表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/47

第十四話 『キノコ狩り』

 ――――翔英は現在、待ち合わせ場所へと歩いている。

 

 いよいよ今日は初任務の日である。

 

 やる気に満ち溢れている彼は、集合時間より大分早く着く時間に自宅を出たのだった。

 こんなことは初めてだった。

 いつもギリギリに行くことに慣れていた男が、時間に余裕を持って出ることなど。

 

 おそらく一番乗りだろうと思いながら、本部に到着した翔英。

 しかし、既に集合場所には腕を組みながら棒立ちしている男の姿があった。


 男はツンツン頭の赤髪が特徴的で、翔英と同年代くらいの印象を受ける。

 大きなフードのついた青色の洋服を着用しており、首にはペンダントをぶら下げている。 

 

 こちらに気が付いた彼は、

 

 「おっ! もしかしてあんたがショウエイ・キスギ?」

 

 と、爽やかな笑顔を浮かべながら話しかけてきた。

 

 「あっ、うんそう。……もしかして……」


 「やっぱそうかあ! 俺、リュノン・アーリー。よろしくなショウエイ!」


 今日の任務のメンバーは翔英を含めて四人。

 その内の一人がこのリュノンだ。

 昨日ミネカとガロトに彼について少し話を聞いていたが、総じて『良い人』という評価だった。

 そのため心配はしていなかったが、実際会ってみると想像以上に好印象だ。


 この挨拶だけで、彼の人の良さが分かった。


 リュノンの方も翔英について話を聞いていたようで、会うのを楽しみにしていてくれたようだ。


 「よろしく! それにしても随分着くの早いね。俺が一番かと思ってたけど」


 「ああ、俺さこういう日って、こう……気持ちが落ち着かなくてさ、いち早く着いて、心の準備をしてるんだ」


 「うん、俺も! 家にいると色々考えちゃって」


 「だよなー ……っていうか、ショウエイは今日が初任務なんだよな。まあ、困ったらなんでも言ってくれよ。急に腹が痛くなったとかさ」


 ミネカの言っていた通り、リュノンは初対面にもかかわらず話しやすかった。

 翔英も元々コミュ力がそこそこあることもあって、早々に距離が縮まっていく二人。


 翔英とリュノンはその後も会話を続け、集合時間が来る頃にはすっかり打ち解けて仲良くなっていた。


 到着したミネカとガロトもその様子を見て驚いたようだ。


 「あら? お二人とももう仲良くなりましたの? ふふ、よかったですわ」


 「ショウエイ、リュノン、二人とも自己紹介はもう済んでいるようだな。全員揃っていることだし、今日の調査についての話をしておこう」


 二人はガロトに顔を向けると、楽しそうだったさっきとは一変、真剣な眼差しに移る。

 これから行くのは『旅行』ではなく『仕事』なのだから。


 「――――今日の目的地は、ここから南にある『ロッツ』という町だ。その付近に魔物と思われる『何か』の目撃情報が入った。我々の任務は辺りの調査。……では、準備ができ次第出発する」


 ショウエイ、ミネカ、リュノン、ガロトの四名は馬車に乗って『ロッツ』へと向かった。


 一時間後。


 ロッツへ到着した一行は、今回の情報を提供してくれたという町長に話を伺いに行った。

 

 「――――お待ちしておりました、聖鳳軍のみなさん。私が町長のユーモです」


 口髭を生やして恰幅がいい見た目をした、いかにも町長という感じのユーモ。

 だが長話している時間はない。

 挨拶を交わした後、ガロトは本題に入った。


 「では町長さん。早速ですが、詳しい情報を教えていただきたい」


 「――――はい……あれは一週間ほど前のことです。私は友人と町の裏山に行きました。あの山からは、新鮮な食材を取ることができるのでね。……しかし、そこで私は見たのです。山でキノコ狩りをしていた、異形の姿をした何かを。あれはおそらく魔物だったのでしょう。この事を町の者にも伝えると、同じような光景を見たという人が何人かいましてな。それで、もしかしたらこの辺りに魔物の住処があるのではないかと思ったのです」


 「なるほど……情報提供、ありがとうございます」


 町長の証言を聞いて、調査の価値はあると踏んだガロト。

 四人はすぐさま、出発の準備に取り掛かり始めた。


 町長の案内の元、翔英たちは山のふもとにやってきた。


 「――――ここから真っ直ぐ進んでいただくと、私があれを見た場所に着きます。とても大きな木が目印です。……私に案内できるのはここまでです。ではみなさん、どうかお気をつけて」


