」


 ジックルの言葉を受け、一瞬隙を見せたステップラー。

 翔英はその隙を見逃さず、さらにもう一太刀浴びせた。


 「ぐおっ!! ちっ、このガキ……!」


 「いい加減にしろステップラー!! 本気でやれと言ってるんだ!!!」


 「……はい……分かりました……」 


 ジックルに怒られたステップラーは、その場に立ち止まり何かを始めようとする。

 ジックルの言葉は、相対する翔英にも影響を与える。


 「『本気で』だと……まさか、まだ本気を出してなかったのか……!!」


 雰囲気が一変したステップラーに臆する翔英。

 彼に嫌なドキドキが走る。


 「何をする気だ……こいつ……!」


 ――――バタン。

 ステップラーは前に突然倒れた。

 そして顔を上げ、四足歩行になりながら言う。

 

 「まさか、こんなやつを相手にこの姿で戦うことになるとはな……! 俺に本気を出させたこと、後悔させてやる……!!」


 「…………は?」


 動揺する翔英に狙いを定め、四足歩行のままステップラーは飛び出した。

 しかし、


 「な、なに!?」

 と、今まで難なく捌いてきたステップラーの攻撃を初めてまともに受けてしまう翔英。


 「……さっきまでより……ずっと早い……!!」


 「くっくっくっ、そうだ……! 俺はこの姿になった時初めて、真の力を発揮する……!!」


 四つん這いになったまま、顔を上げて言うステップラー。

 そのシュールな光景に思わず吹き出しそうになる翔英だが、敵が強くなったことに脅威も感じるという複雑な心境になっている。


 「な……なるほど。確かにその虫みたいな手足なら、二足歩行よりも四足歩行の方が適していてもおかしくねえ……虫の力……これがあんたの真の戦闘スタイルってわけか…………」


 「っっつ!! 違う!!!」


 急に叫ぶステップラー。

 びっくりする翔英。

 おそるおそるステップラーに聞き返す。


 「え……えっと、何か気に障る事言いましたか……? 僕……」


 「俺は虫ではない!!! 四足歩行よりも二足歩行の方が似合っている!!! 四足歩行の方が強いのは俺が虫だからではない!!! たまたまだ!! あんな下等生物とこの俺を一緒にするな!!!!」


 「は、はい……すいません……」


 どうやらステップラーの地雷を踏んでしまったようだ。

 戦闘中にいきなりブチ切れる虫に、同じく戦闘中のリュノンもびっくり。

 ルラールの方は四つん這いになったステップラーを見てにっこりだ。


 「――――な、なんだ急にあの虫野郎、デカい声出して」


 「ふふっ、ステップラーが本気を出したようね…………ああなってしまったら、あの子がやられるのも時間の問題かもね」


 「…………ショウエイ!! 気をつけろよ!!」


 「……ああ! 分かってる!!」


 さらに攻撃を仕掛けるステップラー。

 スピードが上がり不規則となった連打に苦戦を強いられる翔英。

 既に一度左肩に攻撃を食らってしまっている。

 

 四足歩行となったことで、動きに無駄がなくなったことに加え、二足歩行の際には長くて立ちづらそうだった足が折りたたまれ、長い足が活かされるようになっていた。

 ぴょんぴょんと跳ね回りながら繰り出す、捉えにくい攻撃に追い詰められていく翔英。


 「(……それでいいんだステップラー。……二足歩行の際に比べ、四足歩行のお前の強さは数倍にもなる…………だが、お前はその姿が虫に見えることを嫌がり、四足歩行になるのを避けるようになった…………まさかこんな状況で出し惜しみするとは思わなかったがな……)」


 逆転。

 激化する翔英とステップラーの戦い。

 今押しているのは明らかにステップラーだ。


 「(く、くそ……!! 攻撃を受けるので精一杯で、反撃できねえ……!! このままだと……!!)」


 「もらったあ!!」


 咄嗟に避けようとするも、左肩に攻撃を食らってしまう翔英。

 ――――なんと肩には針が刺さっていた。


 「ぐ、あああ! なんだこれ……!? 痛え……!!」


 「くっくっくっ、とうとう二度食らってしまったな、俺の攻撃を……!!」


 翔英は肩に刺さった針を抜こうとする、が。


 「は、外れねえ……ちくしょう……なんなんだよこれ……!!」


 「当たり前だ。その針は打ち込まれたら最後、絶対に抜けることはない。……お前はもう終わりだな。まあ、俺のこの姿と戦えたことを光栄に思いながら死ぬがいい……!」


 ステップラーに追い詰められる翔英。

 反撃に転じるために思考を巡らせるが、肩の力が抜けていく。

 ――――だが、翔英は希望を捨ててはいなかった。

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