40 訓練相手募集中
----------
★週末限定依頼!一日一組限定!Eランク冒険者ソラの訓練相手募集
・礼金一万ゴールド
・ソラが十回魔法を使うまでに一撃加えることが出来たら追加で十万ゴールド!
・但し、負った怪我に関しては自己責任
----------
「これは・・・?」
フェイが掲示板に貼り出した依頼書を見たソラは、思わず二度見してしまった。
「対人戦。これが一番手っ取り早い」
誘拐未遂事件の時にソラの手加減無しの魔法を体感したフェイが、夏期休暇までに魔法の特訓をすると宣言したのだが、その方法がこれだった。
こういう場合、物語ではまずランクの低いナントカラビットや「前世で言うところのダンジョン」の最上層にいるスライム討伐なんかが初心者向けで適当ではないのだろうかと、ソラは顔をひきつらせた。
売られた喧嘩を買った時、盗賊や誘拐犯と対峙した時と、ソラは対魔獣戦より対人戦の経験の方が多いが、物語の中でも対人戦はかなりセンシティブに扱われていたような気がする・・・。
(大丈夫だろうか・・・)
しかし、そんなソラの心配をよそに、破格の報酬であるにも関わらず名乗りを上げる者は只のひとりもいなかった。
その為仕方なく?ソラはダンジョンで薬草採取をしたり、的当てで属性魔法のコントロールの練習をしたりして過ごしていた。
実は、以前ソラが『ヘラクレスの兜』の三人を一瞬で場外に吹き飛ばしギャラリー諸共壁に叩きつけたという記憶も新しいため、『負った怪我に関しては自己責任』の一文が冒険者たちに二の足を踏ませていた。
更に、週末、的に向けて放つソラの全属性魔法の威力を見ていた冒険者たちは、この依頼は受けまいと心に決めたのだ。
そもそも『全属性ってなんだ』という疑問がある。属性は一人一または二属性なのだ。全属性など聞いたことがない。
もちろん想像もつかないくらい高額にはなるが、様々な高火力の魔道具を駆使している可能性も勿論ある。魔道具なら詠唱は不要だし、それならばあのヘンテコな詠唱の説明も付く。
そして文面から察するにソラの魔法が属性魔法にしろ魔道具にしろ、恐らくまだ加減=コントロールが完璧ではないのだ。高い報酬を貰ってもそれ以上に治療費がかかっては意味がない。
それに、ギルマスであるアドルフやAランク冒険者である『暁の庇護者』が気にかけているのもきになる。
全属性という割には何かしら貴族からの横槍も入らないし、背後に貴族の影も見えない。おまけに過去ナンパ目的で声をかけた冒険者を片っ端から拳で沈めたという謎に包まれた美少女冒険者『フェイ』とパーティーを組んでいる──。
元より嫡子でもスペアでもない第三子以下の貴族が多い冒険者だ。色々疑問は残るがこれだけはわかる。ソラが全属性にしろ、複数の魔道具を使っているにしろ他国の王族か高位の貴族令嬢、もしくはバックにヤバい貴族がついている可能性がある。
一撃加えるなどとんでもない!下手に関わってはいけない。物理的に首が飛ぶかもしれない──。
と、これが現在まことしやかに囁かれている『冒険者ソラ』に対する噂である。ちなみにこれがソラの情報が外に漏れない理由のひとつでもあった。
依頼の受注者がいないため、ソラには精神的な余裕が生まれた。
その為カノンは付与魔法の実験の続きをすすることにした。
休日に依頼をこなすことも出来ているため、これまでの分も含めておこづかいは心配要らない程度には貯まっているが、これはおこづかい稼ぎではない。野望に向けての『実験』なのだ!
アイテムボックス作成は効果効能をしっかりと思い浮かべることにより、付与によって作り出すアイテムの性能をある程度コントロールできることが分かった。
その結果、容量は馬車一台分、時間経過無し、食品は収納出来るが人は収納できない──という使い易そうなものが出来た・・・のだが、
「あのな、通常のアイテムボックスは大きめのバッグ一つ~二つ分なんだよ・・・。こんなもん世に出してみろ!大変なことになる」
それでもギルマスのOKは出なかった。主な理由は性能が良すぎるのに使用者登録が出来ないことだが、こういう突出した品物は使用者登録が出来たとしても混乱と事件を呼ぶ。
そして、最悪ソラが狙われることになるのだ。(返り討ちにしそうではあるが・・・)
アドルフの話は分かったが、結局それ以上容量を抑えることが出来ず、ソラは『アイテムボックスの作成』は諦めた。
さて、ここからが本番だ。
アイテムボックスで付与を練習したからコツはつかめた。効果効能を必要最小限にまで絞ることは苦手だが、そこはまぁ、なんとかなるだろう。
カノンはここ数ヵ月の野望への第一歩・・・──いや、一歩目と二歩目は失敗したので三歩目くらいかな?──を踏み出そうとしていた。
「相棒っ!」
夜の女子寮でカノンがそう呼ぶと、その手の中に『ホウキ』が現れた。(──アイテムボックスから取り出しただけである)
前の時はホウキに風魔法を掛けたのでああいった形になったが、風魔法を『付与』する方法を思い付いたのだ。
全体に重力操作を付与して、前に進めるように穂の部分に風魔法を付与する。そうなると直進しか出来ないものになりそうだったため、あとはホウキに乗った魔法少女の“イメージ”を付与してみた。錬金魔法も使えるため、なんとかなるでしょうという、楽観的な考えの元、魔法のホウキ(命綱付き)は完成した。




