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7話 コスモスという組織

 体に異様な浮遊感を感じ、目の前の光が収まり、目を開くと、僕は宙に浮き、漂っていた。

 トラックに轢かれたような衝撃で体の自由は効かないが不思議と痛みを感じないし、一番酷いと感じていた熱線による影響を何も感じない。

 風が強く吹いた。

そして同時に風が肌を撫でる感覚に違和感を覚える。


 それに、いつも感じている束縛感、それでも慣れてしまった違和感のない束縛を感じない。

 ふっと自分の体を見てみる。

 この違和感の正体を知りたかった。


「……へ?嘘……」


 服が無くなっていた。

 女の子といつかデートするためと思って買っていたブランド物の服。

 最近の流行とかよくわからずにただ値段でこれがいいかなっていつかできるかもしれない彼女を想って買った服。

 僕の間食を買うためのお金が消えて、何日もひもじい思いをした。

 そんな服がただの炭化した塊になって僕の肌に張り付いて、今にも崩れ落ちそうになっていた。

 ついでに健康的な肌は真っ赤になったり、所々炭化したりしていた。

 足は極限までの強化でどうにもなってないが、それ以外の腹や腕は酷い状態だ。


 恐らく顔には特に異常はないはずだ。

 それでもこんな怪我経験したことがない……

 痛みがない。

 熱いはずなのに、焼けてるはずなのに、何も感じない。

 その事実だけが、冷たい水の様に、混乱した頭にしみこんできた。


「亜樹君!」


 後ろから手が伸びてきて僕を抱き寄せる。

 背中で感じる温もりで優衣さんの安全を確信して安心してふっと肩の力を抜く。


「ブラックホール」


 優衣さんがそっと呟くとサギッタのすぐ近くにちょっとした歪が出来る。

 その歪は最初ちょっとしたものだったが、次第に少しずつ大きく成っていき、空気が、近くにあった瓦礫が、だんだんと大きなものが強く吸い込まれていく。

 サギッタはそんな歪に目もくれず、重症の僕と僕を抱える優衣さんを狙って先ほどの光線を放射する。

 思わず目を瞑るが、瞑った上で強い光で目が痛くなる。

 再び目の前に太陽が現れたかのような光に覆われ……今度は先ほどの衝撃を感じることなく光が収まった。

 そっと目を開くとそこにあった小さな歪みが一度取り込むと光も逃がさない真っ暗な球体が出来ていた。

 サギッタもこれほどの物になると無視することは出来ない。

 必死に地面にしがみつき、吸い込まれないように抵抗している。

 この黒い球体を生成した張本人である優衣さんを見てみるともう、サギッタの方を見ていない。

 僕をそっと支えてくれている。


「……大丈夫そうですね。すぐに良くなります。もう少しだけ待っていてください」


 優衣さんは僕をゆっくりと地上に下ろす。

 やがてサギッタも優衣さんのブラックホールに耐えきることが出来なくなったのか、吸い込まれてしまい、先ほどまで圧倒的な暴力を振りまいていた僕たちの脅威は消滅した。


「もうすぐです」




 やがてブラックホールが消滅したところ辺りには何も残らなかった。


「よく見ていてください……これがパラレルワールドと私たちの本来いる世界が結びつく瞬間です」


 辺りにどこから湧いてきたのか、視界が遮られるほどの量の霧が湧いてる。

 風がなびき、霧が動いたと思うとすぐに晴れた。

 霧と共に僕の服、壊されていたはずの小学校も辺りの道路、壊したはずの民家や橋がすべて直っていた。


「おお、すごい!僕の服が直ってる!」


「ええ、能力を持っている人に関しては命を落としてしまった場合にはどうすることも出来ませんが、身に着けているものはどんな状態になっても元に戻ります」


 僕の感動をよそに優衣さんはちょっと淡々としているような気がする。

 ホットドックを超えるサイズの股間を見た異性だとは思えない。

 ……見慣れているのかな?


 僕たちが戦っていた場所は小学校の運動場だったようで、辺りに誰もいない運動場が広がっている。


「亜樹君ありがとうございました」


 痛みが麻痺しているのか、体は全く動かないが特に問題はない。

身体は激しい身体能力強化のため少しお腹が空いてはいるものの、今すぐ死んでしまうとかそういうのではないだろう。

 優衣さんに地面に下ろしてもらうと今は小学校に不法侵入している状態なのでいそいそと二人で出て行く。


「気にしないでください。僕も命を助けて頂きました」


 そういうと優衣さんは少しうつむきながら言う。


「すみません……先輩ぶって、今後のために相手の技を見せてあげようと考えてしまい、普段と違う戦い方をして命が危ないところでした」


 やはり、普段の戦い方とは異なっていたようだ。

 いくら重力を自由に変化させることが出来るとはいえ、遠距離攻撃が出来ると知っている相手に初速がゼロでだんだんと速くなっていく空中戦を挑むだろうか?

