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20話 人の成長

 目が覚めると僕は病院で点滴を受けていた。

 視界が真っ白になるまで鮮やかに記憶残っている。

 僕は生き残ったのだ。

 あの時は自分に必死でわからなかったけど、今あの人が言ってた内容を思い出すと誰が助けてくれたかなんて明らかだ。


「……ゆいぴょん。ありがとう」

「どういたしまして」

「うおっ!」


 帰ってくるとは思ってなかった人からの返事にあいまいだった意識が覚醒する。


「亜樹……無茶したね」


 ゆいぴょんは僕を慈しむような表情で眺める。

 訓練が始まる前に見せてくれていた地合いの塊のような表情だ。


「ゆいぴょん……ごめん」

「謝ることないよ。亜樹は受験勉強が大変な中、私が無理に入れた訓練に頑張ってついてきてくれたんだから。ごめんね。亜樹が頑張ってくれるから亜樹が無理してたことぐらいわかってたのに……亜樹のやさしさに甘えちゃってた」


 なんだか涙が出そうだ。

 何となく一番ひどいけがをしていた筈の右腕を見てみる。

 骨が皮膚を突き破ってたはずなのに今では何事もなかったかのように修復されている。


「なんで僕を助けてくれたの?」

「仲間だからだよ。私にとって仲間は家族のようなもの。亜樹もどんなに莉緒ちゃんが生意気だったとしても家族だからどんな苦労してもきっと助けようとするでしょ?」


 あれ?

 やっぱりゆいぴょんも僕の態度を生意気だって感じてたんだ。


「じゃあ、なんで僕が戦ってるって気が付いたの?」

「雰囲気を見てたらわかるよ。そろそろ限界だろうなって。でも、亜樹は私に対して何となく弱音を吐こうとはしないだろうなって思ったから、今の状態でも十分通用するところを示そうとするのかなって思ったわけ。それでおあつらえ向きに深夜にBランクのスターダストが現れたんだもん。もしかしたら?って思ったけどそのとおりだったよ」

「……そっか」


ゆいぴょんが僕に精一杯気を使っていることが手に取るようにわかる。


「……ねぇ、亜樹?受験が終わるまで、コスモスの活動休止しよっか?」

「なんで?」

「亜樹も私も受験があるから。受験だけでも大変なのに、コスモスとしての活動もなんて厳しいでしょ?」

「……僕は反対かな。ゆいぴょんってカルナクスの螺旋と戦うためにチームメイトを探してたんでしょ?カルナクスの螺旋クラスのスターダストが近いうちにまた現れるかもしれないから。確かにゆいぴょんとの修行は辛かったよ。でも、そのつらさは僕の驕りが原因だから……僕は今はただ、少しでも強くなりたい」


 死にかけたからだろうか?

 後悔をしたくないからだろうか?

 現実を突き付けられたからだろうか?

 僕はひたすらに努力したかった。





「おめでとう亜樹、二次元的な移動方法にはもうだいぶ慣れてきたんじゃない?ほとんど無駄がなくなってるよ」


 ほんの数十分前までしっかりと整備されていた幹線道路だったこの場所は見るも無残な、戦争の跡地のようになっていた。

 近くで四肢を捥がれて一切抵抗することができなくなったスターダストが恨めしくこちらを見ているが、もうその視線には慣れてしまい何も感じなくなってしまった。


「ホント⁉」


 夏休み中盤、僕が大怪我を負ってゆいぴょんに助けられてから毎日のように基本的な体捌きから応用的な組み手まで幅広くこなしてきたが、とうとう合格をもらえるまでの技術を習得できた。

 一般的な習い事や部活ではもちろんこんなペースで技術を習得することは不可能に等しい。

 それでも僕のたぎるようなやる気とゆいぴょんのマンツーマン指導のおかげで形にはなった。

 相も変わらず教官になると恐ろしくなるゆいぴょんだったが、その理由も、習得する目的も理解している僕にはむしろありがたいものだ。


「じゃあ、次は三次元的な動き方だね」


 そういいながら適当にばらけさせるようにゆいぴょんが空中に岩を配置する。

 まさかこれを蹴って移動しろと?


