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41 魔法少女、空を飛ぶ②


週末、ソラは満面の笑みで王都の門の前に立っていた。

相変わらず訓練相手の依頼の受注者はいないので、今日も自由だ。


「ソラ」

「ひゃっ!!」


急に声を掛けられ、ソラは飛び上がるほど驚いてしまった。


「まだ待ち合わせの時間には早いけど、一人でどこに行くの?」

「今日は試したい魔法があって・・・」

「へぇ?それってどんな魔法?」


ソラがそう言うと、フェイは眉間に皺を寄せてそう言った。


既視感(デジャヴ)・・・)


「ギルマスに聞いたけど、最近付与魔法の練習をしていたんだって?」

「ギルマスめぇ~」


ギルドの責任者の癖に、なんて口が軽いんだとソラは思ったが、もちろんアドルフが軽くなるのはフェイに流すソラの情報だけである。

人はこれを情報共有と呼び、口が軽いとは言わない。


「あ~、なんか嫌な予感がするからボクもいくよ・・・」


結局、いつかのように、フェイがついて来たのだった。





「相棒っ!」


予想していたのか、そう叫んだソラに対して、フェイは眉を少し動かしただけで何も言わなかった。


「どんな付与をしたのか聞いても?」

「全体に重力操作を付与して、前に進めるように穂の部分に風魔法を付与したよ。

錬金魔法も使えるから、なんとかなるかなって思ってさ」


命綱付きでーす。と、得意気に言うソラに、フェイは額に手を当てて頭を抱えた。


箒で空を飛ぶことの危険性は教えたはずなのだが、余程魔法少女への思い込みが強いのか、諦められずにいるらしい。

ここで止めても納得しないだろうと、フェイは救出の準備だけをして、見守ることにした。

ホウキ自体はおそらく上手く飛んだようなのだが、ホウキの柄の部分で自身の全体重(が掛かったお尻の痛み)を支えられなかったソラは、結局何分も持たなかった。しかも飛ぶことだけをイメージし、止まる方法を考えていなかったため、ホウキに命綱でぶら下がったソラは飛び回るホウキに振り回され、数分後、やっとのことでフェイに救出された。

ホウキにサドルをつけたり座布団を巻くことは魔法少女の美学に反すると、訳の分からないことを言って、ソラはホウキを飛ぶことを完全にあきらめたのだった。






異質な力を持つカノンを守るためとはいえ、彼女を冒険者(こちら)の世界に引き込んでしまったことをエイシスは今でも少し後悔していた。

彼女の人生がかかっている以上、あのまま「魔法は発現しなかった」ことにして領地に送り返すという選択肢は無かったし、威力が強くとも一属性では魔法科入学も確実とは言えないため「二属性持ち」という設定にしたことも後悔はしていない(実際は三属性持ちという設定になってしまったようだが・・・)。

しかし、ギルマスにフォローをしてもらうためとはいえ、カノンを冒険者にする必要があったのかは疑問が残る。

最終的にフランツの口車に乗ってお小遣い稼ぎ感覚で冒険者になってしまったカノンが心配で、エイシスは仕事の合間にギルドに顔を出してみた。



『一日一組限定!Eランク冒険者ソラの訓練相手募集』



「なんだ?これは・・・」


掲示板に貼ってあった一枚の依頼を見るなり思わず口から出たエイシスの独り言。それを拾ったニーナがその疑問に答えてくれた。


「それはですね。フェイさんが出した依頼でして・・・」

(フェイ?あぁ、あのフェイか?誰かに肩入れするなんて珍しいな──)


ニーナによると、あまりにも危なっかしいソラを心配したフェイの提案で二人はパーティーを組んだそうだ。しかしソラの手加減無しの魔法で危ない目に遭ったフェイが、稼ぎ時である夏期休暇までに魔法の手加減(コントロール)を学ばせようとしてこの依頼を出したそうだ。

しかし、ソラの手加減無しの魔法を知る冒険者たちはなかなかこの依頼を受注しようとしないらしい。

それは無理もない──。盗賊のアジトでの様子を思い出し、エイシスはならば自分が一肌脱ごうと、その依頼を受けることにした。






「その依頼、僕が受けるよ」


ある週末、冒険者ギルドにやってきたソラをエイシスが出迎えそう告げた。

戸惑うソラだったが、全く気にした様子のないエイシスはさっさと依頼を受注してしまったのだ。




練習場に場所を移し、ソラ対エイシスの練習試合がはじまった。

ソラは冒険者になってすぐに勝負を挑まれたためここで戦ったことがあるが、エイシスが戦うというのにギャラリーはあの時ほどは多くなかった。やはりあの時は皆ソラが冒険者になるのを待ち伏せていたらしい。


エイシスが剣を手に武舞台に上がって来た。

この依頼はDランクかCランクくらいの冒険者を想定して出したとフェイは言っていた。なのに実際に受注したのはAランク冒険者エイシス。想定外だ。

聞いていない。回復魔法が使えるとはいえ、こんな強者と戦って大丈夫なのだろうか。


「あの~こういった場合、練習用の木剣などを使ったりは──」


恐る恐るそう尋ねるソラに、エイシスは笑って言った。


「だって君、手加減の練習中なんだろう?そんな状態の君から魔法攻撃を受けるのに木剣なんか使っていたら確実に怪我をするじゃないか」


本気か冗談か、エイシスは剣を構えるとにっこりと笑った。


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