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62 オベルトとダンジョン


「この状況で下手に依頼を受ければ、殿下に邪魔されて失敗するだろう。大怪我の可能性だってある。そんな状況で依頼の受注は許可できん」

「であれば、遠方の依頼を受ければ第二王子は着いていくことが出来ないのではないか?」

「あまり遠方に行って、万が一戻って来ることができなかったら学園を休むことになるよね。それは不味いんじゃないかな?」

「そもそもソラに会えなければアレが納得しない。居座る可能性もある」

「そうね。学園の特別聴講生が一週間なのであって、この国への滞在自体に期限があるわけではないもの」


──等という話し合いの結果、ソラはフェイと共に王都内にある王立図書館に来ている。


理由は三つ。


一つ。図書館内は静かに過ごさなければならないため、(オベルトが)静かだ。

二つ。万が一((オベルトが))騒いだ場合、(オベルトだけが)追い出される。──ちなみにオベルトは既に追い出されている。

そして三つ目。カノン(ソラ)が前々から興味を持っていた『儀式魔法』に関する書物があるからだ。


学園に入学したばかりの頃、コラーリ先生に魔法の発動方法のひとつとして習った儀式魔法だが、あの時先生は「古代魔法の発動方法」だと言っていた。「儀式=目的に合った魔法陣を記入し起動する」ことで魔法が発動するのだと。

コラーリ先生は現存する魔法陣が少なく、使える者はいないと言っていた。使用するたびに”儀式”を必要とするので普段使いするには現実的では無いとも。

しかし、古代魔法がこの世界に存在する限りソラには『使える』はず。もしかすると現在使われていない便利魔法があるかもしれない!

使える便利魔法があるなら使ってみたかった。

『古代』という言葉に浪漫を感じ、研究している人は必ず「いる」、もしくは「いた」はずなのである。必ず何かしらの資料は残っている!


王立図書館も学園の図書室と同じで巨大な魔道具だった。

見上げると沢山の本が宙を行き来しているのが見えた。

フェイは王族で一年先輩なだけあり博識だった。フェイはソラのやりたいことをすぐに理解し、必要な蔵書を示してくれ、飛んできた本の受け取り役までしてくれた。


ソラは机の上に紙とペンの準備をした。”儀式”が魔法陣を書くことなのであれば、予め描いておけばいい。

そう。今日図書館に来たのは古代の魔法陣を書き写すためなのだ。

現代にない便利魔法も二、三あったが、『浮遊魔法』は残念ながら古代魔法にもなかった。諦めたけど、諦めきれずに収納(インベントリ)の中に保管してあるホウキ(相棒)の出番はなさそうである。






最終日。


フェイとソラはダンジョンに来ていた。その後ろにオベルトと『暁の庇護者』一行が続く。


「ダンジョンって、Eランク以上の冒険者しか入れないんじゃないの?」


話し合いの席で「アレをダンジョンに連れて行くのはどうかな?」と提案するフェイにソラが尋ねると、その質問にアドルフが答えた。


「いや、依頼を受けるには“Eランク以上の冒険者が望ましい”と言うだけで、Cランク以上の冒険者が付き添うのであれば入ることは可能だ」


何と言っても“薬草園”なのだから、護衛付きであれば一般人も入れるらしい。


「しかし何故ダンジョンなんだ?」

「ソラの()()が強いからだよ」


そう、あれから数回ダンジョンに入っているのだが、何故か必ず『サンドワーム』に遭遇するのだ。『サイクロン』も一度討伐したにもかかわらず、あの後二回遭遇している。

ちなみに二人以外にダンジョンで『サイクロン』に遭遇した者は未だにいない。しかし討伐証明──というか、ソラが毎回本体を持ち帰るため見間違いではないことははっきりしており、注意喚起がなされている。


オベルトは昨日、図書館でソラに話しかけていたのを再三司書に注意され、最後は()()図書館であることを忘れてその司書を恫喝したため、王国騎士によって図書館の外に放り出されてしまった。その為今日はとても不機嫌で、ソラのそばを離れようとしないのだ。

流石にこれ以上オベルトに居座られるとカノン(ソラ)の日常がままならなくなると思っていたところ、オベルトの様子──治癒したとはいえ王太子の婚約者であるミレイユに怪我を負わせたこと──を聞き及んだバーンスタイン王国のフォスターから『暁の庇護者』に約束の一週間を終えたらオベルトを国境まで引きずってでも連れて行って国から追い出して欲しいという追加依頼が入ったらしい。


そのため護衛もばっちりで好都合だから、取り敢えず冒険者であるソラに付きまとうと痛い目を見るぞ!という脅しをかけてからお帰り願おうと、目的地をダンジョンに設定したのである。




受付のおねえさんに「それではお気をつけて行ってらっしゃいませ~」と送り出されてから三十分後、


「おうわああああああぁぁぁぁぁ!」


ザザザァーーーー


思惑通り、オベルトは『サンドワーム』の食事に巻き込まれていた。

一同はちゃんと走るよう言ったのだ。しかし「何故俺が走らねばならんのだ」とオベルトが拒否した結果がこれだ。自業自得である。

何の抵抗もしない為、ソラの時より高速で穴(口)に向かって滑り落ちていくオベルトに気付いたのか、サンドワームが舌なめずりをした。この動作を見るたびに本当に草食なのか疑ってしまう。


「ひぃッ!!!おまっ!たち!・・・見て・・・け・・・!!!」


恐らく“お前たち見ていないで助けろ”とでも言っているのだろう。

しかし守られる側の人間は、護衛の指示に従わなければならない。自国の宰相の企みにより街で襲われたときに学んだのではなかったのか。

ギリギリのところで無事親切なアッシャーに救出されたオベルトは肉体的にも精神的にも疲れ果てていた。


遭遇するかは分からないが、『サンドワーム』ともう一つくらい魔獣を見せて(ついでに痛い目にでも遭って)お帰り頂こうと思っていたのだが、オベルトには二階層が限度らしい。

可能なら四階層の『サイクロン』を見せて、ソラと一緒にいることは危険だと思ってもらおうとしていたのだが、そこまでは行けそうにないな。と、一同が思っていた矢先、二階層でまた変わった魔獣と出会ってしまった。


『チチ?』


「本当に『サンドワーム』が出て来たのには驚いたけど──また珍しいやつを引き当てたね・・・」


フランツが面白いモノを見るように横目でソラを見た。

いや、この人数がいて、何故魔獣との遭遇がソラのせいになるのか。大体いつもフェイと共に行動しているのだ・・・フェイの『引き』かもしれないではないか。



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