 確かに相手の上を取って、そこから投げるあの球は強力な武器になるだろうが、それは相手が遠距離攻撃をすることが出来ないときに限るだろう。

 地面に足がついてない状態での戦闘はリスクが高すぎる。

 一撃で倒してしまうことが出来るなら倒してしまうのがいいに決まっている。

 相手の手を見せようとしていたのは本当なのだろう。

 それならむしろこれからどのような戦いをすることになるのか教えようとしてくれた優衣さんに感謝するべきことだ。


「いえ、命を懸けて僕にこれからの戦いについて教えてくれようとしていたのですよね。むしろ感謝しかないです」

「亜樹さん、凄い耐久力でしたね。サギッタは耐久力もスピードも他のスターダストに比べると劣るのですけど、攻撃力、特にあのレーザーはこれまで何人ものコスモスの人たちを一撃で殺してきた恐ろしいものでしたのに。あれを正面から耐えきることが出来る人って、そうそういないですよ」


 お互いに命を助け合った結果だろうか、敬語を使い合うことには変わりないが、少し空気が朗らかになっているような気がする。

 あの一撃は堪えたが、なぜかあの程度で絶対にやられないという確信があった。

 だからだろうか、二日前とは違い命が危なかったという恐怖はさほど感じない。


「アレすごかったですもんね。僕もあれほど自分を強化して痛いって感じたのは初めてでしたよ」

「でも、足は無傷ですね。本当にすごいですよ」

「あの時は特に足を強化してましたからね。あれで足もどうにかなってたらどうにもならなかったですよ」


 お互いに謙遜し合ってなかなか踏み込んだ会話をすることは出来ないが、出会って間もない異性にそこまで急いで踏み込むこともないだろう。

 少しずつでいい。


「ところで、コスモスって何です?」

「ああ、言ってなかったですね。コスモスは私が所属する組織の名前ですよ。私が渡していたバッチにもコスモスの花が彫られてあったじゃないですか。あれが組織のメンバーである証です。色によって階級分けされてて白、黄色、赤、ピンク、オレンジ、黒に分けられてて、それによって給料が変わってきます。あ、もちろん戦えば戦うだけボーナスが入ってきますよ」

「え、お金がもらえるんですか?」


 これって結構大事な情報じゃないか?

 無償で人類のために奉仕をすることになるものだと思っていたし、それでも、人のためになるならと思っていたから悩んでいるんだけど、実利が入ってくるなら考え方も変わるじゃないか。


「ええ、もらえますよ。もちろんじゃないですか。自衛隊ほどずっと訓練をしなければならないというわけではないですけど、自衛隊よりもずっと命を懸けた行動を日常に取り組んで私生活も時には無駄にしなければならないんですよ。社会保障も充実です!」


 社会保障も充実か……

 よく分からないけど、いいことっぽいな。


「どうしますか?先ほど、凄く危険な目に遭ったばかりで、無理にコスモスに加入してくださいとは言いません。それでもそれほどの能力。私と一緒に戦っていただけると助かります」


 僕の答えは優衣さんが危険な目に遭った時から決まっていた。

 僕が戦わなくても、これまで通りで特に変化のないことなのかもしれない。

 それでも戦えば地球の秩序を守るために戦っている人たちの命を助けることが出来るかもしれない。

 確かにサギッタの攻撃力はすごかったが、総合力で見ればそれほどまでに強いものだとは思えなかった。


 もしかすると僕はすごいのかもしれない。

 いや、きっと僕がすごいのだろう。

 すごい僕が頑張って働けば何人もの命を助けることが出来ることだろう。

 それでも不安はある。

 まだ一体しか戦っていない。

 それに優衣さんの話によると今回がそうだっただけで一度に何体ものスターダストを相手しなければならないことがあるようだ。

 持久力には不安がある。


 もしかするとあっけなく死ぬことになるかもしれない。

 その時、父さん、母さん、莉緒はどのように感じるだろうか?

 僕のためにあれほど心配してくれた家族がどのような反応をするだろうか?

 それを考えると決して死ねない!

 死んではいけないというのが分かる。

 ありがたい話だ。

 僕には家族がいる。

 孤独だった僕を拾ってくれた家族が。

 でも、それはみんな同じこと。

 僕だけが特別じゃない。

 僕以外の誰かが死んでしまうときっと悲しむ人がいることだろう。

 僕はそんな人を生み出したくない。

 だから……


「戦います。僕たちで出来る限り多くの人の命を救いましょう!」


 覚悟は伝わっただろうか?

 今後のことについてもちろん不安はある。

 それでも人の命を助ける活動が出来て、優衣さんと一緒に活動することが出来るのなら怖いものはない。


「ありがとうございます。それでは早速その傷を治しに行きましょうか」

「そうですね。早く火傷の跡を冷やして、病院に行かなくてはなりませんね」

「ふふ、いい病院を紹介しますよ」


 そう言い、優衣さんは救急車を呼ぶ。

 こんな大やけどのになった原因を説明するとき、どうやって説明しようか悩んでいたが、どうやら消防にもコスモスの影響が及んでいるらしく、バッチを見せたら何も聞かずに病院まで運んでくれるらしい。

 僕の知らなかった世界だ。

 コスモスの構成員に払われる給料は国から出ているようだし、不思議ではないのかもしれない。


「コスモスの構成員には貴重な治癒をすることが出来る能力を持つ人が数人いて、死んでもおかしくないほどの怪我を負っても次の日には傷一つない状態で退院できるくらい効果が大きいのですよ」


 たとえ腕一本まるまる失ったとしてもすぐに完治させることができるらしい。

 とにかく、病院につくまで死ななかったらそれで助かるといってた。

 どういう原理かわからないけど、すごいなぁ。


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