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8話 人の好み

 救急車に乗って一時間。

 救急車のおかげで信号を無視して、車が並んでいる状態でも割り込んで先を急いだうえでこれだけの時間が掛かった。

 普通での病院ではなく、特別な人がいる、特別な病院らしいからここまで長距離になっても仕方がない。

 救急車の中で優衣さんがつきっきりでいろんな話をしてくれた。


 優衣さんほどの美女にずっと話してもらっている僕に救急隊の皆様は不思議そうな視線を浴びせてきたが些細なことだった。

 この道中コスモスに関する情報やスターダストに関する情報、さらには能力を悪用している人たちのグループの話についてずっと聞いていた。


 話を聞いていくにつれてそのあまりにも大きい組織の規模に僕はどうしてこれまでコスモスに関する情報を聞かずに生活することが出来ていたのだろうか不思議に思ったほどだ。




***


 治療が終わるころには五時を回っていた。

 治療をしてくれたのは優しそうなお姉さんだった。

 奇麗で肉好きのいい足で胸も大きかった。

 それだけが印象に残った人だった。


 少し失礼かもしれないが、それ以外は普通だった。

 急によくなるわけではなかったが、目に見えて色合いが良くなる肌は逆再生のようで見応えがあった。

 火傷の程度は体の部位によって大きく変動があったらしく、足や顔にはもともと火傷が無かったからよかったし、腹辺りも火傷はそこまでひどくなかったらしく、跡形もなく癒えたが、顔を覆った前腕の火傷は特別酷く、焦げていたところの治癒は完全には出来なかったらしい。

 確かに前腕の肌は以前のように健康的だが、一般的な火傷のように痕が残ってしまった。


 見ても、この程度なら気にしないくらいの大したことがない痕だ。



***


「どうです?さすがに疲れてしまいました?」


 病院は出来るだけアクセスがしやすい位置にあり、近くに大きな駅があり、その駅で再びご飯を食べていた。

 もともとご飯を食べるつもりで来ていたわけだし、急にスターダストが現れてお互いに満足のいく量を食べられなかった。


 大きな駅で家の近くにある大型ショッピングモールには選り取り見取りのレストランがあった。

 お腹が空かせた僕たちは時間無制限の食べ放題店を訪れていた。

 自慢じゃないが、これまで食べ放題店で野菜を一切食べずに炭水化物のみで原価をはるかに上回る額を取り戻したことがある。(原価は亜樹調べ)


「ええ、なんだかいろいろあって疲れてしまいました。なんだか治療をしてもらって以降特に疲れが出てきてしまって、でもお腹は空いてます。原価で元を取るつもりです」


 ビュッフェ形式の食べ放題店だが、やはり炭水化物ばかりだ。

 おなかの空いてるのでとにかく炭水化物を取る。

 優衣さんはサラダをたくさん取って食べているが、愚かなことだ。


 わざわざ好きなものをたくさん食べられるビュッフェに来ているというのに元を取ることに囚われてあまり好きでないものでお腹を満たすとは正気だと思えない。


「やっぱり、サラダっていいですよね。薄味でなんだか健康的な生活を送ることが出来てるって実感できます!」


 優衣さんが幸せそうにそう言っているのを見ると人が食べているものを盗み見て心の中でダメだししている自分がとても情けないように思える。

 良いじゃないか!

 その人が食べたいものを食べる。


 それがビュッフェの良いところだ。

 僕は炭水化物と肉が好きで、優衣さんが草が好き、ただそれだけのことじゃないか。

 違う考えを持つ人を受け入れる器の広さを手に入れた。


「その通りですね。人間、草を食べることも大切です!」


 そういいながら唐揚げを頬張った。



 今度の会計は優衣さんが払ってくれることになった。

 僕も払おうとしたが、命を救ってもらったのでと言われれば頷かざるを得ない。

 明日は日曜日。


 コスモスに加盟するには市役所などに出向く必要があるらしい。

 市役所の地下にあるらしいコスモスの無人端末で個人情報の登録などをすることが出来るらしい。

 コスモスの構成員なら休館日の市役所や公民館に無断で入れるらしい。

 特にそこに行く用事があるとは思えないが、ないよりはある方が良いだろう。


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