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51 暗殺命令②


「──黙って聞いていれば、君はさっきから自分のせいで傷を負った護衛の心配もせずに自分の事ばかりだ!

普通!自分を守る力もなければ、考えることも出来ない者は守ってくれる人の言うことを素直に聞くものなんだよ!守られる側の人間ならそれぐらい頭に入れておけ!!そもそも君は王族としての自覚があるのか!?」


確かにオベルトは騎士の元に向かおうとした自分に「大通りに戻ろう」と言ったルクスの言葉を聞かなかった。しかし、主であるオベルトが戻りたくないというのであればその希望を加味して任務を遂行すればいいだけの話だ。

オベルトはそう思ったが、オベルトを睨みつけるフェイは不快感を隠そうともせずに怒りを露わにしている。しかもよく見れば昼間のケーキ屋でオベルトに不敬な態度をとった女ではないか!

しかしこれまで人にそのような態度を取られたことの無いオベルトはフェイの剣幕に怯んだ。


「なっ・・・!なんでお前がここにいるんだ!さっきといい、この俺に意見とはいい度胸だな!当然覚悟は出来ているんだろうな!!!おいっ!ルクスッ!!こいつを捕らえろ!!」


オベルトが叫ぶがルクスは動かない。悲しそうな目でオベルトを見下ろすだけだ。


「貴様!ルクス!首を刎ねられたいのか!?」


そう捲し立てるオベルトにフェイが何かを言おうとすると、ルクスがフェイを止めて首を振った。


「いいのです。この任務が終われば護衛騎士の任を辞するので・・・」


ここにはオベルトの言葉に従うものはいない。オベルトの恫喝には慣れているし、それもこれが最後だと思えばどうってことはない。ルクスはフェイにそう言うと、『暁の庇護者』のメンバーに向かって頭を下げた。


「ありがとうございました。回復魔法も・・・どなたかがかけてくださいましたよね。あれがなければ正直危なかったです」


ルクスの言った「辞する」という言葉に驚きを隠せないオベルトだったが、あの戦いの最中、ルクスに回復魔法を掛けた者がいたと言うことにも驚いた。あの血の量──やはりルクスはそれなりの傷を負っていたらしい。戦うルクスの動きを見て、軽傷だと思い込んでいたがそんな魔法を使える者がいるのならルクスの代わりに今後自分が重用してやってもいいと思った。


「回復魔法なら私たちではないわ。ソラちゃんの魔法よ」


カレリアはそう言うと、路地の方を見て手招きをした。


「フェイ、急に出ていくから驚いたよ・・・」


するとそこから昼間のケーキ屋で生意気な女と共にいた空色の髪と瞳の女が呆れたような顔で出て来た。


(・・・この女が光の属性魔法(回復魔法)の使い手か)


そこまで考えてオベルトはハッとした。魔法繋がりで思い出したことがある。


「そういえば魔法でこの俺を吹っ飛ばしたヤツがいるだろう!どいつだ!」


どいつだと言いながら、オベルトの視線はフェイに向かっていた。

フェイは許されるのなら拳で吹っ飛ばしたかったが、流石に物理的に手を出せば外交問題になる。フェイはそんな危険な橋は渡らない性質(たち)だ。


「あ~、あれね、殿下が危なかった(けど、どちらかというとルクスさんの言葉を全然聞かない貴方に物凄くムカついた)ので、避難させていただきました」

「いいよ。ソラがあの時魔法を使わなければ、この自業自得の我儘王子はともかく、ルクスさんは本当に危なかったんだから!」


『自業自得の我儘王子』だと!?一瞬ソラに向かった怒りが、すぐにフェイへのイラつきへと変わる。

どうにかしてこいつをやり込めることが出来ないか、オベルトの頭の中がその思考がその思いでいっぱいになったその時──


「『視えた』!」オベルトがそう叫び、勝ち誇ったような顔でフェイを見た。

「まさかオベルト様、『スキル』が!?」


ルクスの『スキル』という言葉にソラを除く全員が反応した。


「?」


分かっていないソラのために、フェイが簡単に説明してくれた。

この国の王族が『三属性』を持っていることで『特別』であるように、隣国バーンスタイン王国の王族も『スキル』という『特別な力』を生まれながらに持っているらしい。

その力は大人になるにつれ安定してくるが、それがいつかは不明であり安定するまでは自由には使えないらしいのだ。


オベルトはフェイを指差すと鬼の首を取ったような顔をして言い放った。


「そして俺のスキルは『真実の瞳』!嘘を見抜く能力だ!!フェイとか言ったな。貴様、女の振りをしていて実は男だな!」


「・・・そうだけど、だから何?」

「え?そうなんですか?」


何を今更と呆れたような表情をするフェイ。ルクスが驚いて周囲を見ると、みんな頷き肯定した。

フェイの秘密を暴いたつもりが周知の事実──オベルトは膝から崩れ落ちた。


「そんなのここにいる人みんな知っているよ。何の脅しにもならない。王族のくせに人の弱みを握るためにその力を使うなんて──くだらない」


フェイにバカにしたように言われたオベルトは、目に力を入れてフェイを凝視したが、再び何かが視えることはなかった。


オベルトを襲った騎士の正確な人数は二十三名。少なくともオベルトに帯同して入国してきた騎士の三分の二以上が刺客だったということになる。一同はオベルトが滞在しているホテルに行き、残りの残党を捕まえることにした。


「おい、敵か味方か、どうやって判断するつもりなんだ」


普通ならこの事態にもう少し殊勝になってもいいはずなのだが、オベルトはこの期に及んでも尊大に振る舞っていた。


「そんなの簡単だよ。君が護衛無しで単身ホテルに飛び込めばいい。あちらから襲って来てくれるんじゃないか」


珍しく苛ついている様子のフェイが言う。

騎士の一人が『合図』のような魔法を使っていたらしい。恐らくオベルトとルクスが無事に帰ってきたことで暗殺が失敗したことは一目瞭然だ。ルクスが隣にいなければ相手は暗殺命令を遂行しに掛かるだろう。まあ、不慮の事故を目論んでいるのなら、ホテル内では事には及ばないだろうが。


さて、そんな冗談はさておき敵か味方かを判断する方法だが──






「ひ、ひいいいっ。勘弁してくれっ!話す!!話すから!!」

「ならば、さっさと話しなさい」


その表情は騎士であるにも関わらず目の前に広がる光景に怯え、恐怖に戦慄(おのの)いていた。



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