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18 初依頼、初ダンジョン


「ニーナさん、こんにちは。私に出来そうな依頼ってありますか?」


入学試験でやらかしてからから三日。ソラは冒険者ギルドに入ると真っすぐニーナの立つ受付に向かった。学園在学中の冒険者活動は禁止されているが、入学前まではその活動は自由だ。

入学試験後、王都の近隣に領地を持つ貴族は一旦帰り合格発表を待つこともあるそうだが、遠方に領地を持つ者は何度も行き来するのが困難なため学園入学までそのまま王都で過ごす。ソラはその間何もすることがないため依頼を受けてみることにしたのだ。

通常、冒険者は掲示板(クエストボード)から自分のレベルと希望に合う依頼を探し受付に持っていくのだが、新人の頃は受付で尋ねるとお勧めの依頼を紹介してもらえるのだと、登録時に受け取った冊子に書いてあった。


「あ、ソラさん。こんにちわ。依頼、あるにはあるんですけど、ギルマスからソラさんが来たら必ず自分のところに連こ──いえ、ご案内するようにと言われていまして・・・」


(今、連行と言いかけた?)


先日入学試験のことでアドルフに嫌というほど叱られたばかり。今回は思い当たる節もないが・・・。ソラは警戒しながらニーナの後について行った。


「何も問題を起こしてないだろうな・・・」


開口一番そう言われたソラは少し考えこむと「多分──?」と答えた。

クライスラー子爵領を出てから色々慌ただしかったが、起こした問題と言えば入学試験で属性数を増やしてしまったこと()()である。それ以外は普通に過ごしているのだ。そんなしょっちゅう問題を起こしているような言い方をしなくてもと、ソラは思った。


「まぁ、こっちにも何の連絡も入っていないんだがどうも信用ならなくてな・・・」


そう言うとアドルフは一枚の依頼書をテーブルの上に置いた。


(酷い~)


ソラはそう思いながらテーブルの上の依頼書に視線を落とした。

アドルフが選んだソラの初依頼は、初心者クエストのド定番である「薬草採取」だった。

依頼自体は比較的簡単ではあるが場所的に魔獣が出現することがあり、Eランク以上の冒険者が望ましいとされている依頼なのだそうだ。()()()魔獣が出現することがないため、一日に使える魔法に制限のあるソラでも問題なくこなせるだろうとのことだった。


「お前は特殊だから簡単にパーティーを組むわけにはいかない。必然的に単独(ソロ)となる。 あまり心配はしていないが冒険者としての経験はないし今回は初仕事だ。何が起こってもいいように一応信頼できるヤツに監視──いや、遠くから見守ってもらえるようには手配しているから安心しろ」


なんだか物騒な言葉が聞こえたが、初めての仕事だ。未だ魔獣と遭遇した経験がないため、影ながらでも誰かについて来てもらえるのは有り難かった。


「──で、肝心の行き先なんだがな。──ダンジョンだ」


まるでそれを聞いた時のソラの反応を見るように、アドルフの口から用心深く発せられたその単語に、ソラは笑顔で食いついた。


「ダンジョンですか!?」


冒険者としての初めての依頼の行き先を聞いて前のめりになるソラに反し、身を引いたアドルフは怪訝な顔をして問い返した。


「お前、貴族令嬢のくせにダンジョンなんかに興味があるのか?──顔に似合わず物騒な奴だな」

「?」


ダンジョン。

ソラはその言葉を聞いて、レアなドロップ品に、宝箱──ドキドキワクワクの大冒険を想像したのだが、それであれば先程アドルフが言った「滅多に魔獣が出ない」は、おかしい。

そう思ったソラは自分の知る「ダンジョン」のことをアドルフに話すことにした。


「なんだそれは。物語かなんかか?趣味が悪いなぁ」


話を聞き終えたアドルフは、思い切り顔を顰めてそう言ったのだ。

そこまで言われたら流石のソラにも理解できた。前世の小説に出てくるダンジョンとこの世界のダンジョンは全くの別物であると。

アドルフは夢見るソラに現実を突きつけるようにダンジョンについて説明してくれた。


「ダンジョンはお前が言うような自然発生したお宝ザックザクの迷宮じゃない。


──先人が作った囚人たちの『地下牢』だ」






ダンジョンのはじまりは先人たちが実験のために作った「地下薬草園」だった。


魔力は人の中にだけあるわけではない。魔法を使った残渣なのか何なのか、それとも全く別物なのか、空気中にも存在する。

その空気中の魔力濃度は一定ではなく、濃いところには良い品質の薬草が多く生息し、住みやすいのか魔獣も多く存在している。ならば魔獣のいない特定の場所に薬草畑を作り、人為的に魔力を注ぎ込めばどうなるのか。安全に品質の良い薬草を供給することが出来るのではないかと考えたのだ。


実験は大成功だった。

更に薬草園を広げようと地下へ掘り進めたところ、偶然魔石が発掘されることが分かったのだ。そして、その時実験に参加していた者の多くが土属性の魔法師であったことが関係しているのか、発見された魔石のほとんどが土属性の魔力を帯びていたのだ。

かくして薬草の実験に加え、様々な属性の魔法師が参加して魔石の実験も行われることになった。実験は大成功で、薬草畑の下の階層では様々な属性の魔石が採掘されるようになった。


が、ここである問題が浮上した。


属性魔法を持つ者のほとんどが貴族であることだ。いつまでも貴族が出向き魔力を注ぎ続けることは出来ない。

話し合いの結果、未来永劫安全に魔石と薬草を採取するために魔石の発掘場より更に下、ダンジョンの最地下に地下牢が作られ、平民貴族関係なく魔力を持つ罪人が収容されるようになったのだという。

そう言えば『暁の庇護者』のカレリアが「罪人は基本労働力」と言っていたなとソラは思った。恐らくあの時生け捕りにされた者のうち、魔法師はこの地下牢に入れられているのだろう。


「しかし地下牢に罪人が入るようになってから、何故かダンジョンに魔獣が発生するようになったんだ」


安全に薬草や魔石を入手するための手段のはずであったが危険を伴うならば仕方ないと、採取・採掘の依頼が冒険者ギルドに入るようになったらしい。


「もしダンジョン内で魔獣を倒したら魔石も買い取るから解体して・・・は無理だな。まぁ、まるごと収納(インベントリ)にでも入れて持って帰ってきてくれ」と言われた。


ダンジョンが物語のソレとは全く違っていたことは残念だが、初めての『冒険』だ。

ソラは早速ダンジョンへと向かうことにした。



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