「やった!まだ身に着けることがたくさんある」


 まるで強くなる日々を楽しんでいるかのように飛び跳ねて岩を蹴ってジャンプし始める。

 ……マジかよ。

 さっき、与えられた課題をクリアできたばっかりなのに。

 やはり人はなかなか変わらない。


「さすが亜樹、これならまだまだこれからだから一緒に頑張ろうね」


 ゆいぴょんもわかっているのかわかっていないのか……

 僕の苦労は続く。




 ゆいぴょんと相も変わらず、朝、迎えに来てもらって一緒に僕の部屋で勉強していた時のこと。


「亜樹ってさ、どんなふうに戦うのが理想なの?」


 半年後に迫った大学受験の対策のために僕とゆいぴょんの二人で同じ机で参考書に向かい合っていると突然そんなことを聞いてきた。

 ゆいぴょんが僕の部屋で普段から勉強をするようになったのでゆいぴょんと仲良くなりたいらしい莉緒が僕のベッドでケータイをつついていたが、興味あるのか、僕の方を凝視している。


「戦い方?」

「そう。デカラビアと戦ってた時、亜樹の拳のへ根が折れちゃってたでしょ?いつまでも裸拳で戦い続けるのもよくないじゃない」


 一週間くらい前、僕はゆいぴょんの厳しい特訓のストレスでゆいぴょんに対して反発心が湧いていた。

 僕の身を案じていることは理解していたので何も言うことはできなかったが、それでも僕の実力を認めさせるために災害危険レベルBのデカラビアに一人で挑んで死にかけたが、間一髪のところを優衣ぴょんに助けてもらって僕は天狗になってたことを自覚し、これまでよりも一層訓練を頑張っているのである。


「確かに、相手によっては低レベルでも戦いづらいしね」


 僕は宇宙怪獣であるスターダストと戦う組織、コスモスに入ってから毎日のように遠征をして数々のスターダストと戦ってきた。

 その中にはいくら弱くても体の表面にとげが生えていたり、強い毒で体が覆われてたり、炎をまとったりして攻めあぐねてしまった敵もいくつか存在する。

 その時は後で治してもらえるからと痛いのを承知で殴りつけたが、今後はそのような特徴を持った格上とも戦う可能性がある。


「僕も、最初の方は頑張って武器とか準備してたんだけどね」

「だんだん面倒になって武器を持って行かなくなったよね。格下相手ならいいけど、デカラビアに負けたんだから今度からはちゃんと準備するようにしてね」

「準備はしないといけないとは思うけど、この前作ってもらった戦鎚はでかくて持ち運ぶのが大変だった割に、僕の一撃でへしゃげちゃったじゃん。正直、僕がわざわざ持つような武器なんて思いつかないよ」


 僕は今後のためにと、いろんな武器を試しに使ってきた。


 ただの鉄では当然のように僕の力に耐えられずゴムでも木の枝でも振り回しているような感覚だった。

 当然の様に鋼鉄ニッケル合金やタングステン、ステンレス鋼、チタンのような丈夫な合金でも試してみはしたが、硬い敵に対して思いっきり使うと当然の様に耐えることができなかった。

 僕の能力を考えると当然のことではあるのだけど、これでは僕の想定している強敵と戦うには不安定すぎる。


「亜樹ってまだコスモスに入ったばっかりだけど、毎日のようにスターダストを倒してきたじゃない?私も少しコネを使って申請を出してみたら通ったのよ」

「申請?なんの?」

「そりゃ、もちろん西山さんのだよ。本当はピンクとオレンジコスモスの人にしか与えられない特権なんだけど、何とかねじ込んでもらったよ。感謝してよね」


 ……はて。

 西山さんとはなんぞや?

 ピンクとオレンジコスモスの人たちだけの特権といわれてもよくわからないけど凄そうではある。


「ゆいぴょんさん!西山さんって誰なの?」


 知ってて当然という雰囲気を出されて固まってしまった僕の代わりに優衣ぴょんとの会話を聞いてた莉緒が割り込んでくる。

 ありがたい。


「あぁ、莉緒ちゃん。西山さんはね私たちに専用の武器を作ってくれる人だよ」

「専用?」


 莉緒が続けて質問を重ねてくれる。

 こいつは頼りになるなぁ。


「私たちって超能力を持ってるじゃない?私と亜樹は戦うことに特化した能力だけど、治癒することに特化した能力とか、サポートすることに特化した人とかいろんな人がいるわけ。そしたら物を作ることに特化した人がいても不思議じゃないと思わない?」

「確かにそうだね」

「とはいっても、ものを作ることに特化してる人なんてコスモスの構成員なんてただでさえそこまで多くないけど、さらに少なくなってくるわけなのよ。その中でも、西山さんは圧倒的に性能がいい武器を作ってくれることで評判なわけ。そしたらあまりに依頼が集まっちゃうから仕事の申し込みをするのにも制限が設けられるほどの人なのよ」


 確かにそれはすごい。

 きっととにかくすごい人なんだろう。



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