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9話 戦いの日常(1)

 一週間後僕は優衣と二人でスターダスト八体と戦っていた。


 二人とも武器を持っての完全装備でこれほどの数のスターダストを相手にするのは初めてだが、負ける気がしない。

 二人で今後のどうやって戦っていくかの確認と二人で戦っていくうえで連携を高めていくためにコスモスの施設で自主練をしていたところ近くにスターダストが現れたのだ。

 急いできたとはいえ、また僕たちの他にはまだ誰も到着していなかった。


 もしかしたら能力者というのは貴重な存在なのかもしれない。

 しかしどうやら、僕たちの移動速度が速すぎるだけらしい。

 優衣さんが僕の体重を軽くして、僕が優衣さんをおんぶして移動するという移動方法で町を壊さずに移動することが出来る様なり、足元がしっかりとしているため移動速度がさらに上がった。

 それでも最高速度マッハを超えてしまうため、移動した後はソニックウェーブが発生し、辺り一面のガラスが破損するので被害が全くないわけではない。


「優衣さん、準備は出来たよ!」


 出来る限り身体能力を強化するとその圧倒的な筋力で宙に浮きそうだった身体はだんだんと地面に足がついている感覚を取り戻す。


「動きに支障が出そうになる前に言ってね」


 感覚的に普段の生活よりも足に自分の体重を感じないくらいだろうか?


「じゃあ、そろそろ止めて」


 少し問題があるとすれば足元のアスファルトにひびが入っていることだ。

 今この場にいる八体の構成は防御に特化した個体であるスクーツムが三体、触れるだけで肉体が腐る液を尻尾に分泌するスコルピウスが二体、サジタリウスと同じくらいの威力の一撃を打てるサギッタが二体、そして最後に素早い移動と攻撃を持つルプスが一体だ。


 この一週間で出来るだけ多くの実戦経験を積むために出来る限り遠くにまで遠征してスターダストを倒してきた。

 一歩足を動かすとアスファルトがボロボロと割れていく。

 辺り一面を破壊して回っていた八体のスターダストたちが歩くことで割れていく道路の音を聞き、意識をこちらに向けてきた。

 目が合うと同時にスクーツムの三体が僕に向けて突進を仕掛けてくる。


 それを見た僕も同じように突進を仕掛ける。

 ルプスを除くすべてのスターダストの大きさはおよそ一軒家程。

 しかしスクーツムは他のスターダストに比べて二倍ほどの大きさだ。

 僕とこの八体のスターダストの体積の差は本来戦い合うようなものではない。


「オラァッ!」 


 先頭を飛び出していたスクーツムと接触する際に飛び蹴りを食らわせる。

 圧倒的な体積の差でも優衣の能力のおかげで僕には圧倒的な質量がある。

 グジュッ!っと決して柔らかい肌ではなかったが耳障りな音と気持ちの悪い足に掛かる感覚と共に僕の身体はスクーツムの体内を突き進んでいく。

 僕とスクーツムの質量の差は黄金と発泡スチロールの差を超える。

 体に入ると水の中を泳ぐように突き進んでいき、看板のようなスクーツムの身体を突き破る。


 飛び蹴りが突き刺さったのはスクーツムの足のような部分だ。

 大盾のような風貌で二本足のスクーツムは片足を失うことでビルが崩れ落ちたかのような爆音を立てながら地に伏せる。


「それは私がとどめを刺しておくから、サギッタからの一撃に気をつけながら亜樹はルプスを狙って!」


 優衣がそういうと体に掛かる重力が軽くなる。

 防御力が突き抜けてスピードがあまりなく、特に避けるなどといった行動をとらないスクーツムとは違い、平均的に能力が高く、素早さが突き抜けているルプス相手には不要な重量だと考えたのだろう。

 スクーツムの一体を地に伏せたことで残り二体のスクーツムの後ろにサギッタとスコルピウスが隠れて僕に一撃を当てる様子を見ながら一番前にルプスが出てくる。

 


コスモスに加入すると凶器を携帯することが許可されるようになる。

そうは言ってもさすがに目立つようなものを携帯することはあまり推奨されていることではないようで多くの人はギターケースに見せかけたものの中に入るサイズにしているらしい。