 町長と別れた一行は、魔物が目撃されたという山に入っていった。


 「……ていうか思ったんだけど、魔物ってキノコ狩りなんてするの? てかあいつら普段何食べてんの」


 山登りの道中、リュノンに問いかけた翔英。

 さっきの話の『キノコ狩り』というワードが引っ掛かっていたようだ。


 「それ、俺も思った。思わず声出そうになったわ。『えっ? キノコ狩り?』って」


 「……奴らは、食料を奪うために村を襲ったこともあるという。キノコ狩りをしていたとしても、何らおかしくないだろう。真偽はどうであれ、この山を調べることに意味はありそうだ」


 二人の会話に入り、ガロトが自らの考えを述べた。

 でも、キノコ狩りしてるなんて変に親しみやすい人外だ。


 「へー魔物も食べて生きてるんすね。確かに、キノコを持って帰ってるとしたら、この辺りに住んでてもおかしくないですよね」


 「……目撃した人たちが無事だったのは、何か理由があるのでしょうか。気づかれてしまったら、襲われてもおかしくありませんが……」


 と、疑問の声を挙げる紅一点のミネカに、


 「キノコ狩りに夢中で全然気づかなかったんじゃないか?」


 と、テキトーな返事をするリュノン。

 

 「――――おそらく、この辺りの魔物は弱者の命に興味がないか、何らかの準備をしているのだろう。準備が終わり次第、人間への攻撃を開始するのかもしれない」


 そして、ことごとく疑問を拾ってくれる年長者のガロト。

 まるでガロトは、三人の生徒を率いる教師のようだ。


 「……じゃあ、今回奴らを叩くことができたら、すごいナイスな働きってことですよね! なんかますますやる気出てきました俺!」


 モチベーションが上がり、気合いが入る翔英。

 一人だったらここまで元気は出ないが、頼りになる人が三人もいるのだ。

 心配なんてないし、ワクワクは止まらない。

 

 いつの間にか一行は、町長が魔物を目撃したという場所に辿り着いた。

 一回り大きい木がそびえ立ち、ふもとにはキノコが生えていた跡が残っている。

 何者かがキノコを採ったことは、間違いないようだ。


 「……でもこの場所はもう採られている訳ですし、ここにまた現れる見込みは薄いですわね……」


 「よし、ここからは二手に分かれて、主にキノコがまだ生えている場所の探索だ。私とミネカ、ショウエイとリュノンで行く」


 「……わかりました。ではまた後で」


 翔英が意見を述べることなく、班の作戦は進行していく。

 

 ミネカと一旦離れることを渋々受け入れつつ、翔英は出発の準備を始めた。

 

 「リュノン、もしヤバくなりそうなら無理はせず、我々との合流を待つんだ。いいね?」


 ガロトのリュノンへの信頼は大きい。

 それは、強さだけでなく、判断力の面でも。

 だが一応、先日のこともあり、リュノンに忠告するガロト。

 

 やがて両ペアは探索に乗り出した。


 「――――で、リュノン。なんか探す当てはあるのか? この山結構広いけど」


 「いや、ひたすら探すしかないな。キノコの気配なんて分からないし」


 「……そっかあ、じゃあ気長に行くしかないか………あれ? なにやってんのリュノン?」


 隣を歩いていたリュノンが横から突然いなくなった。

 来た道を振り返ると、リュノンは額に指を当て、集中した様子で立ち止まっていた。


 「ああうん、探す効率を上げようと思ってさ。ちょっと待ってて……」


 数秒後、翔英は自分の目を疑った。

 リュノンが二人に見えたのだ。

 目をこすって再び見ると、三人になっていた。


 「……え? なにこれ?」


 「分身魔法だよ。ショウエイ」


 リュノンの一人がそう言った。


 「俺の固有魔法の一つだよ。最大、十六人まで分身できる」


 また別のリュノンが口を開く。 


 「十六人!? なんだそれ、そんな便利な技があったのかよ!」と、リュノンの能力をお目にかかった翔英は、今日一番の驚きを見せた。


 「まあ、弱点もあるからさ、この魔法。よし、みんな行くぞ!」


 もし山に誰かいたら、脳裏に刻まれる恐怖映像となるであろう。

 十人に増えたリュノン軍団は一斉に山を駆け出して行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