42 ソラvsエイシス①
「あの~こういった場合、練習用の木剣などを使われたりは──」
「だって君、手加減の練習中なんだろう?その状態の君からの魔法攻撃を受けるのに木剣なんか使っていたら確実に怪我をするじゃないか」
これは嘘じゃない。回数制限があるとはいえ、ソラはこの世界にある魔法であればなんでも使えるのだ。心してかからなければ・・・
エイシスは剣を構えると苦笑した。
「ひぃっ!一!火炎放射器!」
ソラは焦っているのか一撃目からかなり威力の強い魔法が来た。
切れることない炎が噴き出すように襲ってきたためエイシスは横に飛んで避ける。ギャラリーにも炎の熱が伝わったようで、最前列の冒険者が後退りしているのが見えた。
独特で短すぎる詠唱は発動までの時間が極端に短いし『火炎放射器』が何か分からないため、どんな魔法が来るのかも読めない。
「魔法はそのままキープだ!」
エイシスが避けたのを見て魔法を解除しようとしたため、エイシスはソラに向かって叫んだ。ソラの魔法は十回が限度だ。このまま威力のコントロールを続けた方が良いだろうという判断だ。
カノンの状況──入学試験や氷魔法のことを聞く限り、感情が高ぶった時や咄嗟に魔法を放たなければならないときに焦って高火力になってしまうのではないかとエイシスは推測していた。
表情を見る限り、今は自分よりランクが上の冒険者に剣を向けられていることに怯えているのだろうということは分かるが、それでは訓練にならない。
「威力が強い!こんな魔法を外で使ったら周囲は焼け野原だ!獲物ごと炭になるぞ!もっと相手をよく見るんだ!」
エイシスの言葉にソラはハッとしたような表情を見せた。
「は、はい!」
「そうだ」
火魔法の火力が弱まる。
そもそも生死をかけた戦いをしているわけではない。彼女も先ほどのような威力の魔法は必要ないと分かったようだ。
まぁ、この魔法ではどんな火力だろうと焼け野原で炭だろうが・・・いや、獲物はこんがり焼けるのか?
「二!|行け!」
エイシスが火属性の魔法を使うと覚えていたのか、今度は二十個ほどの水球が飛んできたため、それを剣で受けて相殺する。それにしても詠唱で何の魔法か判断できないため、対応しにくい。
「いいぞ!その調子だ」
「は、はいっ」
どうやら落ち着いたらしく相手が使っている力を上手く見極め、適切な魔法が使えているようだ。
次は現在の倍のスピードでソラの方に踏み込んでみた。
「っ! 三!足止めっ!」
急に倍にしたからか、焦ったようで、四方から想定より強い石弾が飛んできた。
「うおっ!」
その威力に少々驚きながらも全て剣で叩き落とした。
(これ、当たったら腹に風穴があくんじゃないか!?)
これはエイシス自身も、良い訓練になるなと思う。ソラに近付くことも出来ないが。
「焦ると威力が上がるのはソラの悪い癖だ。気をつけろ!」
緩急をつけたやり取りを更に三回ほど続けたところ、ソラもかなり慣れてきた様で殺傷能力の高い魔法は飛んでこなくなった。よし、最後にこの攻撃に冷静に対処出来たら、今日のところは合格と言っていいだろう。
エイシスはそう思い、仕上げとばかりに詠唱と共に剣を一振りしてその刀身に火魔法を付与した。
そして、焦るどころか何故か瞳をキラキラさせているソラの方に踏み込んだその時、信じられない言葉が耳に届いた。
「七!──複合魔法『真空』」
その瞬間、エイシスが剣に纏わせた火が消えた。
エイシスの力加減を測り、適切な威力の魔法をぶつける。場合によっては、魔法を放ちっぱなしにして指摘があれば威力を増減していく。なるほど、わかり易い。
しかもエイシスは魔法を弾きはするが、こちらに仕掛けてくる様子はないのだ。フェイが依頼書にソラに一撃加えたら──みたいなことを書いていたのでとても怖かったのだが、まるで指導を受けているようだとソラは思った。
しかしエイシスとの戦いにも慣れたと思ったその時、突然エイシスが詠唱をはじめた。そして剣を一振りし、その刀身に火魔法を付与したのだ。
(わぁっ!炎の剣!!凄いっ!カッコいい!!)
物語で読んで想像していたモノじゃない。生で見る炎の剣は想像通りメラメラと燃え、炎の周囲に陽炎が見えた。
(凄くキレイ──これって付与魔法?こんな付与の仕方があるんだ!持ってて熱くないのかな??)
ソラが生炎の剣に見とれてそんなことを考えていると、エイシスが踏み込んできた。
(しまった!今、訓練中だった!どうする?どうする??──あ。炎を纏うことで威力が増すのなら消火すればいいんだっ)
やっぱ消火器?でもそんな格好の悪い魔法で炎の剣と戦いたくないし、そもそも属性魔法で作れるものなのかわからない。とはいえ水を掛けても避けられて終わりな気がする。
え~どうやって火を消す?
これ以上考えている時間はない。確実に火を消すには──あっ!!!
「七!──複合魔法『真空』」




