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第十八話 『戦士として』

 「――――なあショウエイ、どう思う? この洞窟」


 「どうって? ……やっぱ魔物のアジトじゃないの?」


 薄暗い洞窟をこそこそ話で進んでいく二人。

 翔英とリュノンは今、二体の魔物が入っていった洞窟へと足を踏み入れている。

 

 この判断が正解かどうか。

 今はまだ分からない。


 「いやさ、ここがホントに敵のアジトならさ、ヤバい魔物がいる可能性って高くないか?」


 「……確かに」


 リュノンの言葉で、急に不安が大きくなる翔英。

 そう言われればそうだ。


 『危機感の欠如』

 妙な安心を抱いていたせいで意識していなかった。

 

 「だからさ、もしヤバそうだったら、一旦引いてガロトさん達が来るのを待とう。あのキノコ採ってた魔物ならなんとかなりそうだけど、それ以上が出てくるのはマズい」


 「わかった。その判断は任せるぜ、リュノン」


 洞窟の奥へと進んでいく翔英とリュノン。

 翔英は目的地が近いことを予感する。

 ――――すると、さらに奥から何者かの声が聞こえてきた。


 「……戻りましたよ! ジックルさん!!」

 

 翔英とリュノンは物陰に身を潜め、声が聞こえた方をそっと確認した。

 そこは洞窟内でありながら、だだっ広い空間がある場所だ。

 中央には、食材が積み上がっているのが確認できる。

 翔英とリュノンがいるのはこの場所の出入口といったところか。

 

 大声を上げたのは、翔英とリュノンがつけていた魔物の一体だった。

 もう一体の方もキノコが入った籠を背負い、彼の隣に立っている。

 

 「ジックルさん! いないんですか!?」


 「いる」


 一言の呟きとともに、どこからか新たな魔物が登場した。

 その魔物は口ひげを携え、片目が隻眼となっている中年男性の姿をしている。

 背中に黒色の翼が生えていることと肌が紫色なこと、耳が尖っていることに目を瞑れば、おっかない感じの人間のおじさんと変わらない。


 「……戻ったか。ステップラー、ルラール。…………ご苦労様」

 

 「…………グーリュとハサミはまだ戻ってないんですね。……今度こそ、あいつらより多く採れたと思いますよ!! 早く見せてやりたいです!!」


 「おおそうか。そりゃあよかったなステップラー」


 ステップラーと呼ばれた魔物は、緑色の体躯であり、人とは離れた姿をしている。

 まるでその姿は『虫』に近い。

 両手両足も人間のそれとは異なっている。何より手に比べて足が非常に長い。

 絶対四足歩行の方が歩きやすそうだ。


 「おいルラール! そろそろ籠を下ろしたらどうだ!!」


 「…………………」


 「こいつまた……! おい起きろルラール!!!」


 ステップラーと共にキノコ狩りをしていたもう一体の魔物はなぜか寝ていたようだ。

 「はっ!」と驚いた声を挙げると、キョロキョロと周りを確認する。 


 「ごめんごめん。疲れちゃってて」


 その魔物の姿は、比較的人間の若い女性に近い。一番の特徴は、左右に垂らした艶々のロングヘアだ

 そして肌の色は桃色に近く、眠たそうな目は赤く輝いている。


 「…………で、なんだっけ?」


 「だから籠だよ籠!! さっさと下ろせって!!」


 「あーはいはいはい」


 寝起きから怒鳴られたことでやや不機嫌のルラール。

 まあそもそも、寝てる方が百悪いが。 


 ルラールはゆっくりと背負っていた籠を下ろし、ジックルの元へと運んだ。

 

 「…………なるほど。確かに、いつもよりも大量だな。これなら、レウラ様も喜んでくれるかもしれない」


 「そうでしょう!! ……今までグーリュの野郎に勝ったこと無かったからなあ…………今度こそいける気がするぜ!! ……早く戻って来ないかな、あいつら……」


 魔物三人の様子を隠れ見る翔英とリュノン。

 二人は慎重に、自分たちがとるべき行動を考えていた。


 「……リュノン、どうする。三人相手はさすがにきついんじゃないか……!?」


 「……あのおっさん……あいつは他の二人とは別格だ……! だけどおっさんが言ってた『レウラ』とかいう名前…………あの言いぐさだと………おっさんより上なのは間違いない……! ここは一旦引いて、ガロトさんと合流した方がよさそうだ、ショウエイ……!」