優衣さんも金属球とたまに薙刀を入れる袋に入るサイズの袋にただただ頑丈な金属製の棒をいれて持ち運んでいることがあるようだ。

それを聞いて欲しいと思った。

そこで選んだのが鋼球。


僕にできる攻撃は近接的なものしかない状態でただ遠距離攻撃が欲しかったそれだけの理由だ。

こまごまとした球では目立たないかもしれないが、持ち運びが面倒で一撃必殺がしたい僕の求める威力には届きにくい。

だから周りの注目を集めることで選んだのがバランスボールほどの大きさの鋼球に鎖を装着したものだ。

実物を見た僕は家や学校、その他のよく滞在する場所に隠すようにして置き、必要になると真っ先に取りに行くことを決意した。



 まず、身体能力にものを言わせて鋼球をルプスに向けて殴り飛ばす。

 バランスポールほどの大きさの鋼球とは言え、異常なほどに高い身体能力をもってすればただの発泡スチロールでも殴っているのではないかというほど軽く吹き飛んでいく。

 ルプスの大きさは大型車一台ほどの狼のような形状の化け物だ。


 小さい見た目ながらのスピードを持ち、急所を攻撃してきて一撃で獲物をしとめるのが特徴らしい。

 球がいくら早いとはいえ、流石に正面からの攻撃を大人しく当たってくれるようなスターダストはそうそういない。

 球を最小限の動きで避け、背後を取るように素早く回り込む。


「オゥラァ!」


 一撃を警戒しているのか、ある程度距離を取ったまま隙を狙っているルプスに鎖を掴み、力の限り振り回す。


「ガァルル!」


 獣並みの知能であることが幸いし、鋼球に反応できずお尻に球が掠る。

 距離感をうまく測れなかったのもあるが、流石は野生生物。

 僕だけに集中していて、意識外の攻撃でも寸前で反応する。

 鎖を振り回し、サギッタに背中を向けるとそのすきを突き、以前と同じ光線を放つ。

 地頭がいいという風に思ったことはない。


 小学生までは学年で一番成績が良く、僕だけが地元で一番の学校に中学生から通っていた。

 それでも、一番頭が良かったのは僕が努力をしてきたから、積み上げてきた人間だからだ。

 地頭という面では僕と比べると全くと言ってもいいほど勉強してないのに僕に近しい点数を取るやつがいた。

 中学、高校に入るとそれはさらに顕著となり、授業中ずっと寝て放課後も遊んでいるのに僕よりも成績がいい奴がいた。

 特別な例を除いても、いくら努力しても敵わないやつがたくさんいた。

 それでも少しずつ学んでいった。

 一度学習したことを忘れないように意識した勉強をしてきた。


 

「命が脅かされるような攻撃を警戒しないわけないじゃないか」


 半身になって背後から来たサギッタによる光線を避ける。

 鎖を手繰り寄せ、鋼球が僕の身体から一メートルほど離れた位置に維持し、素早い移動が出来るルプスと一撃が重いサギッタを二正面に持ちながら警戒する。


「メガグラビティ」


 ズンッ!と僕に掛かる重力がさらに大きくなる。

 少し動きやすくなるようにと重力を弱めてくれていたが、流石に動きが阻害されるレベルだ。

 ほら僕の首が座ってない。

 重力が変化している範囲はサギッタにまで及んでおり、僕ほど筋力がなく、僕以上の素の体重をもつサギッタにとって、この重力は動きを阻害するどころではなく、直接攻撃にも匹敵する効果を持つようで横に倒れ伏しながら苦しそうに呼吸をしている。


「亜樹!サギッタたちは少しの間私が抑えるから早くルプスを!」

「——ちょっと、その前に僕の重力も少し弱くして。さすがに動きにくい」

「あ、すみません」


 今の僕の筋力と質量を考慮すると脛迄埋まるアスファルトは深く積もった雪の中を歩くようなものだ。

 つまりめちゃくちゃ歩きにくい。

 ズボッ!ズボッ!っとゆっくりと歩きながらルプスの頭を潰しに歩いていくとだんだんと緩い坂を歩くように沈み込んでいく足の深さが減っていき、僕の身体も普段通り動かせるようになる。

 鎖を持ち運ぶにも、流石にこれほどの重力の中一般人では持ち運ぶのに苦労しそうな鉄球を持ち運ぶは億劫だ。


 鋼球は地面に置き、その分急いで走る。

 ルプスとの距離を縮め、頭を殴りつぶす。


「次、行きます!」


 優衣さんが重力を絶え間なく変動させ、スターダストたちに環境の変化に慣れさせないように仕向けながら、地震は背後に回り込もうとすごいスピードで駆け巡りながら、盾役を担っているスクーシムを翻弄しながら、サギッタたちも狙いをうまくつけることができずに的外れのところに攻撃している。

 一撃でも喰らってしまえば大怪我は免れないであろう攻撃ばかりであるのだが、その動きには迷いも焦りもない。

 これまで一人で戦ってきた貫禄というものが存在していた。


 僕の役割とは優衣さんに足りない火力を補うこと。

 優衣さんが倒すことに苦労する敵を優先的に倒すことであり、もしものことがあれば命を救ってもらったものとして身を盾にしなければならない。

 僕から注意が逸れ、優衣さんにばかり集中しているスクーシムの横腹に全力疾走をしながら飛び蹴りをかます。

 外骨格でも存在しているのだろうか?

 バキッ!とチョコレートでもボロボロにしたような音とともに蝉の腹の中身のようなどろどろとした感触とともに全身がそれに包まれる。


「すごい!スクーシムの弱点を突かずに力技で……」


 やがて蹴り破ったスクーシムから内臓のようなどろどろとしたものとともに僕も排出される。


「――亜樹!全身を最大限強化して!」

「――え?」


 足から伝わってきた確かな感触とともにうまくいった充実感とともに体中から感じる不快な感触に意識を割かれていると、怒声とともに目の前に照明でも突然現われたのかというほどのまばゆい光に包まれる。


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