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47 トリオ村②


ソラの体内には魔力は当然存在する。しかし回数制限があるだけのソラには魔力の制限がない。

重傷者はもちろん軽傷者、そして看病に疲れた村人たちも。

いや、それだけではない。

ここにいないだけで、この村には他にも軽い怪我をしている人もいるかもしれない。体力が落ちている高齢者や子供もいるだろう。

回復魔法では心までは癒せないが、身体だけでも癒やしたい。

魔法を視覚的に認識出来れば、みんなの希望になるかもしれない。

そんなソラの想いにより魔法の範囲──光はどんどん広がり、それが村全体に及ぶとパンッとはじけて雪のように降り注いだ。


フェイがそっとソラの肩に手を置いた。

ソラが目を開けると、先程まで熱に魘されていた男性が起き上がり、寄り添う女性を抱き締めている姿が目に入った。


「よかった・・・良がったよおおおおぉぉぉぉぉ」


ソラはこの世界に転生して初めて泣いた。

ソラは気付いていないがこの回復魔法は全ての村人に希望を与え、心を癒す結果となった。




しかし安心したのも束の間、まだ諸悪の根元が残っている。熊の魔獣だ。

熊の魔獣は数日おきに村にやってくるらしい。

はじめて村に姿を見せた時は一匹かと思われた魔獣だったが、群れなのか次第に姿を見せる個体の数が増え、これまでに最高で一度に三匹の熊を確認しているのだという。


寄り合い所に集められていた怪我人は、勇敢にも村を守るために立ち上がり熊魔獣と対峙した者たちだった。盗賊の中にも魔法師が存在したように、威力はかなり弱いが魔法を持つ平民はいる。この村にも魔法持ちは数人おり、そんな人たちが立ち上がったのだ。

魔獣と動物の違いは体内に魔石があるか否かだ。今までこの辺りで魔獣が出たという報告はなかったため、熊の魔獣についての知識はなく、ただの熊ならば彼らでも十分に対処できると思ったらしい。

しかし熊たちには魔法が効かず、全くダメージを与えることが出来なかった。例えあちらが強者であろうともこちらの方が数は上だ。ただの動物なら魔法で多少のダメージを与えることは可能なはずだった。しかし結果は惨敗だったのだという。おそらく何かしらの魔力を持っている──魔獣であると判断された。

しかも熊魔獣が無傷で魔法を弾いたということは、魔力も村人たちより熊魔獣の方がかなり上だということになる。


カンカンカンカン!!!


その時、村の中央にある半鐘の音が鳴り響いた。二人が昼過ぎに到着し現在日が傾きはじめている。

通常、獣が人里を襲う時間帯は夜が多いのだが、人間など取るに足らないと思っているのか最近では明るい時間に現れるようになったらしい。被害は変わらないが明るい分早めに気付け、余裕を持って避難が出来るため新たな怪我人は出ていないのだという。


「さて、熊の相手はボクがしてこようかな」


そう言ってフェイが立ち上がった。

村長は知識として余程高位でない限り貴族は通常一属性であることを知っており、すでにおかしな容量の収納(インベントリ)と回復魔法を使っているソラのことは、マジックバックを持った光属性の魔法師だと思っている。

そうなると、熊魔獣の相手は必然的にワンピースを身に纏い、頭にフォークを着けたこの美少女がすることになる。

二人の姿をはじめて見たとき、村長はこの村は見捨てられたのだと思ったが、並外れたソラの回復魔法にそうではないのだと確信した。──確信したのだが、例え魔法を使うのだとしても自分たちの二の腕の半分もない細腕の少女に、村の精鋭でも傷ひとつつけることの出来なかった熊の魔獣の相手が務まるとは思えなかった。

それは他の者も同じだったらしく、先程まで臥せっていた男たちが自分達も加勢すると言い出したのだ。


一方先程まで気持ちが高ぶっていたため気にはならなかったが、正直何日も床に寝かせられ風呂にも入れず血にまみれた男たち・・・こういう現場に慣れていないソラの鼻は、そろそろ限界を迎えようとしていた。


「あ、あの、私がついて行くから大丈夫です。皆さんは病み上がりですし、お風呂にでも入りながら、ゆっくりして待っていてください」


フェイに続き、辛そうな顔をしたソラも立ち上がる。

村人たちはこんな時になぜ風呂の話になるのか理解が出来なかったが、ソラのつらそうな表情を見て共に戦うことを断念した。無理をして再び怪我をしては、回復魔法を使ったばかりで疲弊しているソラに更なる負担をかけることになってしまうからだ。

しかし心配であることは変わらない。村人たちは遠くから二人を見守ることにしたのだった。


(そういえば・・・)


ソラは学園での授業を思い出していた。

あれは、最近数を増やしてきている大変危険な熊の魔獣の授業だった。

討伐中にこちらに傷を負わせ、血液を浴びることにより進化を遂げる熊の魔獣・・・


ソラとフェイは熊の魔獣が出現したという村の入り口に向かった。

村の畑を食い荒らしている大きな熊の魔獣が見えて来た。その背中には深紅の魔石が夕日を浴びてキラキラと輝いていた。


「・・・村人に死人が出ていないことが奇跡だよ。皆無事でよかった」

「ブ、ブラッドベア・・・」


そこにいたのは授業でコラーリが『一匹当たり一個小隊で対応をするのが望ましい』と言っていた火属性の熊の魔獣だった。



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