 「わかった……!!」


 『考えなしには突っ込まない』

 当初の予定通り、退却を決断する。

 二人が退却の準備に取り掛かろうとした時、突然ジックルがデカい声を出した。


 「ところで!!! ステップラー、ルラール。食材を持って帰ってきたのはご苦労だったが、余計なものまで連れてきてしまったようだな」


 「えっ余計なもの? なんですか?」


 「――――どうやらお前たちはマヌケにもつけられてしまったようだな。さらに尾行に気づくことができず、まんまとここを見つけられてしまったわけだ」


 「!!?」


 ただでさえデカい目をギョロつかせ驚く一匹。

 ジックルは入り口の方に、鋭い眼光を飛ばしている。

 翔英とリュノンは心臓の音をバクバクと鳴らしながら、三歩歩いた先で、ジックルの言葉を耳にした。

 

 「や、やばいリュノン! バレてるぞ!!」


 「はっ走るぞ!!」


 二人は一斉に走り出した。

 今魔物に捕まってしまっては非常にまずい。

 一刻も早く洞窟から出ようとする。


 「そうはいかんぞ……!! ふんっ!!!」


 ジックルは懐から愛用の鎌を取り出した。

 そして、鎌を空間に向かって振り下ろす。

 

 「な!? なんだ、これ!!」

 

 「体が……!!」


 と、動揺しまくる翔英とリュノン。


 なんと、ジックルが鎌を振った場所に歪みが生まれ、そこに吸い寄せられるように、翔英とリュノンは魔物の巣へと戻された。


 「こ、こいつらが……!?」


 「そうだ。お前たちはこの人間二人に気付かなかったようだな。おそらくは、このロッツ山を調べに来た聖鳳軍。まだ誰にも見つけられていなかったこの場所に敵を招いてしまったな」


 「も、申し訳ありません……!!」


 翔英とリュノンは命の危機を感じていた。

 この状況を打開する方法はないかと考えを巡らせるリュノン。

 一方翔英は、真っ白になりかけていた。

 リュノンですらまずいと言ったような奴に、目の前で敵意を向けられているのだ。

 

 だが、怯えているのはステップラーも同じだった。


 「……本来なら、このような失態は許されるものではない。だが幸運にも、こいつらは大したことなさそうだ。ステップラー、ルラール、お前たち二人でこいつらを始末しろ。レウラ様も今はいらっしゃらないことだし、今回のミスは無かったことにしてやる」


 「ほ、本当ですか!! あ、ありがとうございます……!! そういうことなら、お任せを……!!!」


 失態を取り消すチャンスを貰ったステップラー。

 翔英とリュノンに対して、牙を剥こうとする。


 「立つぞ! ショウエイ!! 今はこいつらを倒すことを考えるんだ!!」


 「あ、ああ……ごめん!」


 リュノンの言葉を受けた翔英は我に返り戦意を取り戻す。

 二人は立ち上がり、魔物との戦いに構えた。


 「――――ってあれっ、ルラール!! お前何やってんだよ!! この状況でよく寝られんな!!」


 ボーっとしていたルラールを起こすステップラー。

 どうやらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 しかもまた。


 「んー……あっごめんごめん、ちょっと疲れててさ。で、なんだっけ?」


 「今からこいつらと戦うんだ!! もし失敗したら俺たち、レウラ様に消されるかもしれないぞ!!」


 「えっなんで!? 意味わかんないよ!!」

 

 「意味わかんないのはお前だよ!! なんで説教中に寝てるんだ!! ……とにかく、こいつらを倒してくれ……!! 詳しい説明は勝ってからだ!!」

 

 「……りょーかいっ……!!」


 納得を後回しにして、二体の魔物も臨戦態勢へと入る。

 

 あの時の、いやそれ以上の『緊張感』


 翔英は気合を入れ、大きな一歩を踏み出した。 


 「(……あいつが出てこないのは、ひとまずラッキーだ……!) 

 ショウエイ! 俺はあの虫野郎の相手をする!! お前はあの女を頼む……!!」


 「わかった! 気をつけろよリュノン!!」


 場所はロッツ山の魔物のアジト。

 ショウエイ・キスギ初となる戦士としての戦いが始まろうとしていた。

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